「農民」記事データベース20200106-1391-07

能面づくり30年

技術の奥深さに魅せられて

横芝光町農民組合員 布施裕康さん(70)
=千葉県横芝光町在住

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“100%の正解がない
農作業に共通する”

 「道楽が高じてここまできました」。布施裕康さんはもの作りが好きで、能面を作って約30年になります。ここまで100点以上の作品をつくってきました。能面は、地元、香取神宮の御田植祭用に奉納されるなど、各地で活用されています。

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制作中の布施さん

 布施さんが能面制作を始めたのは地元獅子舞の獅子の面を修理したことがきっかけでした。それ以来、先人たちの技術の奥深さに惹(ひ)かれ、「自分でも作ってみたい」と思ったことが、制作の原動力になっています。

 東京・日本橋の能面制作の先生のところに4、5年通いながら、技術を学び、以来、独学で続けてきました。熱中するあまり、「夜に始めたら、いつの間にか夜明けになっていた」ことも度々です。すばらしい出来栄えの能面を見ると心の中がワクワクし、「おれもできるかもしれない。やってみよう」と闘志に火がつきます。

 面打ち(能面制作)の仲間たちで構成される「面匠倶楽部」で展覧会を開いたり、互いに批評し合ったりしながら切磋琢磨(せっさたくま)しています。「面打ちにゴールはない。いくら作っても『できた』という達成感は得られない」とその奥深さに魅せられています。

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香取神宮の御田植祭用に奉納された能面

 誰もまねできぬもの作る楽しみ

 農家の長男に生まれた布施さん。好き嫌いに関わらずの農業を継ぐ運命に。米、長ネギをはじめほうれん草、ソラマメなど栽培しています。

 100%の正解がないところが、能面制作と農作業に共通していることです。一方、「農作物は自然の力で変えられてしまうこともあるが、能面は自分の力次第」と言います。今は「切り替えがたいへん」だと感じながら、農作業と能面制作を楽しんでいます。

 「だれもまねできない、自分のオリジナルの面をつくるのが楽しみ」と創作意欲はまだまだ健在です。


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大阪・松原市 関戸しげみ

(新聞「農民」2020.1.6付)
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2020年1月

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