「農民」記事データベース20020603-541-12

炭やき農民のすすめ(5)

杉浦銀治


成金豆(なりきんまめ)

 南伊豆に炭やき仲間が増えてきた。南伊豆は、歴史的にも「天城炭」を江戸に船で出荷していた。

 その南伊豆で、「成金豆」が幅をきかした時期がある。経済成長で木材需要が急増した時期だ。木材の伐採跡地の枝条を八月の猛暑のなかで焼きはらい、粉炭と灰にする。その上にキヌサヤエンドウの種をまくと、わずかな金肥で多収になった。十一月末から収穫が始まり、クリスマス、正月のころに最盛期を迎える。半年の短期間に、多額の現金を得ることができ、だれ言うともなく、キヌサヤエンドウを「成金豆」と呼ぶようになった。

 九州地方との競争もあり、時代の変遷で往年の面影はないが、南伊豆に行くとまだ成金豆の呼び名が通じてなつかしい。

 一九八四年六月、ワグナーポットで赤土を使った炭施用の比較実験を行ったところ、驚くほどの差異があった(写真〈写真はありません〉)。炭を施用したキヌサヤエンドウは味も香りも格別だった。

 炭はアルカリ性で、そのうえ無菌の多孔性だから、表面積が大きく空気や水を保ちやすい。これは、細根の発生を促すことにもなる。

 炭は微生物の格好の住み家となっており、炭に接触すると植物の根に根粒や菌根ができやすくなるようである。内生菌根(カビが侵入した細根)は、根のリン酸吸収を助ける。根粒菌は、根粒と菌根の両方から栄養分をもらって空気中の窒素を固定する。豆科植物のダイズ、エンドウ、インゲン、レンゲ、落花生、ソラマメなどは、共生する微生物に助けられて痩地でも栽培できる。

 だが、炭をやれば必ずよい結果が得られるというわけでもない。炭化条件や炭の種類、粒度、土壌条件に注意する必要がある。豆科植物には、炭に対して一%、わずかな過リン酸肥料を添加してやるとよいという結果が出ている。

 ダイズの茎や落花生の豆殻も、炭やきの立派な炭材になる。現地で伏せ焼きをすれば、炭と木酢液、灰がとれて、炭を焼いた跡地は土壌改良になる。休耕田などを利用して炭やき農業に挑戦し、「成金豆」を再現してみてはどうだろうか。

(新聞「農民」2002.6.3付)
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2002年6月

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