厳しい検疫措置を堅持せよ
リンゴ火傷病
一層の緩和もくろむアメリカ
アメリカは、リンゴの火傷病に対する検疫措置を、さらに緩和するよう圧力を強めています。
日本政府が見直し案
圧力に屈したひどい中身
侵入を許せば甚大な被害が
火傷病は、細菌によってまん延し、リンゴ、ナシなどの果樹や花木類を侵す重要病害で、火傷病にかかった植物は、火にあぶられたような症状を示します。
もし、国内への侵入を許せば、リンゴをはじめ果樹・花木類に甚大な被害を招き、取り返しのつかない事態が予想されます。
アメリカとの協議では、厳しい検疫措置を堅持するよう、断固たる態度が求められています。
4つの条件つけ生果実輸入解禁
一九九四年八月、火傷病の侵入を防止する四つの検疫措置を条件に、アメリカ産のリンゴ生果実の輸入が解禁されました。それは、(1)火傷病完全無病園地の指定、(2)輸出園地の周囲に五百メートル幅の緩衝地帯を設置、(3)年三回(開花期、幼果期、収穫期)の園地検査の実施、(4)果実の表面殺菌。
しかしアメリカは、二〇〇二年三月、これら検疫措置が厳しすぎるとして、WTOのパネル(紛争解決機関)に提訴。昨年十二月、パネルは、アメリカ側の主張を全面的に認め、わが国敗訴の勧告を示し、六月末までに検疫措置の見直しを行うことになっていました。
こうした経過を受けて、日本政府は、緩衝地域の五百メートル幅を十メートルに、また年三回の園地検査を一回に緩和する見直し案をアメリカに示しましたが、アメリカ側はこれを認めず、いっそうの規制緩和を求めて、WTOのパネルに再度持ち込もうとしています。
さらにWTOに持ち込み圧力
中央果実基金が発行する海外果樹農業ニュース(七十四号)に、アメリカ農務省のロドニー・ロバート博士による「リンゴ火傷病に対するWTO裁定への経過」と題する論文が掲載されています。これによると、アメリカは、日本の検疫措置を「輸入を禁止するために費用がかかるようにしたもの」と見ています。そして「アメリカの代表団は、一回のほ場検査と、五百メートルに規定されている緩衝地帯を十メートルにすること、園地全体ではなく火傷病発生樹だけ、または火傷病発生樹から十メートル以内の樹だけを不合格とすることを提案している」と書いています。
まさに、日本政府の見直し案は、アメリカの横暴な要求を受け入れたものといえます。しかしアメリカは、「すべてを受け入れたわけではない」として、さらにWTOに持ち込んで圧力をかけようとしているのです。
侵入ないよう万全を期せ
農民連は二十九日、農水大臣あてに「断固として厳重な検疫体制を堅持し、火傷病の侵入を防止する」よう、要請を行いました。また全国果樹研究連合会(木村徳英会長)も「火傷病の植物検疫措置に係わる要請」を行い、「改正にあたっては、万が一にも火傷病の侵入がないよう万全を期す内容となるよう」求めています。
青森県りんご協会の会長でもある木村徳英さんは、「現行の緩衝地帯があっても伝播する可能性があるのに、大幅に縮小改定する見直し案には、大いに不満だ。さらにWTOの再パネルに持ち込まれ、わが国の主張が負けることにでもなればいったいどうなるのか、たいへん不安だ。農水省は、がんばるが一〇〇%ではない、と言っている。無病園地の指定だけは、なんとしても確保してほしい」と、アメリカの横暴に怒りを募らせています。
感染力強くて産地が危ない
小林基博さん(長野県佐久産直センターのリンゴ生産者)
火傷病は日本にない病気で、感染力が非常に強く、一夜にして十アール、二十アールという単位で被害が発生します。日本のように経営体が小さい場合、一夜にして全滅する園が出る可能性があります。場合によっては産地全体の存続も危ぶまれます。
いま、国内産のリンゴの価格は下がる一方で、薬剤費は上がるばかり。新たな病気が入ってきたら、農家は苦しむだけ。そうなったら誰が責任をとるのか、国や農水省が補償してくれるというのか。
防止努力の政府の約束果たさす
高橋千鶴子さん(日本共産党・衆議院議員)
緩衝地帯を縮小し、園地検査を年一回に変更するという農水省が示した新たな検疫措置は、アメリカの要望を丸々受け入れたもので、容認できません。アメリカの研究でも確実な防除方法がないといわれているように、ひとたび火傷病の侵入を許すと、重大な被害をもたらします。
私は、三月に国会でこの問題を取り上げ追及しましたが、農水大臣は、関係者への説明をやる、侵入を防ぐために最大限の努力をする、と答弁しました。この約束を果たさせたいと思います。
(新聞「農民」2004.7.5付)
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