「農民」記事データベース20130311-1060-17

国産よりも1割安

西友
オーストラリア米
中国産に続き販売

販売価格は原価割れ
業者に割り戻し?

関連/ばらつき、うまみなし、外食向き…
  /国産米と比較してみると… 低品質は数字でも明らか
  /雨少なく不安定な生産 オーストラリア米


TPPに参加すれば無制限に輸入

画像 大手スーパー・西友が1月から、関東近県の154店舗でオーストラリア(豪州)産米の販売を開始しました。5キロ1599円(1キロ320円)で、国産米より1割安いといいます。西友は、昨年3月にも中国産米を取り扱いましたが、それに続く輸入米の販売で、牛丼チェーン店の吉野家がアメリカ産米を、同じく松屋が豪州産米を使い始めています。

 西友の米は、玄米で輸入し卸業者の(株)ヤマタネが精米した中粒種で表示は複数原料米。

 西友の広報担当者は、「低価格米が品薄なので品ぞろえのため、味と安全性、価格の3つの基準で検討した結果、豪州産米になった」と弁明します。しかし、政府の業者への売り渡し価格を昨年11月入札分でみると、精米換算で1キロ321円(税込み)でした。原料米としては国産米のコシヒカリ並みの価格で、業者の言い分は成り立ちません。

 アメリカ産や中国産も同じ水準の価格でした。しかも、西友の販売価格は原価を下回っていて、一部に言われている「輸入商社から業者に割り戻しがある」のか、疑問がわきます。いずれにしても国民の輸入米アレルギーの払しょくとTPP参加を想定した動きと見なければなりません。

 この米は毎年、77万トンずつ輸入されるミニマムアクセス米のうち10万トンを主食用として、売買同時入札(SBS)方式で輸入されたものです。昨年11月の豪州産の入札では輸入商社の政府への売り渡し価格は、1キロ161円にすぎません。

 しかし、購入希望が殺到し、業者は関税に相当するマークアップを1キロ160円も上乗せし、1キロ321円で政府から買い入れているのです。TPPに参加し、関税が撤廃されれば1キロ161円で無制限に輸入されることになりかねません。

 農水省はTPPに参加すれば残ることができる国産米は1割と試算していましたが、現実味をおびてきたいま、TPP参加反対の声を大いに高めることが求められています。


ばらつき、うまみなし、外食向き…

金澤米店・砂金健一さん

 炊き上がったときの、粒の大きさが違っていたのが気になりました。家族で食べてみましたが、舌触りがざらつき、うまみがないという印象でした。タレなどに混ぜれば、食べられるかな、というもので、外食向きの米という印象です。

 身土不二―人の命と健康は土とともにある―という言葉の通り、私たちは、土の恵みを受けて生きてきました。これは水でもいえます。

 日本でおいしいお米が作れるにもかかわらず、外国の土と水で育った米を持ってくるのはおかしい。まして米は日本人の主食です。

 こだわりの米を販売することで、農家の思いや姿を消費者に伝え、消費者の望みを農家に伝えたい。つまり、生産者と消費者、人と人とをつなぐ手伝いができれば、と考えています。


〈食味値〉

国産米と比較してみると…
低品質は数字でも明らか

 米業者に依頼して豪州産米の食味値を計測し、国産米と比較してもらいました。

 食味計(静岡精機製)は、水分やタンパク質などの成分で食味値を計測し、80点以上をAランクとしていますが、豪州産は61点。愛知県の品種でBランクとされる「あいちのかおり」でも78点を出しており、豪州産米の品質の程が数字の上でもでています。


雨少なく不安定な生産
オーストラリア米

近年深刻な干ばつで生産量激減、輸入国に

 オーストラリアの米生産は、その大部分が大陸の南東部、ニューサウスウェールズ州のマレー川とマランビジー川の流域に集中しています。ここは比較的湿潤な地域ですが、それでも年間降水量は300〜600ミリしかありません。日本の米どころ新潟県の年間降水量は約1800ミリなので、3分の1以下。かんがいなしには米生産は不可能です。

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 ところが今世紀に入って、10年近くもの間、この地域は深刻な水不足に苦しんできました。当然、2つの河川のかんがい用水も激減し、米の生産量はピーク時(2000年)の118万トンから2007年には1・3万トンまで落ち込み(グラフ)、輸入国に転落しました。

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干ばつで底をみせるオーストラリアの湖(2007年、北海道農民連撮影)

 しかも、この干ばつは地球温暖化によるもので、今後も深刻化、常襲化するという研究報告が、世界各国の科学者から相次いでいます(気候変動を科学的に研究・評価する国際機関であるIPCCなど)。今は輸出できても、いつまた輸入国に転落するかわからない――それがオーストラリアの米生産なのです。

(新聞「農民」2013.3.11付)
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2013年3月

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