「農民」記事データベース20130729-1079-06

食糧主権、
アグロエコロジーの実践さらに
(1/3)

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 インドネシア・ジャカルタで行われたビア・カンペシーナ第6回国際総会に参加した齋藤敏之団長、副団長で女性部の高橋マス子さん、青年部の三浦草平さんが国際総会を振り返って語り合いました。


座談会
ビア・カンペシーナの国際総会を振り返って

 資本主義の弊害 いろいろと告発

 ――参加した感想はどうですか?

 齋藤 一つは、農地をめぐって大きなたたかいが世界で起こっていることを感じました。大企業が農民を土地から追い出してそこを買い占める――。たとえばインドネシアの代表は、パーム油のプランテーション(大規模単一栽培)のために農民が暴力的に排除されたと報告していました。

 アフリカのモザンビークでは、大規模な輸出用作物をつくる農業開発が計画され、小農民を追い出そうとしています。それがアジア、アフリカなど発展途上国はもちろん、ヨーロッパなどでも起きていることがわかりました。

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原発とTPP問題を報告する齋藤さん(中央)。その隣は通訳の岡崎さん=10日

 二つ目は、報告者の多くが、「資本主義に未来はない」と語り、いろいろな形でその弊害が告発されたことです。農業の分野でも、遺伝子組み換えのように大企業が農民から技術を奪ってしまうことや、アルゼンチンの代表は除草剤の空中散布によって「首都ブエノスアイレスに住む95%の女性の母乳から残留農薬が検出された」と衝撃的な発言をしていました。

 こうして食糧主権確立の重要性を確認するうえで「アグロエコロジー(環境・生態系と共存する持続可能な農業)」という言葉のもつ、単に技術的なものだけでなく価格保障まで含めた深い意味を考え、日本でもさらに発展させることが大事だと思いました。

農地を大企業から守る取り組み重要だ
「種子を守る」ことを大きな力にして
核兵器と原発の恐ろしさ伝えたかった

 工業的な農業に対決する運動だ

 高橋 全体的に、参加国と組織が多かったことに感動を覚えました。FAOの代表の発言から、小農の役割について、食料の供給だけでなく、地域社会の維持や食料安保に役立っていることが実感できました。

 「アグロエコロジー」という運動は農薬を多投し、CO2を排出して、世界中に輸出する「モノカルチャーで工業的な農業」に対決する運動だと理解しています。

 「種子を守る運動」では、遺伝子組み換え種子やF1種子への対抗策として、「種子は人類に奉仕する民衆の遺産」と位置づけられ、とりわけ途上国では、高価な種子を買えない農民にとって「種子を守る」ことが大きな力になっていることを感じました。

 三浦 いろいろな国から参加している農民たちは、違った環境の中にあるけれども、直面している問題は、私たちと同じだと思いました。楽して金もうけするのでなく、昔ながらの生活をしたいという話を海外の農民の口から聞けてうれしかったです。

 また、後から農業に参入してきたのに、金の力で農民を追い出し、痛めつける多国籍大企業の横暴を許さない活動が大事だと思いました。

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農民連女性部が用意した折り鶴が全員に配られました=12日

 農民連の代表が原発問題を発言

 ――3人の方はそれぞれ発言する機会がありましたが、齋藤さんと三浦さんは原発問題を訴えましたね。

 齋藤 福島の原発事故の現状と自然エネルギーの活用、そして復興の取り組みとTPPについて全体総会で発言しました。とくに農業生産と原発は相いれないという主張は共感を呼び、拍手が一番多かったのではないかと思います。

 三浦 青年総会で、福島の現状と原発反対の取り組みについて話しました。唯一の被爆国の代表として、核兵器と原発の恐ろしさを伝えたいとの思いからです。発言後に「よかった」と声をかけられたり、イギリスの参加者から「記事にしてもいいか」と質問されたりと一定の成果があったと思います。一方で、「原発って何?」という反応もあり、もっと声をあげていかなければと感じました。

 齋藤 同じく全体総会で杵塚歩さん、地域会議で大木傳一郎さん、女性総会で佐々木賀代子さんが原発問題で発言しました。こうして農民連の発言が注目され、東南・東アジア事務局から宣言文案の作成を要請され、それが特別宣言に結実しました。

 ――高橋さんは、地域会議で、沖津さんは女性総会で「慰安婦問題」について発言しましたね。

 高橋 いま、橋下大阪市長による慰安婦肯定発言や靖国神社への参拝問題で、海外から日本の右傾化を心配する声があがっています。こうした日本国内の動きに対して、憲法9条を守り、侵略戦争美化、女性差別を許さないたたかいを紹介しました。

 インドネシアを出発する6月13日に、ジャカルタの歴史博物館を見学しましたが、インドネシアでも「イアンフ」という言葉が通用し、日本侵略のつめ跡が残っています。日本でのたたかいを引き続き強めていかなくてはと感じました。

 総会から学んで福島の活性化に

 ――最後に、国際総会の成果を今後どう生かしていきますか。

 齋藤 総会では、多国籍企業のもうけ本位の自由貿易でなく、食糧主権確立の重要性が強調されました。その具体化として、TPP参加に反対する運動を強めます。さらに、いま日本で、TPPへの対応として、大規模な農地の集約方針が安倍首相や財界からでています。農地を企業から守る取り組みも重要です。

 今年の12月にはインドネシア・バリ島でWTO(世界貿易機関)の閣僚会議が開かれます。TPP・FTA(自由貿易協定)に対するたたかいとともに、WTOの息の根を止めるたたかいにも力を入れます。

 高橋 種子を守る運動、たとえばトラスト運動や在来種を守る取り組みをもっと広げていきたい。さらにアグロエコロジーを実践し、日本の国土にあった農業を進める必要性を感じました。

 三浦 自分が考えて実践している農業が間違いではないことがわかりました。最終日にインドネシアのスカブミ村を訪問したとき、そこはかつてゴムのモノカルチャーだったそうですが、地元の農民たちが農地を取り戻し、千枚田を利用して、今では栽培から加工、販売までを行う大きな産地として成り立っています。こうしたエネルギーに学びながら福島の活性化に生かしていきたいです。

(新聞「農民」2013.7.29付)
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2013年7月

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