「農民」記事データベース20020617-543-01

インタビュー

農家を応援する政治を地方から

 秋田県湯沢市に、鈴木俊夫市長が誕生して一カ月余。農民出身の革新市長・鈴木氏の農業への思いはどうなのか。農業の大切さ、そして農民連への期待などについて、秋田県農民連の佐藤長右衛門委員長と一緒に聞きました。
(編集部)


 秋田県湯沢市 農民出身の革新市長

     鈴木俊夫氏に聞く

 ――新聞「農民」を古くから愛読いただいているそうで、ありがとうございます。ご自身も農業との関わりは深いそうですね。

 市長 私はこの湯沢市の山田という農村部の農家の長男として、一九五〇年に生まれました。「農家の長男は農業を継ぐもの」ということで育てられてきましてね。高校までは農繁期には田植え、稲上げ――米つくりの作業を、小学生のときからずーっと手伝いながら、農業というものを体で覚えてきました。農家の長男はほとんどがそうですが……。

 岩手大学の農学部に入ったときは、ちょうど減反が始まったときでした。だから農業問題を考えるいい機会になったんですね。

 出稼ぎに行き考えた農業問題

 ――出稼ぎにも行かれたとか。

 市長 当時の農村は、出稼ぎという社会現象が起きまして、うちの親父も出稼ぎに行くようになりました。半年間は親父がいないという家庭がほとんどでした。いまでいう単身赴任みたいなものですが、当時は、半年間、村からお父さんたちがごっそりいなくなる。そういうことで、暗いイメージがありました。出稼ぎの事故などもあって、決していい印象ではなかったですね。

 学生生活のなかで、「これから農業はどうなっていくのか」と、農業問題研究会の仲間と一緒に、農業を考える非常にいい勉強の機会を得ましてね。家に帰ってきてからも、“出稼ぎと米作り”という問題について、思いを巡らせてきたんです。

 出稼ぎには私自身も行って、そのなかで政治の方向に飛び込むきっかけをつかむことになったと思います。「出稼ぎのない明るい農業ができればなあ」と考えるようになりましてね。

 そこで市会議員とか県会議員とかをやって、市や県の立場から、農業を応援する政治ができないか、行政ができないかということで、今まで取り組んできたんです。だけど、まず国政の大元を変えないとなんともしようがないという、日本の農政の現状がありますから、そこへ向けて地方の立場から、さらに大きく運動していかなければならないと思っています。

 農業者の決起大会の目標は

 ――湯沢市としても、運動をつくっていく?

 市長 六月二十二日に湯沢市、雄勝郡(三町二村)の農業者の大決起大会を、湯沢市の文化会館でやることを決めています。歴史的には、羽後町で三十一回やってきた。それを羽後町ばかりでなく広い規模にしようと、昨年から湯沢・雄勝規模にしたわけです。そうなってから第二回目ですが、今回は私が大会会長になって、会場も湯沢市でやります。

 これには六党の国会議員の責任あるみなさんをご招待して、それぞれの党の農業政策について話をしていただきます。そして農家の現場からの声を聞いていただく。農家の声が反映されるよりよい国の政治を要求していきたいという大目標があります。これをなんとかして成功させ、農家の声が国政に通る、国政がその声にこたえるというような、大きなきっかけをこの湯沢市から作りたいと思っています。

 湯沢市で循環型の農業経済を

 ――農業の大切さといいますか、農業の振興なくして町の振興はないというお話もなさっていますね。

 市長 ここは米作地帯ですから、米価の値下がりが一番大きな経済の沈滞を招いている。地方の農村都市の沈滞ムードを作っているんです。私は“農業不況”といっているんですが、これが町の商店街に暗い影を落としている。

 農家の人たちが町へ来なくなった最大の要因が、そこにあるんですね。米価が上がったときは、農家の人たちが町へ買い物に来ました。湯沢には安く飲める飲み屋さんがたくさんあるんですが、毎晩のように来ていたその飲み屋にも、秋の収穫が終わっても人が来なくなる。そういう農業不況が、ここ数年、本当に大きく影響しています。

 ですから、再生産可能な米作り農業を育てていくことが、何よりも大切ですね。それに日本全体を見ましても、日本人の食料の七割が外国の農産物です。食料の自給率を引き上げるということは、題目ばかりでなく、価格保障をやる。農業予算をちゃんと取って、規模の大小にかかわらず農家が成り立つような農政に本格的に今、切り替えていかないと、食料さえまかなえないという深刻な状況になっていると思います。

 ――就任してまだ一カ月少々ですが、何か対策をお考えですか。

 市長 私はまず、湯沢市では農家が作ったものが売れる、学校給食でもたくさん使われる、そして農家が商店街で買い物をして帰る。そういう循環型の農業経済を作っていければと思っています。そんなコンパクトな循環経済というか、お互いにお互いの意味をかみ合わせて活性化できれば、また新たな活路が見出せるのではないかと考えているんです。

 ――全国の農民連の会員向けに、メッセージをいただければ……。

 市長 みんなで運動を大きくして日本の農業を守っていく。国の農政を変えていく。そういう大きな目標に向かってがんばっているみなさんには、心から敬意を表しています。

 新聞「農民」は、農業・農民のきっちりした運動の方向を示してくれているということでは、本当に頼りがいのある新聞だと思います。とくに消費者との関係を重視しながら運動していかなければならないわけですから、そういう点でも非常に役立っています。


 ▲鈴木市長(右)と秋田県農民連の佐藤委員長。三百年の伝統を彩る湯沢の「七夕絵どうろう」の、着物姿の美人画の前で。

 日本共産党の秋田県議会議員だった鈴木俊夫氏は、広範な市民の連合体「ひらかれた市政をつくるみんなの会」から立候補し、自民、公明推薦の現職を破って当選(四月二十一日投票)しました。


〈湯沢市〉

 人口約三万五千人。秋田県有数の穀倉地帯で、農業を基幹産業とし、代表的な地場産業として“東北の灘”といわれる酒造業、家具・工芸などの木工業があります。

(新聞「農民」2002.6.17付)
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2002年6月

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