「首脳会談で日米FTAの 
話は出なかった」は 
大ウソだった
  
 強まる日米FTAに 
突き進む危険
 やっぱり首脳会談で日米FTA(自由貿易協定)について話し合っていた――。ハガティ駐日アメリカ大使は11月17日、日本記者クラブで講演し、日米首脳会談の「舞台裏」を赤裸々に証言しました。
 安倍首相は「日米FTAに関するやりとりはなかった」(20日の衆院本会議)と打ち消しに躍起です。いったい、どっちがウソをついているのか――。 
 首脳会談でトランプ大統領の隣に座っていたハガティ大使の証言と、平気でウソとゴマカシ答弁を繰り返してきた安倍首相の言明のどちらが信用できるか、結論は明白です。 
 ハガティ大使の証言は、表の通り明快です。日本の大手マスコミは安倍首相の意向を「忖度」(そんたく)したのか、なるべく国民の目に触れないようベタ記事扱いですが、アメリカ大使館が講演と質疑応答を全文公表しています。 
 (https://jp.usembassy.gov/ja/ambassador−hagerty−addresses−jnpc−ja/) 
  日米FTAは経済対話の対象
 貿易赤字解消を迫るトランプ大統領に対し、首相が「日米経済対話を深化させる」として体をかわしたという説明もウソ八百でした。
 ハガティ大使だけでなく、日米経済対話のアメリカ側責任者であるペンス副大統領が経済対話は「米日FTAへの土台を作るものだ」(朝日)と、対話が日米FTAへの入り口であることを公言しています。 
  
 
  米や小麦、乳製品の完全自由化
 ハガティ大使は「非常に高い基準の2カ国間協定を求める」と述べていますが、それを象徴するのがNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉におけるアメリカの要求です。11月17日、アメリカはカナダに対し、乳製品・鶏肉・鶏卵の関税撤廃を求める新交渉目標を突きつけました。
 カナダは乳製品・鶏肉・鶏卵の輸入管理(需給調整)と価格下支えを組み合わせて実施する「供給管理政策」を長年実施しており、TPP交渉でも守り抜きました。トランプ政権はこれを「アメリカからの輸入をはばむ不公正な政策」と攻撃し、ついに廃止を要求するに至ったのです。 
 日本でいえば、米や小麦、乳製品の輸入管理・需給調整に対する全面的な攻撃に匹敵します。TPP交渉では、米や小麦のアメリカからの輸入枠の設定、一部乳製品の関税撤廃が強要されましたが、国家による輸入管理と米の関税はかろうじて維持しました。 
 日米FTAでは、ここに焦点を当て、国家貿易の廃止と関税撤廃をゴリ押しする完全自由化の危険が強いと見なければなりません。カナダに対するアメリカの要求が示しているのは、そういう事態です。 
 首脳会談で「日米FTAという言葉は出なかった」という真っ赤なウソで覆い隠しながら、TPPを上回る日米FTAに突き進む危険が強まっているといわなければなりません。TPPも日米FTAも断固反対。いま、TPP反対のネットワークや農協、自治体などに呼びかけて、TPP反対のような運動を地域からまきおこすときです。 
         (新聞「農民」2017.12.4付) 
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