「農民」記事データベース20020603-541-13

演劇

日本語の豊かさを知る「ら抜きの殺意」

テアトル・エコー


 これほどまでに舞台のせりふに感嘆させられたことがなかった、といってもいいほどの強い衝撃をうけた芝居です。せりふの面白さに笑い、対立する人間関係にどきどきし、日本語の豊かさを教えられ、人生そのものを考えさせられていたといえます。それが、テアトル・エコーの「ら抜きの殺意」です。永井愛の作・演出で、一九九七年の十二月に初演、翌年に再演、ともに話題を呼び、戯曲は第一回鶴屋南北戯曲賞を受賞。その後、全国各地で上演、今回の東京公演は全国ツアーファイナル公演となります。

 「見れる」「来れる」「食べれる」…現代日本語の乱れの象徴として話題になる“ら抜き言葉”。物語は、この“ら抜き言葉”に心を痛めている中年紳士が、“ら抜き言葉”を連発する若い男の部下として働くところからはじまります。そこには敬語のでたらめな若い女の事務員がいたり、ことわざの意味を理解できない若い男が出入りしたりしています。言葉で対立を深める二人は、やがて殺意を持つまでになります。出演の安原義人、落合弘治、雨蘭咲木子、熊倉一雄らによるアンサンブルの良さも見事です。

 永井愛さんは南北賞受賞の言葉として「この幸運はテアトル・エコーでの上演の成果に大きく支えられていると思います。役者さんたちは、何としてもこの作品を愛そうとの意気込みでけいこに励んで下さいました。演技に無理が生じるところから私自身の無理を発見したり、思わず飛び出した言い間違いのイキのよさに打たれたりして、私はたびたび修正をほどこしました。『ら抜きの殺意』は生きた肉体に洗い直された上演台本です」と語っています。

(鈴木 太郎)

 *6月18日〜23日、東京・六本木・俳優座劇場。連絡先=テアトル・エコー電話03(5466)3321

(新聞「農民」2002.6.3付)
ライン

2002年6月

HOME WTO トピックス&特集 産直・畜産・加工品 農業技術研究
リンク BBS 農民連紹介 新聞「農民」 農とパソコン

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒171-0022
東京都豊島区南池袋2-23-2
池袋パークサイドビル4階
TEL (03)3590-6759

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2002, 農民運動全国連合会