発見 
農の現場から
兵庫県農民連会長 
安達紀之
  
 耕作放棄地、鳥獣害… 
地域で協力して農業を守りたい
 私は昨年7月から芦田淺巳前会長の後を受けて会長に就任しています。
  開拓地で 水稲作付け
 私の住む地域は兵庫県小野市と三木市にまたがる、市街地から100メートルほど高い台地上にあります。私の地域の南側半分は昭和21(1946)年12月から順次、旧満州からの引き揚げ者が入植して山林や原野を人力で切り開いて農地にした草加野(そうかの)・万勝寺開拓と呼ばれた地域です。
 私は、昭和21年9月に満州からの引き揚げ船に乗る直前に収容所で生まれ、生後3カ月から現在の地(三木市)に住んでいます。 
 当地で水稲が作られるようになったのは、昭和26年に加東市に完成した鴨川ダム(東条湖)からの送水が開始された昭和33年からのことで、まだ60数年の歴史しかありません。 
 地域の田植えはダムからの送水が始まる6月1日からで、私の田(作付面積は54アール)は受益地の下流部にあたるため、毎年6月15日前後になります。3年前から作っているヒノヒカリに替わる高温障害に強い品種として農研機構が開発した「恋の予感」という新しい品種も出穂の時期を迎えており、刈り取りの時期は10月中頃となります。 
  酒米も減少
 三木市は酒米の王者と言われる山田錦の生産量が日本一ですが、日本酒の消費量が減少するのに伴って、作付面積も減ってきています。市の調査では、2018年に1541ヘクタールだった作付面積が22年には1223ヘクタールに300ヘクタール以上も減り、減反の田んぼが増えてきています。
 また、主食用のうるち米も価格の低下が続いているので、酒米をやめてうるち米をつくる農家はほとんどいないのが現状で、心が痛みます。 
 後継者づくりが課題
 広がるイノシシの被害
 7月の中頃、私ともう1軒の田に用水を送る水路の南側ののり面を数回にわたってイノシシが約20メートルも掘り崩し、土砂が水路を完全に埋め尽くす事件がありました。このまま放置できないので、暑いなかではありましたが、数人でユンボ(油圧ショベル)の助けも借りて土砂を取り除き、コンクリートのふたを、まだ被害にあっていない所も含めて40メートル程度かぶせる作業をしました。
 
  
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    イノシシ被害にあったのり面  | 
   
 
 私の田んぼにも4〜5年前からあぜを崩され、稲を踏み倒されるなどのイノシシの被害を受けるようになりました。先日、電気牧柵を設置しましたが、規模の小さい農家にとっては痛い出費でした。 
 今後は、先代が切り開いた農地を守っていくうえでも、後継者づくりが課題です。獣害対策も含めて、隣町の営農組合などと協力して問題を解決できればと考えています。 
         (新聞「農民」2022.9.12付) 
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