東電は賠償拒否の結論ありき
営業損害の切り捨て許さない
賠償請求運動で交流会
農民連
関連/20ミリシーベルト受忍論は撤回せよ
農民連は8月31日、福島原発事故の賠償請求運動の交流会を国会内で開き、10府県の代表者らが参加しました。
「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟原告団の中島孝団長の連帯のあいさつに続いて、同訴訟弁護団事務局長で弁護士の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)さんが、「20ミリシーベルト受忍論とどうたたかうか」と題して、福島の原発事故をめぐる情勢や、その根底にある政府・東電の方針について報告しました(報告内容はこのページに別掲)。
この間、東電は「2013年3月をもって風評被害は収束した」として、これ以降の営業損害の賠償を一律に拒否する姿勢に終始する一方で、建前上では「個別の事情を精査する」としています。しかし「実際には請求者がどんなに“個別の事情”を説明しても、“原発事故との相当因果関係が認められない”として、賠償を一方的に拒否し、請求を放置している。とにかく払わないという結論ありきの姿勢だ」との報告が、茨城、栃木、千葉など多くの県の参加者から相次ぎました。
また、宮城県からは、福島県に隣接し、場所によってはいまなお出荷制限が続く丸森町のタケノコの状況について報告があり、「出荷解除された所もいまだに放射能が高く、検査しなければ出荷できない。しかしタケノコの出荷は短期間に集中し、検査していると結局、出荷に間に合わない。しかし出荷しなければ、被害金額がないことになり、賠償されない」などの実態が紹介されました。
後半は、高橋ちづ子衆院議員をはじめ日本共産党の6人の国会議員も出席し、意見交換しました。高橋議員は、「20ミリシーベルトは、放射線業務の労働者の基準などにも関わる大問題だ。国会内外で力を合わせましょう」と呼びかけました。
福島県農民連が国・東電と交渉
福島県農民連は9月7日、「20ミリシーベルト受忍論」を撤回し、被害の全体的な救済と根絶を求めて、衆参両院の経済産業委員会の所属議員への要請や、国と東京電力との交渉を行いました。
国・東京電力との交渉では、「20ミリシーベルト受忍論」や、「営業損害の賠償打ち切り」、「早期の避難指示解除」などの撤回を求め、あわせて「検査機器の購入費用および検査費用の賠償」「備蓄米へ転換した米の賠償」など16項目の個別案件に関する交渉を行いました。
「20ミリシーベルト受忍論」の撤回について、参加者からは「ICRP(国際放射線防護委員会)では緊急時の、暫定的な扱いとして勧告されているだけなのに、どうして住み続けて良いという基準になるのか」などの声があがりました。しかし、原子力委員会規制庁は「それ以下になっても、すぐに解除するわけではない」などとあいまいな答弁に終始。さらに「病院もない、店もない、生活インフラのないところにもとにかく帰還させる、その被害者切り捨ての口実にされているのが、20ミリシーベルト受忍論だ」と厳しい追及が続きましたが、規制庁は最後まで「20ミリシーベルト以下は避難指示を解除する」とする方針の見直しには一言も言及しませんでした。
被害続くかぎり
また営業損害を2年分一括払いし、事実上それで打ち切りとする方針について、参加者は「放射能の被害は2年では消えない。一括払いでなくていいので、損害が続くかぎり賠償するべきだ」と要求したのに対し、経産省は「一括払いでなければ申請そのものを受け付けない(つまりそれ以降の賠償は基本的にしない)」との姿勢を頑として崩さず、交渉は大紛糾しました。
個別案件に関する項目では、東京電力は、米や果樹など豊作だった年の増収分の賠償を拒んだり、農家相手の小さな資材店に対し、「客の多くが農家だったこと」を証明する書類を、震災前の平成20年(2008年)にさかのぼって提出するよう求めるなど、農業と農村の実態からかけ離れた、とんでもない主張を繰り返し、参加者の大きな怒りを呼び起こしました。
(新聞「農民」2015.9.28付)
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