秋田県北部で甚大な豪雨被害
小林秀彦県農民連委員長ら現地調査
赤字続きの米づくりでは…
農地復旧 個人負担では大変
7月14日からの線状降水帯発生で、秋田県にも大きな被害が出ています。農民連本部は7月27日、秋田県農民連の小林秀彦委員長とともに、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員らと現地の調査を行いました。
生産者から苦悩の声
堤防が決壊し田んぼが川に
能代市では市内を流れる米代川とその支流が豪雨で増水し、水害が発生しました。特に被害が深刻なのが、支流の一つ、常盤川が流れる能代市常盤の山谷地区です。
山谷地区では広範囲にわたって堤防の決壊やがけ崩れが発生。護岸を失った田んぼが川の流れに削られ、あるいは田んぼに大量の流木や土砂、石と一緒に水が流れ込むなど、非常に大きな被害です。
同地区で約7ヘクタールの水田を営む佐藤鉄見さん(70)は約半分の3・25ヘクタールほどが土砂流入などの被害を受けました。
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小林委員長(左)に状況を説明する佐藤さん |
「丹精込めて作っていた米がだめになってしまった。これまでも水害はあったが、こんなにひどい被害は生まれて初めて。みんな呆然としている」と被害の大きさにショックを隠せません。
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手前を流れていた川が奥の田んぼに向かって流れています |
荒れた農地
放っておけない
「これほどの被害が出ると、農家が自力で復旧するのは無理だ」と佐藤さん。激甚災害に指定されれば農地の災害復旧事業などの補助率が増えますが「後継者もおらず低米価で資材も高騰している。たとえ1割でも自己負担はできない。息子にも『もう(農業を)やめたら』と言われた。このままでは営農をあきらめる人がでる」と懸念。しかし、「農地を荒らしてイノシシや猿の巣にするわけにもいかないという思いもある。集落を守るためにも耕作を続ける必要がある」と苦悩しています。佐藤さんは、「被害者を助ける施策をしてほしい」と訴えていました。
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左の水路が埋まり田んぼに流れ込んでいます |
営農継続できる支援ほしい
水流の力でネギが曲がる
市街地に近い地域も浸水被害が広がっています。轟ネオファームでは氾濫で圃(ほ)場が水没するなどの被害が出ました。「土寄せする前の長ネギが4ヘクタールほど、長いところで丸一日水没。強風による水流でネギが曲がってしまいました。5年間ネギ作っていますが、初めての被害です」と高橋裕代表理事は説明します。
収入保険に加入はしていますが、「規格外で出荷すべきか、もう手をかけないであきらめた方がコストかからずにいいのか、農協と話しています」と悩む日々です。
小林委員長の住む鶴形地区でも、種をまいたばかりのソバが流され、まき直し。水路も増水で田んぼの畔が崩落したり、土砂で水路が埋まって田んぼに水が流れ込むなど被害が出ています。
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被害を受けたネギを手にする高橋さん |
家屋の浸水も被害甚大に
家屋被害も甚大です。能代市全体で310戸が浸水被害。同市松長布では悪戸川が内水氾濫し、100軒中40軒が床上浸水し、15台の自動車も水没しました。
加藤実自治会長は「この地域はこれまでも13回洪水に見舞われ、今回が14回目。防水シャッターや土嚢(のう)などが県の事業で整備され、これまでは住宅の被害を抑えられていたが、今回はこれまでにない被害が発生した」と話します。
住民の女性は「床上浸水は初めてだが、水が来るとわかっていたので、貴重品をもって2階に避難。ボートで救助された。2階に行った途端に停電して心細かった」と振り返ります。
加藤自治会長は「米代川の氾濫を防ぐため悪戸川の水門を閉じざるをえず、ポンプの排水も追いつかなかった。米代川の浚渫(しゅんせつ)など、根本的対策が必要だ」と訴えていました。
(新聞「農民」2023.8.14付)
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