「農民」記事データベース20180122-1295-05

農家が得する
税金コーナー
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農民連の『税金ノート』の効用と
上手な記帳方法について
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 『税金ノート』の上手な記帳にむけて

 農民連加入2、3年の方を対象に開催されている「税金ノートの上手な付け方勉強会」で使用されているテキストをもとに、『税金ノート』の記帳に際して注意すべき点を今号と次号で述べていきます。

 詳細は、『2018年版農民連の確定申告の手引き』(有料、会員外非売品)も参照して下さい。

(全般編)

 収入と経費を記帳するときの注意点

 (1)税金ノートは、鉛筆で記帳しましょう。

 (2)記帳する対象期間は、その年の1月1日〜12月31日までです。収入(未入金の分含む)と支出(未払いの分含む)をそれぞれの項目ごとに記帳します。

 (3)通帳、領収書や伝票等をもとに記帳します。領収書などがないものは、カレンダー、家計簿、日記帳などに日常的に記しておき、『税金ノート』のメモ欄などを活用してまとめましょう。メモには、月日・内容・相手先・金額を記しましょう。

(収入編)

 収入を記帳するときの注意点

 (1)収入は収穫基準になっているか。特に12月に出荷したものが、翌年1月以降に入金されるものも、出荷した年の売上分として扱います。入金された日が、売り上げた日ではありません。

 (2)売り上げは全てを計上しましょう。通帳などに入金される細かな金額も拾い上げましょう。(補助金、受取共済金、電柱敷地料、市場の出荷奨励金、農協の出資配当金など。ただし全ての入金が農業所得の収入ではないので、(3)のとおり他の所得にも分類しましょう)

 (3)NTTなどの小額の敷地料(不動産所得)、地元の人足賃(給与所得)、農協の出資配当金(配当所得)、預貯金の利子(利子所得)などは、農業の収入ではないので、それぞれの所得に分類して、確定申告書に記入しましょう。

 (4)水稲共済、ハウス共済、果樹共済などの受取金、各種農業関連の補助金、市場などの出荷奨励金、新規就農支援金の開始型(年150万円)などは、農業の雑収入に計上しましょう。なお、新規就農支援金の準備型は、まだ農業経営を始めていないので農業所得ではなく、所得税のうちの雑所得として扱います。

 (5)現金売り上げは、事実にもとづいて説明ができるように、日々の売上金額を記帳しましょう。欲を言えば品目と単価も記入しておきましょう。

 (6)自分が生産した農産物を家族で消費したときは、時価の70%程度の金額を売り上げの家事消費として計上します。

 (7)自分で生産した農産物を交際費、手伝いのお礼、宣伝費などとして使用した場合は、それぞれの時価で事業消費として売り上げに計上します。同時にその同額を接待交際費や宣伝費などの経費としても計上してください。結果、差し引きゼロになります。

 (8)その他事業収入や不動産収入がある方は、農業と同様に『3業種用ノート』の収入欄にもれなく記入しましょう。収入の記帳の考え方はほぼ同じです。

(経費編)

 経費を記帳するときの注意点

 (1)国税通則法では、「納付すべき税額が納付者のする申告により確定することを原則とし…」と定められており、自分で計算して申告する自主計算、自主申告が基本になっています。

 (2)所得税法37条では「必要経費」について「所得の計算上必要経費に算入すべき金額は、…所得を生ずべき業務について生じた費用…の額とする」と定められています。経費は、経費を使った人がその実態を一番知っています。税務署ではありません。経費を使った人が自信を持って経費を計上していきましょう。

 (3)仮に1万円の経費を書き漏らしたら、どれだけ損するか、確認してみましょう。確定申告書第1表の(9)番「所得金額の合計額」にそれぞれの税率(所得税5%、住民税10%、国保税10〜15%)を乗じると…。1万円×(5%+10%+10〜15%)=2500〜3000円となります。1万円の経費を漏らすと、2500円〜3000円の所得税、住民税、国保税の増税になります。経費の25〜30%が増税になる! これをしっかり頭にたたき込んでおきましょう。

 (4)農業収入をあげるために使った経費は、法律で定められた必要経費です。これを計上しきっているか、絞り出しているか。今までの既成概念を捨てて、(3)をしっかり頭に入れて、しっかりと必要経費を探しましょう。

 (5)領収書や伝票またはメモ類(カレンダー、日記帳、家計簿など)などをもとに、記帳するとともに、資料がない場合は、思い出してメモ(購入物、月日、金額、購入先など)を作りましょう。

 (6)農業・事業・不動産と生活の両方に使用する経費もたくさんあります。住宅関連、水光熱費、固定資産税、火災保険、自家用車関連(ガソリン、車検、任意保険)などです。これらは、見落としやすい経費の宝庫です。必ず事業按(あん)分○○%を自分で設定して、経費に計上しましょう。なお、事業按分について税務署に問い合わせると、「合理的な基準を持って自分で判断してください」と答えが返ってきます。面積や使用頻度などを基準に決めましょう。

 (7)その他の事業収入、不動産収入がある方は、農業経費と同様の考え方で『3業種用ノート』を活用して経費計上していきましょう。このノートは、たとえば水道光熱費など家庭用、農業用、事業用または不動産用に同時に使用している場合、それぞれの所得の按分率を決めて、ひとつのページに書き込むことができ、経費を一括で配分する優れものです。

(新聞「農民」2018.1.22付)
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2018年1月

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