「農民」記事データベース20140908-1132-07

これからは
エネルギーも自給する“百一姓”だ

充電せず自家使用でオフグリッド実現


茨城県北農民センター
鈴木孝夫さん手記

 29年前にUターンして、無農薬で稲を作ってきました。インターネットを通じて販売するようになってから15年以上たちます。しかし、あの3・11の原発事故の後、ネットでの注文は完全になくなりました。

 米の放射能を測定すれば、はるかに基準値より低い値です。しかし“価格は高くてもいいものがほしい”という消費者が、茨城県の農産物に疑問を抱く意識を、風評などという言葉でくくりたくはありません。誰よりも私自身の腹に、元気を取り戻せないでいます。

 こんな事態を引き起こしたのは東京電力。責任者が罰せられることもないままです。その公害企業がつくる電気を、おとなしく買いつづけることに我慢がなりません。

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パネル設置作業中の鈴木さん(森住卓さん撮影)

 まきストーブで暖房もこたつも

 以前から「FECの自給」というキーワードが気になっていました。Fはフード、Eはエネルギー、Cはケア。つまり、食べものとエネルギーと介護を地域で自給する取り組みです。ずっと“百の仕事をこなすから百姓だ”と吹聴してきました。これからは“百一姓”です。食べ物だけでなく、エネルギーも自給する暮らしです。

 そこで一昨年、安価な薪(まき)ストーブを購入し、それを改造したロケットストーブを利用して暖房を始めました。燃料は家の周りの立木です。たくさんお湯も沸かし、コタツは湯たんぽで温めています。昨年からは、太陽光発電を中心として、電気の自給にも挑戦しています。

 いま、日本中どこへ行ってもソーラーパネルが並んでいます。ほぼ全部が、売電事業です。わが家はそれらとちがって、“オフグリッド”。電気を売ることはせず、自分でつくって充電して自家用に使うシステムです。

原発の電気は使いたくない!

 設置も接続も作業は自分で

 予備知識ゼロからのスタートでした。インターネットで独学して、ソーラーパネルや接続ケーブル、充電コントローラー、ディープサイクルバッテリー、インバーターといった機材類をそろえました。

 設置も接続も、一人で作業しました。たとえばソーラーパネルは20数枚。1枚20キロくらいありますが、これを片手で持って、ハシゴを登りました。会ったこともない曽祖父が建てたというわが家は築百年以上。かやぶき屋根に、ソーラーパネルが並んでいるなんて、きっと世界でも唯一では? 試行錯誤のなかで、屋根から落ちそうになったり(3回)、安物のインバーターが発火してあわてたりしています。それでも幸い、感電事故は一度もありません。

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電気の接続も悪戦苦闘して自分で

 東電の電気は購入ゼロを達成

 この4月に東電からの電気購入ゼロを達成し、以来現在まで継続できています。天気が悪いと、昼間はともかく、どうしても夜間の電気が不足します。そんな場合、エンジン式の発電機も併用します。また、切り替えスイッチでいつでも東電の電気も使えるようになってはいます。ただし今年4月以降、切り替えたことは一度もありません。

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かやぶき屋根にズラリと並んだソーラーパネル

 このほか、三相交流200ボルトで駆動する農機具もあります。それも含めて東電の電気はゼロ使用です。原発を利用しなくてもすむ暮らしをみずから実践し、ネット上でも紹介し、思いを発信し続けています。

 ※鈴木さんのブログは http://blog.goo.ne.jp/suzuki-31

(新聞「農民」2014.9.8付)
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2014年9月

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