「農民」記事データベース20010108-476-01

21世紀の初春に翔ぶ

「家業の養豚、ぼくが継ぐ」

 「豚ってすごく可愛いいんですよ。『ヤダこのブタ』なんて悪口言われるとブタはもっと可愛いいぞ!って言い返したくなるんです」――豚が大好きという森島宏昌(ひろまさ)さん(22)。静岡県立農林大学校に在籍し、現在、神奈川県平塚市にある有限会社「ぴゅあポーク」でハム、ソーセージ作りの研修中。この春には学校を卒業し、家業の養豚を継ぐ頼もしい農業後継者です。


22歳、青春かけチャレンジ

静岡・浜北市の森島宏昌さん

 年間500頭

 母豚四十頭を飼育し、年間五百頭の豚を出荷する森島さんの家は、東名高速浜松インターから車で三十分ほど走った静岡県浜北市にあります。家を囲むように豚舎が並び、北側にある肥育舎では、広い舎内を黒豚やデュロック(茶色い豚)とのハーフ豚が元気に飛び回っています。

 「運動させることで豚のストレス解消になるんです」と宏昌さん。「黒豚の発育は遅く、運動もさせているので、二カ月ほど出荷が遅れますが」と経営内容を説明します。飼料も自家配合で大麦を多めにし、出荷前にはヨモギの酵素飼料も与えています。こういう努力が市場でも評価され始めているといいます。

 豚肉産直

 二十八年前、養豚を始めた父親の倫生(みちお)さん(52)(現在、農民連浜北赤石会会長)は、一九九三年十二月十四日、細川内閣によるガット受け入れを見て「いまの経営ではダメになる」と翌日、新日本婦人の会浜北支部に呼びかけて産直を相談。これを機に、黒豚生産を開始し、豚肉産直に取り組みました。

 四年前には自前の加工施設を作り、新婦人の他にレストランや個人グループに豚肉を販売しています。加工を担当している母親の洋子さん(49)は「加工部門がなかったら廃業せざるを得ない時もあった」と厳しい経営を振り返ります。

 期待・不安

 父親の倫生さんは、新婦人の会との豚肉産直について「一緒に日本の農業を守っていこうという信頼関係を土台に、食べて気づいた点を率直に伝えてくれるので、より良い肉質での再生産につながる」と語ります。また、地域の世話役を務めるなかで「家にいろんな年代の、いろんな人が違いを超えて集まり、地域の者同士が助け合う。そんな環境が宏昌にとって良かったのでは」と話します。そして、宏昌さんの就農を喜びながら「期待と不安が半々」と複雑な心境を語り、「ますます厳しくなる情勢だが、必ず農業が大切にされる時がくる。そういう展望を持った太い人になってほしい」と期待をよせています。

 夢と展望

 子どもの頃から家の仕事を手伝い、農林大学校で養豚を勉強してきた宏昌さんですが「自分に養豚が出来るだろうか」と悩み、昨年の夏まで就農をためらっていました。しかし、夏休みなどに家の仕事を手伝ううち、「俺ならこう飼う」と考えるようになり、自信が出てきたといいます。

 宏昌さんは「父が作ってきた経営の基礎を引き継いで、もっとおいしい豚を作ってみたい。父は人とのコミュニケーションが好きなので、僕がしっかり豚を飼って、父親が営業活動してくれれば」と思いをめぐらせます。そして、安全でおいしいハム、ソーセージの加工にも取り組みたいと将来への夢を語ってくれました。

記事 森吉秀樹
写真 冨沢 清

(新聞「農民」2001.1.8付)
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2001年1月

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