ふるさと 
よもやま話
福岡県農民連会長 
佐々木督文
  
 老農の武骨、農民会館は農家の誇り
 福岡県の、うきは市広報10月号1面トップは、「タモリふるさと大使就任!」、市民だれでも「いいとも!」。奥さんの故郷の関係らしい。
 昨年7月の九州北部豪雨。筑後川を隔て、山肌は今もつめ跡が痛々しい。そんなわが家から68キロ、車で1時間半のところに「福岡縣農民會館」(福岡市)が建っている。 
 西鉄福岡(天神)駅から274メートルで徒歩3分。築43年のコンクリートたたき上げの5階ビルで、どこから見ても老農の頑丈な身体を思わせる。ひたすら力強い。 
 
  
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    福岡縣農民會館  | 
   
 
  竣工一九七五年 
 総工費一億円
 看板の横には、「この農民会館は、農業の発展と農民の地位向上のために、だれでも利用できる農民のセンターとして、県下の農民組合をはじめ農協、自治体その他多くの団体、有志の協力と援助によって建設されたものである。竣工一九七五年四月十四日 総工費一億円」とある。福岡県が所管の特例財団法人として発足、今は一般財団法人に移行した。
 1階は駐車場、2階に事務所、3階は貸し会議室、4階は和室もあり、宿泊もできる。部屋名は、麦、米、野菜とユニーク。5階は100人以上収容できる大ホール。前面に「農は邦の本」と揮ごうがある。 
 これだけの建設を行うにあたっては、やはり戦後の農地解放が原点になっている。100坪の土地は、もともと水田。運動の拠点として確保し、2階建ての家屋だったが、戦中、強制収用された板付空港(現福岡空港)敷地の補償が、大地主のみに許されていた。しかし、小作者には何の話もなく、それから戦後、大きな闘争となり、最後は、最高裁判決まで行き勝利したなかで、農民組合へ多額の寄付が…。 
  資金難に、農業 
 委員会から援助
 しかし、建設は第1次オイルショック真っただ中で資材の高騰はすさまじく、予算オーバーと資金難に見舞われたが、何と起死回生の一打が。福岡県下の農業委員会から一人1000円の援助を受けることになり、完成にこぎつけた。
 とにかく、駐車場があり、宿泊でき、会議室もたくさんで大ホールと、先人達の知恵、闘争心には頭が下がる。 
 2005年の福岡西方沖地震(震度6)で、基礎部分に被害が出たが、まだまだ健在。 
 周りには新しいビルが建設されても、老農の武骨はたくましさを持ち合わせた「農魂」で、レトロななかにも存在感は誇りだ。 
  原発再稼働せず 
 会館の再稼働を
 最近はやたら、ストリートアート(落書き?)が目立ってきたが、そのうち、アメリカの画家、バスキア並みの才能が開花するかも。そんなことを考えていると、先人達から「原発なんか再稼働させずに、ちゃんと農民会館を再稼働せんか!」の声が聞こえてきそうだ。
         (新聞「農民」2018.12.10付) 
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