マイナンバー制度 
その問題点と対策 
(下)
どう対処したらいいか
 マイナンバー(共通番号)制度にどう対処したらよいのか。今回は、その対策を取り上げます。
        (農民連税金対策部) 
  
  
 国民のメリットなし危険いっぱい 
制度の廃止と運用の中止を
 マイナンバーは、国にとっては税金や保険料の徴収強化や給付抑制に活用することができますが、国民にとっては大きなメリットはなく、情報漏えいの危険が増えます。農民連は、ナンバー法の廃止と運用の速やかな中止を求めます。
 
  
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    自治体議員もマイナンバー制廃止を求めました=7月6日、国会内  | 
   
 
  マイナンバーの通知が始まりました
 日本に住民票を持つ一人ひとりに政府が12けたの番号を付けて管理するナンバー法が10月5日に施行され、番号の通知が始まっています。
 5日時点の住民票の住所に、個人番号が書かれた「通知カード」が世帯ごとに簡易書留で郵送されます。10月中旬から発送を始め、11月中に配達されることになっています。 
 しかし、住民票を居住場所に移していない場合やさまざまな事情で受け取れない場合など1000万人規模の「不達」が出るとみられています。 
  社会保障や税金などの手続きに利用
 来年1月から、医療保険や介護保険、雇用保険などの社会保障分野、確定申告などの税分野、被災者生活再建支援金などの災害対策の手続きで使うものです。施行前に、新たに預貯金口座や特定健診などにも利用を拡大することが決まりました。
 事業所は給与などの書類に番号を記載する必要があるため、従業員に番号の提供を求めることになります。ただし、従業員から提供が得られず、番号が書かれていなくても、書類は受理されることになっています。 
  番号カードの申請は「任意」
 通知には、顔写真付きICチップ搭載の個人番号カードの交付申請書が同封されていますが、申込みは任意です。
 番号カードがなくとも行政の手続きはできます。必要なければ申し込まなくてもかまいません。 
  番号の漏えいには罰則が
 番号を扱う自治体や民間業者等のマイナンバー管理対策も完了しておらず、個人情報の漏えいや、なりすまし被害がおこる恐れがあります。
 集めた番号を漏らしてしまった場合、最大で「4年以下の懲役、または200万円以下の罰金」の罰則があります。民間業者等に過重な管理対策を強いるものです。 
 茨城県取手市では、本来記載されるはずのない個人番号100人分が住民票に印字されて交付され、金融機関などに提出されて第三者に個人番号が漏えいしてしまいました。 
  年4〜5000円の還付金?!
 政府は、消費税増税とあわせて行うとしていた軽減税率に代えて、番号カードを利用して買い物をした人に消費税を還付する方針でした。手続きが面倒なうえに還付金の上限は年間4〜5000円というわずかな額であり、国民の猛烈な批判を受け、見送る方向です。そのような姑息(こそく)なことをするのではなく、消費税増税をきっぱり中止するべきです。
  多額の導入・維持経費・収賄事件まで
 導入経費3000億円、年間維持経費300億円といわれるマイナンバー関連事業をめぐって、厚生労働省の室長補佐が収賄容疑で逮捕されました。
 これまでに発注した関連事業27件のうち22件は、政府の検討会議に参加していた7社が受注しています。 
  百害あって一利なし。マイナンバー制度を廃止させよう
 マイナンバーで一番、喜ぶのは政府と自治体、大企業です。預金、財産、病歴、健康状態、家族構成、農業経営の業績、従業員構成など、あらゆる情報が一元的に掌握されることになります。
 政府は、マイナンバー制度を徴税強化や福祉サービスの削減などに使おうとしています。なんのための徴税強化と福祉削減か。それは安倍政権の「戦争法」体制を推進するための戦費調達にほかなりません。 
 単組や支部・班で、新聞「農民」先週号「浦野税理士のインタビュー」を大いに学び、議論を深め、マイナンバー制度の廃止を求める運動を広げましょう。 
         (新聞「農民」2015.11.2付) 
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