「農民」記事データベース20180115-1294-02

改憲
2018年は正念場
(下)

全国革新懇代表世話人
法政大学名誉教授
五十嵐 仁さんに聞く


改憲の危険性を国民に知らせ
多様な運動で必ず策動を阻止

 安倍政権による改憲策動が危険水域に入ったことは事実です。これをどう押し返していったらよいのでしょうか。4つのハードルを引き上げれば阻止できます。

 3000万署名を広げ数で示す

 第一は、自民党の内部がまとまるのかということです。2012年に定めた自民党の改憲草案から安倍9条改憲論は「後退」しており、石破茂さん(衆院議員)などの反対があります。

 2番目に、与党がまとまるのか。問題は公明党です。総選挙での不振もあって、「ブレーキ」役を果たすべきだという反省があります。山口那津男代表は国民投票も3分の2を超える賛成が前提だと主張しています。

 3番目に、野党の側の問題です。共産党と社民党は「改憲は必要なし」と明言しています。立憲民主党も「安倍政権が進める9条改憲は反対」という立場です。希望の党は揺れています。野党第一党が改憲に同調する見通しはありません。

 4番目は、国民世論です。世論調査では、「9条改憲は急ぐべきではない」が66%を占めています。政治が取り組むべき課題として要求が多いのは、改憲ではなく景気回復や社会保障であり、くらしを守ることです。

 この点で最も大事なのは、改憲論の危険性を広く知らせ、反対の世論を大きく高めることです。「安倍9条改憲ノー!3000万人署名」を広げ、数で示すことが効果的です。

 それを軸に学習会や集会などの取り組みを広げ、多様な運動を展開しなければなりません。市民と野党が力を合わせ、与党の一部も巻き込めば改憲を阻止できます。

農民連に期待
農政を転換させるイニシアチブ発揮を

 ことし18年は重要な年に

 この点で、2018年は重要な年になります。通常国会の後半、秋の臨時国会で改憲発議を許さないたたかいが必要です。2019年7月の参議院選挙までがヤマ場になるでしょう。

 これまで自民党政権は、政治改革・行政改革・構造改革など、さまざまな改革を行ってきましたが、ことごとく失敗し、貧困と格差が広がっています。

 地方・地域は疲弊し、少子高齢化が進んでコミュニティーが存亡の危機にあります。その大きな要因は、農業・農村が立ち行かなくなっていることです。

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「安倍内閣の退陣を求める大集会」でこぶしを振り上げる参加者=2017年7月19日、国会前

 農民連こそが日本社会を救う

 安倍政権のもとで、農地の集約、農業の大規模化、JAの弱体化などが進められてきました。産業として成り立つ農業が目指された結果、小規模・零細農業、兼業農家が切り捨てられ、地方が衰退してきました。

 これを立て直すには農業・農村が元気になることです。私の実家は新潟県の専業農家で、私は長男です。しかし、父は跡を継いでほしいとは言いませんでした。ころころ変わる「猫の目農政」で展望を失ったからです。

 農民連のみなさんには、農家を守り農業を再生させるために、農政の方向転換に向けてイニシアチブを発揮してほしいと思います。農民連こそが農業と農家を救い、地方のコミュニティーを立て直し、ひいては日本社会を救う力になる――そんな気概をもってがんばってほしいと思います。

(おわり)

(新聞「農民」2018.1.15付)
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2018年1月

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