「農民」記事データベース20020624-544-02

農水省『不測時の食糧安全保障マニュアル』

低い自給率放置し

戦前・戦中と、うりふたつ


 とうとう、農水省までが戦争準備のためのマニュアルをつくりました。「不測時の食料安全保障マニュアル」という名の有事立法・農業版です。戦前・戦中の農民統制をそのままに、六十年前の亡霊を呼び起こそうという、そのたくらみの中身を見ると――。

◇ ◇ ◇

 「マニュアル」は、食料がひっ迫する最も深刻な事態として「輸入の減少により食料の供給が減少し、国民が最低限度必要とする熱量の供給が困難となる恐れのある場合」とし、具体的には「一日一人当たりの二千キロカロリーを下回る」場合を想定しています。

 日本の食料自給率は現在、カロリーベースで四〇%。一日一人当たり二千キロカロリー必要だとしても、輸入がすべて止まれば摂取できるのはわずか八百キロカロリーで、これは寝たきりの病人以下の水準です。

 日本の農業をさんざんつぶしておきながら、「食料安全保障」の要となる食料自給率をそのままにして、対策は、戦前・戦中の焼き直しです。

 対策その1 生産転換の押しつけ

 水田の裏作に麦を作り、麦の作付けに差しつかえる作物の品種や栽培方法、作期などを変える。水田に大豆を作るとしています。

 四割もの減反を押しつけている政府は、さらに減反拡大をねらっています。水田は減反で荒れ放題。作物を急に作れといっても作れるはずがありません。

 水田に小麦や大豆を作れといいますが、湿田や半湿田では作れません。イモを作れといっても、農業で生活できずに、担い手が次々と姿を消しているとき、手のかかる畑作物を誰が作るというのでしょう。

 その2 非食用作物の作付けはやめろ

 戦時中、食用にならないからと、真っ先に槍玉にあがったのが、房総半島や富山県などの花作り農家でした。当時、花農家は肩身の狭い思いをし、現金収入がなくて困りました。

 いまから十八年前の一九八四年、「日米諮問委員会」で「米・麦・大豆などアメリカにまかせて、日本は花でも作ればよい」と言われ、当時の中曽根首相は、レーガン大統領と約束しました。その花を「不測時だから作るな」というのです。

 その3 大家畜は野草で飼え

 大家畜(乳牛・肉牛)は野草などの粗飼料で一定水準の生産を維持し、中小家畜(豚・ヤギ・羊、鶏)は食品残さで飼い、飼料穀物がなくなったら屠殺しろというもの。

その4 既存農地以外の土地の利用

 太平洋戦争末期や敗戦直後、非農家の人たちが飛行場や軍用地の跡地でジャガイモやサツマイモを作ったのと同じ。

 このほか、食料の割当・配給、価格の統制、ハウスや花農家などへの石油の供給制限などを決めています。

新食糧法で「有事」が

 七年前に新食糧法が作られたとき、農民連は雑誌『農民』(No.37)で、有事体制に触れた同法の問題点を明らかにしました。農業を破壊する政策をどんどん進める一方で、農民に対しては(1)いつまでに、どれだけの米を売り渡せと命令ができること(第82条)、(2)米の譲渡を禁じ、配給制にする(83条)、(3)しかも、命令に違反した場合、三年以下の懲役、または三百万円以下の罰金を課すという罰則までつくっています。

(新聞「農民」2002.6.24付)
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2002年6月

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