日米FTAPARC共同代表
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日米FTA(自由貿易協定)は、農産物市場への打撃とともに、農業以外の分野でも大きな問題があります。アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表の内田聖子さんに聞きました。
しかし、在日米国大使館による共同声明の翻訳は、「米国と日本は、必要な国内手続きが完了した後、早期に成果が生じる可能性がある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する」となっています。
そこには「TAG」という固有名詞もなければ、協定の定義も異なっています。新聞「農民」10月22日号で東京大学の鈴木宣弘教授が指摘しているように、正文である英文に忠実に訳せば、在日米国大使館のものが正しい。日本政府は、翻訳し、発表する段階から事実と異なる説明をしていたことになります。
日本政府は、「FTAではない」と強弁していますが、物品、サービス、投資という範囲まで交渉が進めば、「包括的なFTA」そのものです。
いまメディアなどは、主に「物品」についてクローズアップしていますが、問題は、定義にある「早期に結果が出せる重要分野」とは何かということです。
日米間の長いTPP(環太平洋連携協定)での交渉の推移や、また、今回、自動車への関税引き上げだけは避けたかった日本政府の立場から考えても、当然、これは「米国にとって有利な結果となる分野・項目」と読むのが自然です。
それは次のようなものになることが予想されます。
(1)TPPにおける日米並行協議で取り交わした約束
(2)米国のTPP離脱後から現在までに改めて米国が日本に求めている内容
(3)韓米FTAやNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉で米国が他国から勝ち取った内容
(2)については、2018年3月の「米国外国貿易障壁報告書」をはじめ、トランプ大統領が就任して以降、現在まで日本へのさまざまな要求があります。
「外国貿易障壁報告書2018」のなかで、日本に関する記述から「TPP」という文言は消え、「米国輸出にかかる幅広い日本の障壁を除去することを求めていく」としています。
そのうえで、2017年に行われた原料原産地表示制度改正に関して、「米国の輸出食材に悪影響を及ぼす潜在性がある」と指摘するほか、これまでも繰り返されてきた要求項目――収穫前後で使用される防かび剤の要件、ポテトチップ用ばれいしょの輸入停止措置、米・小麦・豚肉・牛肉の輸入制度、日本郵政・共済などの金融保険サービス、知的財産権分野、医療機器・医薬品分野――の障壁を指摘しています。
米国研究製薬工業協会(PhRMA)は2018年2月16日、米国通商代表部(USTR)に意見書を出し、「スペシャル301条報告書2018(1)」のなかで、日本の医薬品価格改定の制度変更に不満を示し、日本を知的財産権の保護が不十分で、公正で公平な市場アクセスを認めていないとして、警戒レベルが2番目に高い「優先監視国」に指定するよう要請しました。
PhRMAは、日本を「優先監視国」に指定すべき理由として、意見書の中で、次の項目をあげています。(1)新薬の特許が切れてもジェネリック薬が発売されるまでの間は高薬価を維持する「新薬創出加算」の不適切かつ差別的な見直し、(2)市場規模が拡大した場合には薬価の再算定をする「特例拡大再算定」や新規の医薬品の最適な使用基準を示す「最適使用推進ガイドライン」など、懸念のある改革の実行、(3)薬価制度改革に関して、業界が意見を述べる機会が与えられないなど、政策決定の透明性の欠如、(4)毎年改定や費用対効果評価をめぐる議論など、今後も制度改正を重ねるごとに予見可能性が損なわれる予見性の欠如。
米国は、メキシコ、カナダとのNAFTA再交渉により強制的な為替条項を明記させました。日本との交渉でも、為替問題が取り上げられる可能性は十分にあります。
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「日米FTAは反対!」と宣伝・署名行動(記事は2面) |
私たちも各分野での問題点を国民にわかりやすく伝えて、中央から、地域から大きな運動をつくりあげていくことが重要になっています。
[2018年11月]
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