「農民」記事データベース20200106-1391-05

国連「家族農業の10年」
2年目

農山漁村支える全ての人を
各地のプラットフォームに
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新春対談
家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン 村上真平代表
紀ノ川農業協同組合 宇田篤弘組合長

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 2020年が始まりました。昨年(2019年)スタートした国連「家族農業の10年」は2年目に入りました。昨年6月に結成された「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」(プラットフォーム・ジャパン)の村上真平代表(公益社団法人全国愛農会会長)と、全国初の都道府県単位の「家族農林漁業プラットフォーム・和歌山」(プラットフォーム和歌山)結成に尽力した宇田篤弘さん(紀ノ川農業協同組合組合長)が対談し、昨年1年を振り返るとともに、今年の展望を語り合いました。


 家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンは、国連の呼びかけに呼応した日本の関係者が2019年6月に設立しました。事務局を農民連が担い、吉川利明事務局長が常務理事に就任しています。


地域、生活を考え思い伝える機会に

 有機農業実践のつながり生かし

 宇田 昨年10月の「プラットフォーム和歌山」結成総会には村上さんに来ていただきました。村上さんはほかにも滋賀県農民連の学習会にも参加していただき、今年1月には福島県食健連のシンポジウムでパネリストを務められますね。改めて新聞「農民」読者のみなさんに自己紹介をお願いします。

 村上 はじめに私が会長を務める全国愛農会について簡単に説明します。当会は、土と命を守る担い手の育成や有機農業の普及・教育、有機食品の検査認証などを行う公益社団法人です。アジアの農民との連携を進めており、現在は持続可能な農業とアジア農村の発展を目指す「アジア農民の会(AFA)」に加盟しています。

 私は、1959年に福島県で生まれ、70年に有機農業に転換した農家の長男です。82年、インドに渡り1年間滞在したのをきっかけに、85年からバングラデシュに6年間、96年からタイに5年間、民間の海外協力団体(NGO)を通して自然農業の普及と持続可能な農村開発の活動に携わりました。2002年に帰国し、福島県飯舘村で、自然農業、自給自足をベースにした学びの場「なな色の空」を始めました。11年3月11日の福島第一原発事故により、飯舘村から三重県に避難し、13年に、津市美杉町の池の平高原で「なな色の空自然農園」を再開し、現在に至ります。15年に愛農会会長に就任しました。

 宇田さんと最初にお会いしたのは、確か和歌山有機認証協会の会合だったと思います。

 宇田 そうでしたね。紀ノ川農協についても説明しますと、和歌山の全域を地区とした農産物販売の専門農協で、生活協同組合との産直を軸とした事業を展開しています。有機JAS認証の取得や特別栽培にも取り組んでいます。持続可能な開発目標(SDGs)の考え方で環境保全型農業を推進し、耕作放棄地の再生も行っています。

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宇田さん
 
村上さん

 一次産業支える連携の場として

 村上 2019年6月に「プラットフォーム・ジャパン」が結成されたのは画期的なことでした。家族農業について真剣に考え、農水省をはじめ、JA全中(全国農業協同組合中央会)や全国農業会議所に加えて、全国漁業協同組合連合会(全漁連)、全国森林組合連合会(全森連)などと対話、意見交換する窓口ができたことは非常に重要なことです。

 また、「家族農林漁業」として農・林・水産業の第1次産業が連携し合う場をつくることができたのも大切です。1次産業は、生きるために必要なもの、国の一番の基本です。そこを支えている人たちがお互いに連携し合い、国と話し合う機会をもてたことは画期的なことです。

 宇田 「プラットフォーム和歌山」が発足する前は、紀ノ川農協としても担い手育成や職員の若返りに取り組むなど、家族農業をどう発展させるかを独自に考えてきました。私個人としては18年の「日本の種子(たね)を守る会」結成総会などに参加し、和歌山に戻ってから「何をしようか」と考えていたときに、有機農業、持続可能な農業でつながりのあった秀明自然農法ネットワークの橋本進さん(橋本市)と相談していました。また、和歌山で行われた母親大会でも種子法(主要農作物種子法)廃止問題がテーマになりました。

 こうして、橋本さんをはじめ、有機認証協会や他の農業団体の方々と連携し、これまでのつながりやネットワークを生かして、関根佳恵さん(愛知学院大学准教授)をお招きした8月の学習会開催、そして10月の「プラットフォーム和歌山」の立ち上げに至ったわけです。設立総会には、農業関係者だけでなく、消費者の方々もたくさん参加して、うれしく思いました。

 これまでは、輸出や競争力強化、成長産業化などを推進する今の農政に対してみんな怒っている、でもどうしたらいいのかわからない、しかし、そういうなかでもみんながんばって農業を続けている、という状況でした。それが「プラットフォーム」結成を機に、仲間もできて、みんなで一緒にがんばろうという機会もできたのです。

 私自身は、国連が「家族農業の10年」を決めたことに勇気づけられ、さらに一昨年、初孫が生まれたこともがんばるきっかけになりました。「子や孫のために今やらないといけない。今がんばればまだなんとかなる」という状況だと思います。

(新聞「農民」2020.1.6付)
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2020年1月

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