「農民」記事データベース20220725-1514-02

参議院選挙の結果について

2022年7月12日
農民運動全国連合会会長 長谷川敏郎


 一、7月10日に投開票された参議院議員選挙で、自民党は改選議席の過半数を維持し、公明党とあわせ参議院全体の過半数を超えた。自公と日本維新の会、国民民主の改憲4党で改憲発議に必要な3分の2を超える議席になった。立憲、共産、国民は公示前勢力を下回り、維新が議席を倍増させた。

 2016年の参議院選挙からの市民と野党の共闘は、様々な分断攻撃のなかで極めて不十分なものとなったが、候補者を一本化してたたかった青森、長野、沖縄で勝利し、きん差で敗れた選挙区を含めて共闘の成果を作り出したことは重要である。

 一、岸田首相は選挙後の記者会見で「与党が信任された」と発言したが、国民は「白紙委任」したわけではない。

 今回の選挙で問われたのは、ウクライナ危機と異次元の金融緩和がもたらした物価の高騰から国民生活をどう守るか、暮らしと平和を破壊する軍事費倍増、改憲という戦争する国への暴走を許すのか、9条を生かした平和の外交かにあった。

 また、国連が「戦後最悪の食糧危機」と警鐘を鳴らしているなかで、農業を再生し、自国での食料増産と37%に低下している食料自給率を抜本的に引き上げるかどうかも重要な争点だった。マスコミの世論調査では、8割近い国民が岸田政権の物価対策は不十分とし、軍拡・改憲を託して投票したわけではない。

 農業でも、肥料・飼料、農業資材の高騰対策や、暴落し続ける米価対策、食料増産に逆行する水田活用直接交付金の削減などに農家や農業関係者から厳しい批判が沸き起こっているが、政府・与党からまともな対策が打ち出されていない。

 一、農民連は、一貫して市民と野党の共闘の前進を追求してたたかった。野党共闘が勝利した一人区はもとより、惜敗した選挙区でも重要な役割を果たした。

 新聞「農民」で総選挙特集を連打し、40万枚余の新聞「農民」号外を活用して農政の争点を会員や農民、市民に示してたたかった。号外への反響が大きく、多くの地域で猛暑のなか農家との対話を精力的に展開した。

 一、投票日直前に安倍元首相が銃撃され、命が奪われた。農民連はこの蛮行を強く非難する。同時に、政治的背景を持たない蛮行を「政治テロ」と言いつのって権力による表現、行動の自由への介入強化は断じて許されない。

 一、参院選の結果、憲法9条改悪に前のめりで、「敵基地攻撃能力」を保有して海外で武力行使が可能な自衛隊に変質させ、命と暮らしよりも軍事費に税金をつぎ込むことをいとわない勢力が、衆参ともに7割を超える議席を持つことになった。岸田首相は「できるだけ早く発議できるようにしたい」と述べている。恒久平和と基本的人権の実現を政府の役割とする憲法と立憲主義がかつてない危機に直面することになった。

 さらなる物価高騰や、食料危機の悪化など、国民の生活にかかわる重大事態に直面する可能性が高い。

 農民連は、改憲阻止の国民的運動を発展させ、国民に命の糧である安全・安心の食料を提供し、農業と農村を再生させるために総力をあげる決意である。また、農村でたたかう力を強めるために、地域に根を張った強大な農民連を建設する決意である。さらに市民と野党の共闘を発展させ、国民が主人公の政治を実現するために全力をあげるものである。

(新聞「農民」2022.7.25付)
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2022年7月

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