原発ゼロのエネルギー政策に転換をエネルギー・環境政策をめぐる議論がいまヤマ場
「原発なくせ」の国民の声を政府に届けよう「国民的議論」がたった1カ月?原発再稼働に反対する人々が首相官邸を取り巻いた6月29日、政府は「エネルギー・環境に関する選択肢」を発表しました。これは、昨年の東日本大震災と福島第一原発事故を受けて、それまでの原発に依存したエネルギー政策を根本から見直そうと、昨年からさまざまな省庁の審議会で進められてきた議論をまとめたもので、3つの選択肢が示されています。国民にとっては、これからの「原発再稼働」、「エネルギー政策」、そして「温暖化対策」をどうするのか、という国を揺るがすような「選択」になるわけですが、この3つの選択肢はどれも原発ゼロを明確にした案とはなっていません。しかも政府は「国民的議論」をたった1カ月程度で終わらせ、8月には新たな「革新的エネルギー戦略」を決定しようとしています。しかし原発ゼロを願う国民と、是が非でも原発を推進したい財界の双方から「決定が拙速だ」との批判が噴出。古川元久国家戦略担当大臣は、エネルギー政策の決定を9月以降に延期する可能性を示唆しており、「原発なくせ」という国民世論の高まりが、政府の姿勢を動かしつつあります。
核燃サイクルの継続を隠して今回、選択肢として示されたのは、(1)「ゼロ(%)シナリオ」、(2)「15(%)シナリオ」、(3)「20〜25(%)シナリオ」の3つです。この数字は「2030年時点での原発の割合」を示しています。この数字を見ても明らかな通り、原発ゼロを実現するには、「ゼロ(%)シナリオ」以外は「論外」の選択肢です。「20〜25(%)シナリオ」は、既存の原発を再稼働するばかりか、さらに新設・増設しなければ成り立たない「極端な原発推進シナリオ」です。「15(%)シナリオ」も、既存の原発を減価償却が終わる40年間まで運転を続行し、新・増設の可能性も残っている案です。「20〜25(%)シナリオ」、「15(%)シナリオ」の案でさらに問題なのは、非常に危険で、途方もない費用を使う「核燃料再処理の継続」が、目立たないように、そっと含まれているということです。
省エネと再エネの見込み不十分では、「ゼロ(%)シナリオ」なら、少しは「まし」なのでしょうか? たしかにこの3つの選択肢で原発ゼロを選べるのは、この案しかありません。しかしこの「ゼロ(%)シナリオ」も「2030年時点までに原発をゼロにする」ということであって、「再稼働しないという案ではない」のです。しかも原発をゼロにする分、CO2が増えてしまいます。しかし多くの環境NGOが対案を示しているとおり、3つのシナリオはどれも省エネや再生可能エネルギーの見込みがきわめて不十分であり、これらをもっと真剣に進めれば、原発ゼロと温暖化対策の両立は可能であり、新たな経済成長にもつながるのです。
温暖化対策と脱原発の両立をそもそも「エネルギー・環境政策」とは、「どのような社会をめざすのか」「持続可能な社会をどうつくっていくのか」という問題と切り離せない議論であるはずです。しかし3つのシナリオとも、大量生産・大量エネルギー消費社会を転換する政策も、化石燃料依存の見直しもないまま、「数字」の議論にわい小化され、拙速な期間で「国民的議論」の幕引きが狙われています。気候変動も年々深刻化しており、地球温暖化対策も人類の生存がかかった問題です。「原発ゼロと地球温暖化対策を両立する、真に持続可能な選択肢が必要だ」という声を、今こそ大きくしていく必要があります。
パブリックコメント締め切り迫る政府は「国民的議論」の一環として、「エネルギー・環境に関する選択肢」へのパブリックコメントを募集しています。原発を推進してきた政府が、こうして国民に意見を求めざるを得ないこと自体、世論と運動の成果といえます。政府は、「どれも選択できない」など3つのシナリオ以外を選択した場合、どのように集約するのかを明らかにしていないため、「その他」とならないよう「原発ゼロ」と明記し、1通でも多くの意見を政府に送りましょう。8月12日午後6時が締め切りのため、急を要しています。
(新聞「農民」2012.8.6付)
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[2012年8月]
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