「農民」記事データベース20240219-1589-03

能登半島地震
農業に大打撃

春の作付けに間に合わない


農民連が現地調査、
被災農家から聞き取り

 農民連災害対策本部は能登半島地震の被害状況を把握するため2月2、3の両日、長谷川敏郎会長が現地入りしました。

 液状化被害が深刻な内灘町では、河北潟干拓地の酪農団地へ。牧草地の真ん中が大きくくぼんだ被害を受けた谷内潤二郎さんは3日前にやっと断水が解除されたばかり。「水が一番大変でした。内灘の消防本部から水を運んでいましたが、北は北海道から南は岡山までボランティアが駆けつけ、10トン車のタンクで12戸全てに水を配布してくれました。団地全体で約1700頭の牛がいて、1頭あたり100リットル、1戸当たり14、15トンの水が必要だったので、本当に助かりました」と話します。

 牧草地の被害については「どうやって修復すればよいのかわからない。自力では無理なので行政と相談したい」と話していました。

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谷内さん(左)から話をきく石川県連の宮岸美則会長(中)と長谷川さん

 対応に追われ連日泊まり込み

 翌日は震源地にも近い奥能登の、能都町の養豚農家の吉中伸一さん夫妻を訪問。母豚270頭を飼養する吉中さんは、震災後はほぼ養豚場の事務所に寝泊まり。事務所も屋根瓦が壊れ雨漏りや壁にひびが入るなど、自宅よりも被害がありますが、豚舎の対応でほとんど戻れません。

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吉中さんの豚舎。奧の方がわずかに沈んでいます

 電気は1時間ほどで回復し、水も井戸水が使えましたが、「井戸水の水道管が破損し、家族総出で場所を特定。自力で復旧しました。この養豚場では年間1000トンのエサが必要。地震後、飼料メーカーと運送会社が、まず8トン車で、そして10トン車、さらに12トン車で道路状況を見ながら運んでくれましたが、届く時間がばらばらになり、その対応もあって泊まり込み続きでした」と生き物を飼う苦労を話します。

 施設への被害もありました。8棟ある豚舎の一部が壊れたのをはじめ、主豚舎と分娩(ぶんべん)舎は奥側の地盤が下がり、床面に傾斜ができてしまいました。「豚舎内の排水は手前側の浄化槽に流れ込むようになっていましたが、傾斜ができて逆流。床面の排水路の傾きの修理にいくらかかるかわかりません」。息子さんとは、数千万円かかる修理よりも、長く営農を続けるためには1億円かかっても建て替えはやむをえないかなと相談中と話しています。

 七尾市の会員を訪問し聞き取り

 支援物資の中継基地を引き受けてくれた七尾市の農事組合法人万行希望の丘農園(西野勝一代表)も訪問。協力のお礼を伝え、七尾市の被害を聞き取りしました。


長谷川会長のコメント

 余震や道路の復旧の遅れから、能登半島北部の農業被害の全貌は判明していません。ため池の崩落・水路の破損も確認が遅れています。緊急補修の復旧作業を急がなければ、春の作付けに間に合いません。大災害の後、作付けでき作物が育つことは農民にとってこの上ない喜びであり、生活再建の大きな励みです。災害復旧が遅れれば、気持ちも沈み、荒廃農地が増え、地域農業は大きく後退します。能登半島の農林水産業は、2011年に国連食糧農業機関(FAO)が日本で初めて認定した世界農業遺産「能登の里山・里海」です。再建にむけ国・県挙げた強力な支援を求めていきます。

(新聞「農民」2024.2.19付)
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2024年2月

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