卸売市場法「改正」で今後どうなる
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卸売市場法「改正」法案が閣議決定され、今国会に提出されています。生産者や消費者、市場関係者にとって「改正」法案はどんな意味があるのでしょうか。
重要なことは、これまで中央卸売市場の開設は、国の「認可」、地方卸売市場の開設は、都道府県知事の「許可」が必要でした。これが、中央卸売市場については国が、地方卸売市場については都道府県知事が「認定」すればよいことになりました。こうして、卸売市場の整備や運営に対する国や地方自治体の関与の必要性が大幅に縮小してしまったのです。
現行法では、中央卸売市場の開設は、都道府県と人口20万人以上の都市の地方自治体に限られていました。それが改定法案で、施設の規模が一定以上で、国の定める要件に適合した場合、地方自治体に限らず、法人が開設する卸売市場も中央卸売市場として認定するとされ、民間大企業による中央卸売市場の開設も可能になりました。
こうして、公設市場の民営市場化がますます進み、卸売市場の再編・整備がいっそう促進される可能性があります。卸売市場が生鮮食料品の需給調整と価格形成、中央卸売市場では、食品衛生検査員の派遣など国民への食料供給の安全性の確保という公的役割が後退する可能性があります。
「第三者販売の禁止」「直荷引きの禁止」が削除されたことにより、卸売業者や仲卸業者と、大手のスーパーや外食産業との直接取引が拡大します。これにより買い手の力が強くなることで、買いたたきが起こり、市場で「公正な価格形成ができなくなる」との懸念がでています。またこうしたバイイングパワーの強化は、生産者価格の低下にも影響します。
さらに、「商物一致原則」が削除されたことにより、卸が間に入り、商取引は市場が行いますが、物品は大型産地、輸入商社、冷凍業者が市場を通さず、大手スーパー・加工業者・外食産業などへの直接出荷も増大します。
これらが実施されれば、これまで卸売市場を支えてきた中小の仲卸業者にとって、卸売市場での生鮮食料品の購入が困難となり、仲卸業者の「目利き力」に依存していた専門小売商、料理店、すし店などの買出人の仕入れを困難にし、その営業にも大きな影響を与えることになります。
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築地市場は都心の中の物流の拠点です |
この「食品等の流通」が、市場法「改正」案の目的規定のなかにある「食品等の流通」と同じ意味であることを示したことは重要です。つまり、改定卸売市場法が、「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律」に組み込まれたことを意味します。
この食品等の流通の合理化とは、その物流の効率化、品質・衛生管理、情報通信技術の利用、輸出を含む国内外への需要の対応などにその範囲を限定しています。
国や県から、これらの流通の合理化・整備で助成を受けようとする事業者は、国の認定を受ける必要があります。卸売市場の開設者が、助成を受けたい場合も認定事業者という要件が必要です。
このように卸売市場を食品流通のなかの物流施設の一つに位置づけ(物流センター化)、その合理化を図ろうとしたものといえます。
政府は、「攻めの農林水産業」などと称して輸出を奨励し、TPP、EPA(経済連携協定)など自由貿易協定を推し進めています。しかし、これ以上の市場開放は、日本の農林水産業の破滅をもたらします。
財界はまた、総合商社大手の冷凍・加工業者や流通業者の利益のために、国による規制を撤廃し、卸売市場の物流センター化をねらっています。
これまで新鮮で、安全な生鮮食料品の生産、流通、消費を支えてきた日本の卸売市場制度を守るため、「改正」法案の成立を阻止するたたかいが今求められています。
[2018年4月]
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