農家のための
税金コーナー
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消費税申告の注意点
消費税の申告期限は、3月31日です。それまで修正申告は何度でもできます。今年の消費税申告からはインボイス(適格請求書)対応が必要になります。
また所得税と同様に、コロナ禍や災害の影響で期限までに申告ができない場合は、所轄税務署長に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し、期限の延長を受けることができます。
あらためて消費税申告の注意点を紹介します。
「委託販売手数料」を引く
消費税法基本通達10―1―12により、販売金額から委託販売手数料を差し引いた金額で課税売上高を算出できます(純額処理)。これによって、課税売上高が1千万円以下になれば、免税事業者になります。
しかし、19年10月の消費税増税・複数税率導入に伴い、軽減税率(8%)となる商品は委託販売手数料(10%)と税率が違うため、差し引くことができなくなりました。
この場合の販売金額は、委託販売手数料等を引く前の金額で計上しましょう(総額処理)。振込金額で計上している方が見受けられます。農協・市場に販売金額の確認が必要です。
「委託販売手数料」を差し引ける農畜産物
「委託販売手数料」を差し引くことができている農畜産物は、例えば生体で出荷する子牛・成牛・花きです。
売り上げが消費税10%で、委託販売手数料がある農畜産物は、消費税を計算する際に、売上高より「委託販売手数料」を差し引いて計算しましょう。
「消費税率」の注意点
畜産物の売り上げで注意してほしいことは、生物です。生きて出荷すれば消費税は10%です。しかし、と畜後に価格が決まる畜産物は8%(軽減)となります。また、牛などの皮については10%となります。
経費で注意する点は、賃借料(リース)です。農機具や畜舎などは、契約した時点の消費税が適用されている場合がありますので、気を付けましょう。増税前の消費税8%(国税6・3%)が適用されている場合は、軽減税率の8%(国税6・24%)で計算しないようにしましょう。
本則課税は、消費税率ごとに、しっかり区分しましょう。また、本年中に増えた償却資産は忘れずに計上しましょう。
簡易課税は、表を参照して委託販売手数料の差し引きと簡易課税のみなし仕入率を確認しましょう。
仕入税額控除にはインボイスが必要
本則課税の仕入税額控除(10月以降分)にはインボイスが必要になります。経過措置で、インボイスのない仕入れは8割まで仕入税額控除ができます。簡易課税の場合はインボイスの有無は課税額の計算に影響しません。
インボイス導入にあたって、いくつかの特例があります。(『税金対策の手引き』9ページ)
免税事業者がインボイス登録と同時になった場合は、本則課税にも2割特例が適用でき、売上消費税額の2割のみの納付で済みます(通常の仕入税額控除も選択可能です)。
課税売上高が1億円以下の人は、1回の取引が1万円以下のものはインボイスなしでも仕入税額控除ができます。
また3万円以下の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)や3万円以下の自動販売機での購入、ポストに投函した郵便代はインボイスなしで仕入税額控除ができます。
(新聞「農民」2024.3.18付)
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