新聞「農民」
「農民」記事データベース20160926-1231-03

アメリカ「食品異物混入基準」

ギョギョギョ!ウジ虫・
ハエの卵・ネズミの毛・カビ

食品に混入していてもOK

関連/訂正とおわび


TPPでアメリカ基準が
押しつけられる恐れ

 レーズンに混入するハエの卵、8オンス(227グラム)あたり35個未満ならOK、マカロニに混入するネズミの毛、225グラムあたり4・5本未満ならOK、トマト缶詰に混入するウジ虫、500グラムあたり2匹未満ならOK……。

 アメリカ食品・医薬品局(FDA)が、こんな食品異物混入基準を定めていることが同局のホームページから明らかになりました。

 FDAは保健福祉省に属し、農務省が所管する食肉・同加工品、卵加工品以外の食品全般の安全規制を担当している政府機関。異物混入基準は「欠陥レベルハンドブック」に記載され、加工食品113品目について定められています。表はその抜粋です。

画像
異物混入基準を示す米FDAのホームページ

 経済効率優先で異物混入認める

 欠陥レベル=介入レベルは、FDAが「食品医薬品化粧品法」にもとづく差し押さえなどの法的措置を発動するかどうかを決定する基準。逆に言うと、基準未満であれば、人間が食べても健康を害さないとして許容するというもの。

 カビについては、別掲の計測方法にもとづき、顕微鏡で観察される菌糸の存在率を%で示します。これは菌糸数ではありませんが、食品へのカビの混入を認めていることはまぎれもない事実です。

菌糸の存在率(モールドカウント)の計測方法(ハワード法)

(1)検体を2枚以上のスライドガラスに用意し、顕微鏡で25カ所〔25視野=顕微鏡で見える範囲のこと〕ずつ観察する(合計50視野以上)。
(2)顕微鏡で見える範囲に菌糸が発見された場合、その視野を「陽性」とカウントする。菌糸の長さは視野の直径の6分の1以上。
(3)観察した視野数全体のうち、陽性の視野数の割合(%)を計算し、モールドカウント○○%として表示する。

(FDAのホームページから)

 FDAは加工食品について「適正製造規範」を定めていますが、同時に「自然由来で不可避」の異物の混入を認めています。その理由は「異物を全く含まない食品の生産は経済的に実現困難であるから」。つまり、経済効率優先で、ウジ虫やハエの卵、ネズミの毛、カビを含んだ食品も合法とするというわけです。

 FDAはこれらの異物を「無害で、自然に発生する不可避の異物」としています。しかし、果物にたかり、糞(ふん)便や腐敗動物には接触しないとされるショウジョウバエ(コバエ)の卵やウジだけでなく、「ハンドブック」は「その他のハエ」も含めて基準を定めています。ネズミや昆虫、カビが「無害」とはとうてい言えないでしょう。

 こういう基準の結果、「アメリカでは食虫の習慣がない人でも年間およそ450グラムの虫を口にしている」ともいわれています(ビジネスジャーナル、8月16日)。

画像
マッシュルーム缶詰に混入するウジ虫20匹未満ならOK

 ゴキブリ入りカップ焼きそば

 日本では、2014年12月にインスタントカップ焼きそば「ペヤング」にゴキブリが1匹混入していたことが問題になりました。保健所はメーカーに製品回収を指導し、メーカーは5カ月にわたって製造を中止して工場改修などの再発防止策をとりました。

 日本の食品衛生法は「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがある」食品の製造販売などを禁止しています。「異物」の定義は定められていませんが、通常は食品に入っていないはずのものが「異物」と判断されます。

 ゴキブリは「異物」であり、どのような病原菌を持っているかも分からないので「人の健康を損なうおそれ」があります。日本の法制度は、こういう異物が混入した食品の流通を認めていない

のに対し、アメリカでは一定のレベルまでは許容するというわけです。

 FDA基準をタテに圧力とISD提訴にさらされる恐れ

 もちろんTPPが発効したとしても、アメリカの異物混入基準をクリアした食品がすぐに日本に入ってくるわけではありません。

 しかし、TPPの食品安全基準の原則は“科学原理主義”であり、「科学的証拠」がないかぎり、規制措置を認めない立場です。WTO(世界貿易機関)が、科学的証拠が不十分な場合にも「暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる」という「予防原則」を認めているのとは大違いです。

 FDAは、今や食品衛生のグローバルスタンダードとなった感があるHACCP(ハサップ)の開発者です。TPP流“科学原理主義”のルールのもとでは、FDAの基準は「科学的証拠」にもとづく基準として絶対化されるおそれがあります。

 TPPのもとで、ウジ虫やハエの卵、ネズミの毛、カビの混入を認めるFDA基準をクリアした食品の輸入を拒否した場合、アメリカ政府の圧力にさらされるおそれがあります。

 また、アメリカの食品企業がISD(投資家対国家紛争解決)提訴を突きつけることも大いにありうるといわなければなりません。


訂正とおわび

 9月12日付のアメリカの食品異物混入基準の記事中、カビについての記述が不正確でした。

 サクランボジャムなどに関するカビの混入基準を30〜45%と記述しましたが、この数値は正確には、カビの測定方法の一つであるハワード法にもとづき、顕微鏡で一定数の視野を観察し、菌糸が存在する視野が何%あるかを計測するもの(菌糸の存在率)であり、菌糸数を示すものではありません(計測方法は別掲カコミをご覧ください)。

 記事では、菌糸数のパーセンテージを示すかのような印象を与えましたが、不正確な表現でした。

 訂正しておわびするとともに、記事を修正・補強して、本号に再掲載します。

(新聞「農民」2016.9.26付)