「農民」記事データベース20021007-557-05

「農協改革」の現時点(1)

山本 博史


「改革か、解体か」農協の構造改革に暴言つづく

 政府・財界から「農協改革」への発言が相次いでいます。小泉首相の指示による「農業の構造改革」では、米政策の抜本的見直しと並んで「農協改革」が重点項目とされ、農協の事業・組織運営に大ナタをふりおろそうとしています。

 営農指導も別会社に

 六月五日に日本記者クラブで会見した武部勤農相は、「食と農の再生プラン」で農協の「大胆な改革を進めなければ、解体を迫られる」と発言、「農協型株式会社」論を強調しました。単位農協や全農の事業を、営農指導まで含めて分社化するという考え方です。「農協は理事会とか総会とかものごとを決めるのに時間がかかりすぎ、機動的で効率的な事業展開ができない」と、協同組合の民主的運営に挑戦する理由づけをしています。

 農水省は、四月十一日に公表した「食と農の再生プラン」で、「農業の構造改革を加速化」という方針の中に「農協系統組織の改革」を位置づけ、六月二十八日に発表した「米政策の再構築に向けた中間取りまとめ」でも「系統米事業方式の変革・見直し」をあげました。

 独禁法適用除外を問題視

 この流れが加速化されたのが、八月三十日に開かれた第二十五回経済財政諮問会議です。小泉首相が議長となり、経済閣僚や財界代表、大学教授などが議員となって開かれる会議で、この日は、農水・文部科学・科学技術の各大臣から「構造改革」方針の説明をうけ、「制度・政策改革集中審議」を行っています。

 武部農相は、「総理指示に沿った制度・政策改革のポイント」を提出して説明、「農協改革」については、つぎのように発言しています。

 「現状の農協は、三十万人もの職員を抱え、日々変化する市場、消費者、担い手農家のニーズに的確に応えられない。民間事業体として行う業務と行政の補完的機能が混然となって、性格があいまいになっている。問題を打破するには、農協のほかに農協型株式会社があってもよいのではないか。農協の構造改革には相当の抵抗が生じているが、“解体的改革がなければ農協の存在意義はゼロ”であると申し上げている。来月には幅広い有識者との検討の場を設けるなど、今年度末までに農協改革の方向をまとめたい」

 これに続く討論では、財界代表の牛尾治朗(ウシオ電機会長)、学者の本間正明(大阪大学)、竹中平蔵(経済財政相)の各議員から「農協が独禁法適用除外になっているのは問題」とする発言が相次ぎ、小泉議長も、「改革なければ解体という意欲で実施を進めて欲しい」というしめくくりの発言が行われています(同会議議事録要旨から)。

 国民の協同活動そのものを敵視するもの

 九月九日の第二十六回会合では、前回の「集中審議をふまえた今後の諮問会議での論議について」という竹中経済財政相名のペーパーが用意され、「中心的に掘り下げて論議を行う事項」の一つとして「米政策・農協改革」をあげ、「農協改革については、本年度末を目途に抜本的な改革の方向をとりまとめる。独禁法の適用除外の問題について検討など」と提案、了承されています。

 ここでいう独禁法適用除外の見直しとは、「一般企業との公平な競争条件の確立」という名のもとに、農協が組合員の要求をふまえて実施している共同購入、共同販売、生産・出荷調整などの重要な事業機能を否定し、解体して、農業・農村・食糧の分野への大企業の参入拡大を可能にする道を開こうとするもので、国民の生産面や生活面での自主的協同活動や協同組合そのものへの敵視・解体をねらったものとみることができます。

(つづく)
(立教大学講師・農民連参与)

(新聞「農民」2002.10.7付)
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2002年10月

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