「農民」記事データベース20020617-543-12

炭やき農民のすすめ(6)

杉浦銀治


ホタルが舞う夜

 ♪ホゥー、ホゥー、ホタル来い♪の歌のように、炭で浄化した水は「アマい」。

 日本で初めて河川浄化に炭を使ったのは、一九八六年、東京・八王子市浅川の主婦グループだ。南浅川に流れ込む用水路は当時、臭いがひどく、夏には大量の蚊が発生するどぶ川だった。そこを炭の浄化力で昔のような清流に戻せないかと、花屋旅館の女将、細川フサさんらに相談を受けた。

 間伐材や被害木をもらいうけて、みんなが力を合わせて百二十キロの炭を焼いた。それをミカンやタマネギのネットに入れて用水路に沈めると、一カ月半後に成果が表れた。臭気がなくなり、ハヤ(ウグイ)が集まってきた。七月にホタルが乱舞したのには驚いた。自然は正直である。

 このグループが毎月続けている水質調査でも、その効果が証明された。三・九ppmだったアンモニアが、三年後には〇・一七ppmに、十一ppmだったCODは四・五ppmに、電気伝導率も三分の一に低下した。

 田んぼを舞うホタル、清流を飛び交うホタル、それは日本の原風景だと思う。山口県の豊田湖の湖面を照らしたホタルの乱舞は今も忘れられない。長野県辰野町は、東京からホタル列車を走らせるなど、早くからホタルで町おこしをしているが、その清水を守るのに、キノコアドバイザーの一の瀬幸友さんらが炭を焼き森林にまいている。

 ホタルの幼虫は、カワニナという小さな巻貝をエサにしている。カワニナが炭に集まるのも不思議である。それに、セリの種を川の上流から播くと、瀬にセリが生えてホタルが飛ぶようになる。

 水質浄化は、国民の願いである。二十一世紀は、水問題の世紀だとも言われている。森林からの水は、生命の水である。

(新聞「農民」2002.6.17付)
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2002年6月

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