「農民」記事データベース20190429-1358-01

農業次世代人材投資事業
(旧青年就農給付金)

新規就農支援の後退を許すな!

関連/国際フォーラム「国連家族農業の10年・農民の権利宣言を考える」


間口狭める改悪続く

 新規就農者にとって大きな支えとなってきた農業次世代人材投資事業(旧青年就農給付金)の改悪の動きが止まりません(表)。2017年度に青年就農給付金から改称したのに合わせて、返還要件や支給打ち切り要件を導入したのに続き、2019年度からは「準備型」を利用した先進農家などによる研修生の受け入れを廃止し、農の雇用事業として一本化することを決めました。

 産直組織などで準備型を利用した研修受け入れを行っていた場合、マネージメント用の法人を立ち上げるなどの対策が必要になります。

 19年度の変更では支援対象の年齢上限を45歳から50歳に引き上げる前進があったものの、人・農地プランの年齢上限は45歳のままで、実効的な引き上げがされていません。研修の受け入れ先を狭め、就農希望者を減らしかねません。そのための予算も昨年度から約20億円減額されています。

 さらに4月1日になって農水省は就農・女性課長名による通知で同事業の採択の目安を「前年の世帯全体の所得が600万円以下」とすることを各地の農政局に通知しました。19年度の採択からの適用ということで、突然の通知に現場では大きな混乱が広がっています。

 4月3日付の日本農業新聞によると全国農業会議所が「新規就農希望者が就農をあきらめる事態が生じてはならない」と対応を要請したと報道されています。親元就農や夫婦で就農など所得条件にかかるケースは十分に想定されます。

 反響の大きさに、農水省は4月3日付で補足通知を出し「あくまで目安で、自治体が必要と判断すれば交付できる」と説明をする事態となりました。目安であっても具体的な数字を示されれば自治体への影響は避けられません。

 新規就農支援について農民連は拡充を求め、農水省と交渉を続けてきました。その中で、青年就農給付金がつくられてきました。しかし最近、「行政改革推進会議などから生活保護ではないかと言われている」と削減の圧力がかかり、安倍政権による新規就農支援への攻撃があらわになっています。

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農水省にくり返し拡充を求めて交渉してきました

 1985年からの30年間で基幹的農業従事者が半減し、60歳未満の担い手の割合が21%まで急落する中、必要なのは新規就農者を増やし、地域の担い手を確保することです。ここ4年間の44歳未満の新規就農者は年間1・6〜1・9万人で推移し、このままでは地域を維持することはできません。農村での生活に価値を見出す青年が増えている現状に水を差しかねません。

 農水省がやるべきことは、行政改革推進会議の顔色をうかがい、新規就農支援を縮小するのではなく、予算を拡充し、支援を充実させることです。「就農支援の後退を許すな」の声を大きく上げ、改悪を跳ね返す運動が大切です。

担い手育成への許しがたい裏切りだ

奈良県農民連 森本吉秀会長

 奈良県明日香村は、高松塚壁画古墳などの文化財の保存や歴史的景観を守るために村全体に国の特別立法が制定され、特に「農業立村」としての村づくりが約40年前に始まりました。

 しかし、15年前に私が村の農業委員会長を引き受けたとき、親の農業の後を継いだ後継者は30年間で3人。「これでは村の農業の将来はない」と村外から来る若い新規就農者を受け入れ、懸命に支援してきました。旧青年就農給付金制度ができて農業を続けられている若手農家もたくさんいます。

 今、どこの集落でも若い農業の担い手確保に懸命ですが、村の38集落で50歳未満の担い手がいるのはわずか9集落だけです。

 安倍政権や農水省による担い手支援策の改悪は、担い手の支援や育成に懸命の努力を続ける私たちへの許しがたい裏切りです。

「農の雇用事業」を活用して研修中

佐藤幸治さん(40)=福島県二本松市=

 2015年に東京都大田区の町工場を退職して二本松に移住してきました。震災後、農業で支援できることはないかとインターネットで探し当て、就農しました。今は、安達地方農民連会長の佐藤佐市さんの指導のもと、米づくりと野菜づくりに挑戦しています。

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ハウスの支柱の点検をする佐藤さん(左)

 就農前は技術や資金面で不安でしたが、国の「農の雇用事業」を活用することにより、2年間の研修を受けられ、給付金ももらうことができ、たいへん助かりました。

 これから農業を始める人たちは、学校を卒業後、すぐに就農したり、前の仕事を退職して就農したりと、さまざまです。

 いまの改革のように、新規に就農する際にさまざまな枠を設けることには疑問をもっています。できるだけ間口を広く、希望する人が農業に参入しやすくすることが求められています。とくに対象年齢を引き上げることや補助金の引きあげ、支給期間の延長等は担い手を増やすうえで必要だと思います。


休刊のお知らせ

 次週号(5月6日付)は休刊にします。
新聞「農民」編集部


国際フォーラム
「国連家族農業の10年・農民の権利宣言を考える」

日 時  5月25日(土)午後1時から5時半
    (開場12時)
場 所  明治大学リバティタワー(1013教室)
    (東京都千代田区神田駿河台1―1)
基調報告 ザイナル・アリフィン・フアト
     (ビア・カンペシーナ国際調整委員)
     ヘンリー・サラギ(インドネシア農民
     組合議長、ビア・カンペシーナ前代表)
     関根佳恵(愛知学院大学准教授)
資料代  2000円(学生は無料)

記念レセプション
日 時  5月25日(土)午後6時半〜(開場6時)
場 所  全労連会館2階ホール
参加費  5000円
主 催  農民運動全国連合会
     ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域
     国民の食糧と健康を守る運動全国連絡
     会(全国食健連)
申し込み 農民運動全国連合会
     電話 03(5966)2224
     Fax 03(5966)2226
     Eメール:info@nouminren.ne.jp
※プログラムの詳細などは後日発表します。

(新聞「農民」2019.4.29付)
ライン

2019年4月

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