いま、農の現場は…だれのための農業公園か小川政則(JA全農技術主管・非常勤)
国の公共事業や農業構造改善事業への批判が高まっている。マスコミも『農業は補助づけ』報道から、ゼネコン型公共事業や補助事業を食いものにする企業・団体に批判を強めている。農家を支援する正しい補助事業のために、農業側からも改善運動が必要である。 ウルグアイラウンド対策費消化もあって、最近の農構事業にはひどいものが多い。神奈川県湯河原町の『もんがわアグリパーク』も一例である。この事業はみかん農家九十八戸が法人をつくり、農業公園をめざし道路や観光施設を整備したもので、総事業費が七億九千万円。観光施設の中心は農産物販売所と併設のビール園で、事業費二億二千万円(補助六〇%)、コンクリートの立派な施設である。平成七年五月に営業開始『本格的ビアレストラン』をうたうが、活況は一、二カ月、九年九月には経営が悪化して営業休止。改装して美術館を運営する会社と業務提携する。目的外使用が問題化するが補助金七千五百万円を返還して決着。結局、施設を美術館に売り、農家に借金が二億円以上残ったと報道されている。 三年たらずでこうなった原因を農家は『地元が計画をまとめきれないうちに、農水省の外郭団体が青写真をつくり、国と県が補助金をつけてことわれなかった』という。地元は風致地区で規制がうるさいことや、交通量も少ないなど立地条件も、地縁的集団法人の営業能力もわからないまま予算消化だけが先行していた。 問題のある補助事業は自治体などが不慣れな農業公園に多い。S県の農業公園は観光農業を都市住民の交流などを目的に、ヨーロッパの景観をまねたもので、不格好な裸婦像のあるバラ園が売りもの。平成七年発足、面積約三五ヘクタール、遊園施設、加工体験施設、総投資額は五十二億円。うち農構事業十四億円と中央畜産会補助六億円(五%補助)になる。この事業主体はHファームという株式会社だが、出資は民間の観光会社が九七・五%で、町が一・二五%、農協一・二五%の出資率である。つまり実質は観光会社の経営であるにもかかわらず、補助事業が投入されており、この会社は同じ形で全国に一〇カ所の農業公園を展開しているという。自治体や農協がうまく利用され、地元農産物の販売が格好だけ行われている。 こうした事例は各地に多い。改めて農家のための経営基盤対策事業がだれのために使われたのかの点検が必要である。同時に補助事業を主体的に取り組み、自らの計画を特認として役所に認めさせ有効活用している仲間も少なくない。農業者の主体的な運動がいま強く求められている。
(新聞「農民」1999.9.6/13付)
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[1999年9月]
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