「農民」記事データベース20130603-1071-08

ドイツの林業を学ぶ
(上)

農民連ふるさとネットワーク 渡辺満広


木材見本市で出会い、交流して

 ホワイトアスパラガス収穫が真っ盛りのドイツに5月5日から12日まで、先進の林業を学ぶために福島県農民連のメンバーと合計7人で参加してきました。ガイド兼通訳はドイツ在住の林業、林学に詳しいジャーナリスト、池田憲昭さんです。

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記念碑前でデモ参加者と。前列右が筆者

 世界最大規模の見本市を視察

 最初の2日間は、ドイツ北部のハノーバーで毎年開催される木材見本市を視察。16ヘクタールの広大な会場に入るとデモンストレーションのチェーンソーや製材機の音が鳴り響き、ワクワクしてきました。

 この見本市はEU(欧州連合)諸国中心に世界中のメーカーの家具材から製材機、ペレット製造機、木質プラスチックなど木に関するあらゆるものが展示・紹介され、国内外から約9万人(6日間)が訪れる世界最大規模のものです。

 授業のカリキュラムとして学生の参加も多く、見本市がフェスティバルのような出会いと交流の場であり、学びの場ともなっています。

 今回は2つに絞って紹介します。

 持続可能エネの実力みせられて

 一つは移動式トレ―ラー型製材機で、トラクターで牽引(けんいん)でき、農家が農閑期に兼業で製材を請け負って成功しています。私も操作してみましたが意外と簡単で、1人で稼働できるようになっています。防サビ処理がきちんとされているので雨、雪の多い日本でも使えます。

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移動式トレーラー型製材機。トラクターで牽引できる

 もう一つは、木をガス化して内燃機関を通じて熱と電気に変換するコジェネレーションシステムです。元々農家が発明したもので自動車メーカーが製造販売しています。

 3日目にはその実例を見学。養鶏農家が卵入りパスタをつくるボイラーにこのシステムを組み入れていました。化石燃料に頼らない、持続可能なエネルギーの実力を見せつけられました。

遠く福島を思い起こし
泣きくずれるパーペさん

 出発前にたまたま手にとった本(※)に、今年3月9日に氷点下3〜4度の寒空の下ベルリンで開催された脱原発デモに30時間かけてトラクターでかけつけた北ドイツ・ゲッティンゲン近郊の84歳の有機農家、ルードヴィヒ・パーペさんが紹介されていました。日本大使館から出て来て、ドイツの農民たちからのアピールをやっとの思いで届け、疲労困ぱいして泣き崩れたパーペさんの行動に私は感動して、遠く離れたドイツで福島を思い泣き崩れる彼を抱き起こしたいぐらいいとしく感じました。

 研修中、偶然にも宿泊地がゲッティンゲンでした。「パーペさんに会ってみたい」と思いを同行メンバーに提案したところ快く受けてもらいました。

 ガイドの池田さんを通じてパーペさんに連絡を取ってもらい、翌日夕方の市内の教会前広場での脱原発集会デモで会えることになりました。

 私は集会で、ここまでたどりついた経緯、日本での活動、パーペさんへの思い、そして「脱原発でともにたたかっていこう」と福島の農民として発言しました。

 そのあとの核のマークのついた黄色いドラム缶を蹴り回しながら進んだドイツ式デモ行進は圧巻でした。終点地の市庁舎前広場に着くと、パーペさんらから昨年の3・11に脱原発を願って建てた福島の碑と植えた桜の紹介を受けました。最後にパーぺさんの自家採取の麦や豆の種を受け取り、最後に抱き合って別れました。パーペさんとの出会いが私のビジョンをひろげてくれました。


 (※)『未来』2013年5月号(560号)「寒いベルリンでの脱原発デモ」永井潤子著

(つづく)

(新聞「農民」2013.6.3付)
ライン

2013年6月

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