「農民」記事データベース20240311-1592-10

いま注目
オーガニック給食
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愛知県田原市
小笠原 弘さん
渡部千美江さん

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教育の視点で地域循環を
実践する「どろんこ村」

 3月4日号で高校生の発案による有機給食を実現、という記事を紹介しました。食材を提供した農家のもとを訪れた高校生たち。その1つが愛知県田原市の「渥美どろんこ村」です。

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どろんこ村を訪れた高校生の皆さんと小笠原さん(中央)

 生産から加工・流通・販売、そして交流を「有機農業」を軸に営む小笠原弘さんと渡部千美江さん。地元の農民連と「アツミ産直センター」の会員で、ブロッコリーやキャベツを産直センターに出荷しています。

 日本人の平均的な暮らしを世界中の人々がすれば、地球が2・9個必要だと言われる中、生産者としてだけでなく、多様な形態の農業体験を受け入れ、消費者とともに、大きな視野を持ち、自分自身が循環の一部だという「地球1個分の暮らし」に取り組んでいます。小笠原さんに話を聞きました。

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渡部さん(左)と小笠原さん

高校生の思いに共感し食材提供

 今回、高校生の皆さんから「未来の健康と環境を考えた挑戦をしたい。給食に有機野菜を提供してほしい」と話がきました。私たちが広げていきたい有機農業の価値観から見ても合致するので賛同しました。私たち自身が、地域内循環を実践する形で持続可能な有機農業という価値を見いだしています。

 ここには就学前の子どもから、実習や研修で大学生などが来ます。年間を通して「週末暮らし」をしながら、季節ごとの田畑や動物の様子を学ぶプログラムもあります。野菜を作って家畜の命を絶ち、食べることで広い視野でのつながりや空間・時間の感覚を持ってほしいと思っています。

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食と農の在り方とは、を説明する小笠原さん

 今回は1回限り、キャベツ20キログラムの出荷だったけど、中学生の皆さんが食べて「甘い」と感じてくれたのは、きっとそれが本来のおいしさじゃないかな。高校生が自分たちで食べるためじゃなく、後輩の中学生のために行うのもユニークだよね。ここに来た彼女たちが言った質問も鋭くて驚きました。

食べること・育てること・いただくこと

 学校が取り組むこの課外活動は素晴らしいと思います。私たちも日頃から、教育という視点で農村資材を活用した、実際に感じて考えることで「食べること・育てること・いただくことはどういうことか」を模索しています。

 私たちの地域でも今後、学校へ有機農産物を提供していく動きを強めたい。以前、県内の学校給食に私たちの有機ダイコンが納入される話が持ち上がりました。でも、その畑は有機JASを取得していなくて、結局ダイコンは長崎から仕入れられたそうです。作り方は同じなんだけどね。地域内でのそういう合意形成を含めた動きも大事です。

 そして有機農業の推進を高校生ががんばったんだから、農家や農民連としても、やれることはきっとあるよね。(次回は、小学校の栄養教諭の取り組みを紹介します)


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三重県大台町 成田千恵子

(新聞「農民」2024.3.11付)
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2024年3月

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