「農民」記事データベース20121210-1049-07

原発から再生可能エネルギーへの転換
――市民が行政を変えたドイツの実践

農民連関東ブロック研究交流集会の講演
環境ジャーナリスト 村上 敦さん

 農民連関東ブロックが11月13日に群馬県伊香保温泉で開いた秋季研究交流集会で、ドイツ在住の環境ジャーナリスト、村上敦さんが「原発から再生可能エネルギーへの転換〜市民が行政を変えたドイツの実践〜」のテーマで講演しました。要旨を紹介します。


再生可能エネの割合ふやす
年間30〜34万人の雇用確保

 温度効果ガス対策

画像 ドイツでは、エネルギー戦略を2010年に策定しました。温室効果ガス排出量を二酸化炭素(CO2)換算で、1990年を100%とし、現在までにすでに25%削減しているのを、2050年までに95%まで減らします。

 これには、2050年までに温暖化対策を進めないと、地域経済が崩壊してしまうというドイツの現状があります。同時に、化石燃料の枯渇や、海外から輸入しているエネルギー価格の急騰という問題もあります。

 全消費電力中の再生可能エネルギーの割合でみると、1990年には3・4%でしたが、2012年には25%、50年には80%にしようとしています。2012年の25%のうち、風力発電9・2%、バイオマス5・7%、太陽光5・3%、水力4・0%の構成になっています。この割合をもっと増やそうとしています。

 建物の性能上げて

 次に、省エネルギーのために、毎年2%ずつ投入エネルギーを減らす方針です。2010年の最終エネルギー消費のうち58%が熱消費で、このうち31%が建物の暖房、21%が産業から生じる工程熱です。

 建物の性能を上げて暖房・冷房に頼らないものにする必要があります。

 ドイツでは住宅の新築が毎年15〜17万戸。住宅のストック(中古)は4020万戸あります。省エネ改修の割合は、今ではストックに対して毎年1%(約40万戸)ですが、今後、毎年2〜3%の規模で行い、2050年までにストックのリフォームをほぼ完了する計画です。

 また、省エネ改修の経済的な効果として、年間30〜34万人の中小業者や若者の雇用が確保され、その間の失業手当など社会保障費の出費は回避されます。CO2は毎年500万トン削減でき、地域経済にとってもプラスです。外国に回すお金を地域に投入することもできます。

画像
農家のソーラーパネル(ドイツ・フライアムト村)

 自治体にも利益が

 次に、農村にも関係がある再生可能エネルギーの活用です。新築には、一定割合で再生可能な熱供給が義務づけられ、現在の戸建て新築では、太陽温水器25%、地熱式ヒートポンプが17%、木質ペレット9%、空気式ヒートポンプが9%の普及率です。

 再生可能エネルギー分野の雇用数は2011年末までに38万人なっています。

 自治体内で風力発電をした場合でも自治体に利益が生まれます。自治体内に風力発電機が設置された場合に約6000万円、計画、設計、工事を自治体内の企業が受注した場合に約1600万円、管理、メンテナンスを自治体内の企業に受注した場合に約9400万円、風車の所有者が自治体内に存在する場合には約1・7億円の利益がでるのです。

(新聞「農民」2012.12.10付)
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2012年12月

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