「農民」記事データベース20230522-1553-06

インボイスで
畑作直接支払交付金(ゲタ)の
減額さらに

農家に分断持ち込む消費税・インボイス


大軍拡・大増税阻止で
食料・農業危機突破を

 財務省のいいなりにインボイス導入対応

 今年産の「畑作物の直接支払交付金」は、でんぷん原料用ばれいしょ、そばを除き、多くの品目で引き下げられました。

 しかも、インボイス(適格請求書)導入に合わせる形で課税・免税農家で初めて異なる単価設定が行われました。

 小麦は課税農家マイナス11・6%・免税マイナス5・5%、大麦は課税マイナス14・3%・免税マイナス9・1%、てん菜は課税マイナス25・9%・免税マイナス22・7%など、今年産で予定していた交付金が大幅に減額されることとなります。

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 生産費には消費税相当分が同様に含まれるにもかかわらず、納税額が少なく済んでいるという理由で、「消費税還付」を受けられない簡易課税農家も同様に単価引き下げが行われています。

 もともと、売り上げの大幅減などの「大赤字」や大きな設備投資の実施、農家による直接輸出などの例を除いて原則課税でも「消費税還付」を必ず受けるとも限りません。

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 一昨年から続く燃油・肥料・資材等の高騰で経営困難に直面しているもとでの単価引き下げです。しかも、3年間は見直しされず、麦類は豊作が続いて生産費が下がっているとはいえ、肥料低減の取り組みによる収量・品質への不安もある中で、最悪のタイミングでの引き下げです。

 算定方法見直しで交付金充実を

 畑作物の直接支払交付金は、生産費は直近3年平均、販売価格は直近5年間の中庸3カ年平均、収量は直近7年の中庸5カ年平均で単価が算定されます。

 品目により違いはあるものの、この間の傾向として生産費は微減、販売価格・収量は増加傾向にあることなどから、単価引き下げにつながったうえに消費税相当額の扱い変更による引き下げです。

 水田活用の直接支払交付金カット・畑地転換の強要、飼料用米への支援カットなど、財務省からの圧力に屈して、わずかしかない農家支援策を縮小させることは看過できません。

 生産費と販売価格の差額補てん

 GATTウルグアイ・ラウンド、WTO(世界貿易機関)協定発足後の1999年に制定された食料・農業・農村基本法では、「国は、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずるものとする」としています。

 農産物価格は市場任せにする一方、自給率の低い畑作物のうち、麦・大豆・てん菜・でん粉原料用ばれいしょ・そば・なたねについて、外国との生産条件の格差から生じる不利を補正するため「標準的な生産費」と「標準的な販売価格」の差額分相当を補てんする交付金、畑作物の直接支払い交付金(ゲタ対策)を2007(平成19)年産から実施してきました。

 運動で改善させてきたゲタ対策

 導入当初に「担い手に施策を集中化・重点化し、構造改革を加速化するための対策として、都府県4ヘクタール、北海道10ヘクタールの認定農業者に限定したことから、大きな反対の声が広がり、地域の実態に即した制度の見直しが行われてきました。

 認定農業者の年齢制限は廃止され、市町村が地域農業の担い手として位置づけることにより面積要件に関わりなく対象となり、今日に至るまで畑作経営に一定の役割を果たしてきています。

 大軍拡阻止で農政転換とインボイス中止を

 岸田政権は、5年間で軍事費43兆円増をめざす過去最大の軍事費を盛り込んだ23年度予算を成立させました。

 大軍拡のために震災復興費や予備費などの横取りなど何でもありの一方で、不十分な農業予算のさらなる削減をねらっています。

 食料危機打開・国産増産のため、増大する生産費を販売価格に転嫁できるメカニズムなど農家支援の抜本的な政策転換が求められています。当面、畑作物の直接支払交付金の引き上げや水田活用交付金カット見直しなど、施策と予算の拡充を求める要求運動を強化することが重要です。

 そして、農家経営を守るためにも岸田政権の「戦争する国づくり」のための大軍拡・大増税ストップ、消費税減税、インボイス導入中止・延期せよの声を全国でさらに広げましょう。

(新聞「農民」2023.5.22付)
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2023年5月

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