「農民」記事データベース20121210-1049-01

TPPに断固反対し、
農業・食料守るのはどの党か

関連/推進候補はダメ周りに訴えたい


選挙目当てのごまかしにまどわされず
TPP賛成の議員・政党を総退場させよう

 各党の総選挙公約が出そろいました。TPPにしっかり反対する政党あり、“にわかTPP反対”政党あり、さらに断固として賛成する政党あり。公約をどう見るか、各党が今までどんなことをしてきたのか……。

 TPP反対の東の横綱・日本共産党

 日本共産党の公約は無条件で「TPP参加絶対反対」。農業と食料、暮らし、経済、主権を守る立場から詳細な個別政策も発表しています。農産物の輸入自由化を進めるWTOやFTAに対し、唯一反対を貫いてきました。

 「TPP加入反対を訴え続けた党に敬意を表したい」――民主党の輿石幹事長のおひざ元、JA山梨中央会の廣瀬久信会長は、11月28日に開かれた日本共産党の演説会で来賓あいさつ。「(安倍自民党総裁が)“部分的に抜けば(例外扱いにすれば)賛成だ”というのはTPPの内容をよく勉強していない」「TPPの問題で、共産党とJAグループは同じ目的を持っている」と述べました。

 これに対し「TPP、各党の思惑接近 党首ら発言、参加に含み」(「日経」11月29日)と報じられるように、自民、維新、民主は“例外扱いが認められれば”“国益が守られれば”TPP交渉に参加すべきという「条件つき賛成」派です。

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 例外扱いは認められない

 アメリカのカーク通商代表は「交渉中のTPPでは、交渉参加国に『米を含めて、すべてをテーブルの上に出すこと』を求めている」と語っています。アメリカのねらいは、あくまでBSEで輸入が激減した牛肉です。

 昨年11月、外務省が公表した資料では「TPP交渉においては、高い水準の自由化が目標とされているため、従来わが国が締結してきたFTAで『除外』してきた農林水産品(コメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産品等)を含む940品目について、関税撤廃を求められる」と明記しています。

 また「例外」とは、せいぜい関税撤廃を7年猶予するものにすぎませんが、7年で1万6500円の米生産コストを3000円にできるのか? 7年間の「猶予」が「例外」などといえないことはあまりにも明白です。

 新たに交渉に参加したカナダやメキシコは「交渉参加9カ国がすでに合意した条文はすべて受け入れる」という条件をのまされました。交渉に参加して、例外を認めさせるというのは、できもしない無責任な議論です。

 自民党に「交渉力」がある?

 自民党は「政府が『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」と、“条件つき反対”を装っています。しかし安倍総裁は、財界人ら230人を前に次のように“条件つき賛成”の熱弁をふるいました。「TPPについて、自民党が決断を先送りしているように思われているが、それは違う。聖域なき関税撤廃を突破する交渉力があるかないか。民主党にはない。自民党にはある」(11月15日「読売国際経済懇話会」)

 60年間、アメリカべったり、財界中心の政治にうつつを抜かしてきた自民党に、アメリカの圧力に対する「交渉力」などないことは歴史が証明済みです。繊維、鉄鋼、自動車、医療保険、牛肉・オレンジ、米……。これらはすべて日本側が一方的に譲歩してきました。安倍総裁のいう「交渉力」とは「譲歩力」なのか?

 年内参加狙う?民主党

 民主党の公約は3段構えです。(1)「TPP」という言葉を使わずに、日中韓FTAや東アジア経済連携と並行して進めるという表現で、TPPに対する反発を薄め、(2)「政府が判断する」という言い方で党への反発をそらし、(3)申し訳程度に「日本の農業、食の安全などは必ず守る」という公約を付け加える。

 しかし、(1)TPPという濃度の高い毒水に、多少薄い毒水を加えたところで、毒に変わりはありません。

 (2)間もなく消えてなくなる可能性が高い民主党政権が、破れかぶれに「近く政府高官を訪米させ、年内参加も視野に入れる」(「日経」11月29日)などということは絶対に許されません。

 (3)申し訳程度の公約付け加えは、09年総選挙マニフェストで掲げた「日米FTA締結」が猛反発を呼び、あわてて修正したときにも使った手口です。修正を手がけた菅元首相がTPP参加を言い出したことを思い起こせば、まったく信用できません。

 見え透いた“ドジョウの浅知恵”にだまされるわけにはいきません。

 TPP「極道」の第三極

 無条件で「TPPのすみやかな交渉参加」をうたう「みんなの党」。幻の野合に終わった維新と「みんな」の政策合意文書でも「TPP参加」が明記されていました。いま、維新は「国益に反する場合は反対」と公約していますが、「国益」とは「大企業益」のことでしょう。

 憲法改悪や核装備を公言する「極悪」ぶりはTPPでも同じです。第三極の「極」は極道の極です。

 「未来」、TPP反対を言うが

 「国民の生活が第一」や「脱原発」が合流した「未来の党」の公約は、「TPPは単なる自由貿易協定ではないから、交渉入りに反対」。しかし「自由貿易のためのFTA、EPAは積極的に推進する」のは、いただけません。TPPはもともとはFTAの一種です。

 TPP推進の「維新」と合流を画策してソデにされ、「未来」に合流した小沢一郎氏は、名うての自由貿易原理主義者。民主党が09年総選挙マニフェストで掲げた「日米FTA締結」を修正したときにも「修正の必要はない」と突っ張った人物です。さらに数ある政党の中で、無条件にTPP推進を公言している唯一の党、「みんなの党」との連携を模索中です。「TPP反対」は選挙目当てなのでしょうか?

 社民党―断固反対というが…

 なお、社民党も「TPP参加に断固反対」を公約しています。しかし、同党とその前身である社会党はWTO協定の締結・国会批准時の政権与党であり、野党になってからもすべてのFTA協定に軒並み賛成してきました。反省の弁は一度も聞かれません。


推進候補はダメ周りに訴えたい

画像 斎藤房子さん(福島県川俣町)=酪農=福島県は、原発事故の被災地として、農地の除染や農業の再生産のために、いま一番、政治の力を必要としています。

 そんな時に、消費税増税や、TPPを進める政党や政治家は、福島とは無縁です。TPPへの参加は、アメリカの植民地にされてしまうような気がします。農業委員大会や農協の集まりでは、TPPを推進する候補者は選ばないことを申し合わせました。

 でも、こうしたことを本気で周りの人に訴えないと、内容の定かでない新しい政党にまた流されてしまうと思います。

(新聞「農民」2012.12.10付)
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2012年12月

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