環境省
汚染土壌を公共事業に「活用」
実証実験を福島県内で開始
再生利用可能なら
放射性物質全国へ拡散
福島県農民連会長 根本 敬
除染で出た汚染土処分に
安達太良山の麓(ふもと)に広がる福島県二本松市原セ地区の静かな田園地帯が「放射性物質最終処分地」(環境省は、「再生利用先」という)にされようとしている。除染で出た汚染土を処分するため、環境省が進める「汚染土壌再生利用実証事業」の舞台に、この原セ地区の市道が使われる。
実証実験の舞台となる場所一帯は緩い斜面で、整然とした棚田が並ぶ。この棚田の側道で舗装されていない市道を、長さ200メートルにわたって掘り返し、近くの仮置き場に積まれた汚染土500袋を路床材として埋める。その後、汚染されていない土を厚さ50センチ程度かぶせて、アスファルトで舗装するのが計画の大枠だ。通常の舗装ならば300万円以下だが、この事業費は3億5千万円。
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「STOP汚染土再利用」のぼり旗を立てる「みんなでつくる・二本松市政の会」メンバー |
処分場確保困難減量が不可欠と
除染廃棄物は、1600万〜2200万立方メートル(東京ドーム18個分)。福島第一原発周囲に建設する中間貯蔵施設に30年間保管し、その後、県外に運んで最終処分する計画となっている。しかし、処分場確保が難しく、環境省は減量が不可欠としている。このため、同省は汚染土を全国の道路や堤防、鉄道などの公共工事で使用する道を探り始めた。
2016年12月、南相馬市の汚染土仮置き場の中に、汚染土で盛り土をつくり、環境への影響などを調べる実証実験を始めた。そして次の段階として計画するのが、仮置き場の外での実験だ。現段階で計画されているのは2カ所。
一つが飯舘村で、帰還困難区域の長泥(ながどろ)地区に、避難指示が解除された地域から汚染土を持ち込み、農地の造成などに使う。そして、もう一つが二本松市のケース。二本松市は、普通の生活空間で汚染土の再生利用が行われる。いま、二本松市ではこの実証事業の白紙撤回を求める運動が広がっている。
事業地の確定の経過説明できず
特に問題なのは、事業地の選定に関して環境省も二本松市もその経過を説明できない点だ。環境省の誰がいつ、二本松市の誰に要請し、二本松市は誰が受け入れを了承したのかを明確にしていない。この点を明確にすることは、今後の事業のあり方を大きく左右する。環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」には「経済的インセンティブ」と書かれており、交付金などの「アメ」をつけて利用を促すことをうかがわせる。
普通の生活空間で汚染土の再生利用が可能となれば、汚染土の県外持ち出しへの第一歩となりかねない。汚染物質を薄めて拡散させることになり、やがて日本列島全体に汚染が広がる恐れがある。全国からの署名、環境省への抗議で白紙撤回を勝ち取る決意である。
(新聞「農民」2018.5.28付)
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