国際シンポジウムパネリスト五氏の報告(大要) [4/5]
森林の再生・環境保全考えない貿易に反対三重県・速水林業代表 速水亨氏三重県海山町で林業経営をしています。日本の農業は森林や水と深いつながりを持っており、またWTO協定は林業にも大きな影響を与えています。 大量の木材輸入で林業経営は困難に日本の森林面積は国土の六七%を占め、その四〇%が人間が植えた人工林です。ところが毎年伐採され、利用しているのは国内消費量 の二〇%に過ぎず、八〇%は輸入です。 日本の木材の値段は、立木で一九六五年の水準を割っており、一方、労賃は当時の十倍、苗木代は十六倍となり、経営的にはまったく成り立ちません。私の住む三重県では、伐採された林地の六割に木が植えられず放置されています。 一九六四年に丸太の関税が完全自由化され、海外から安い木材が日本にどっと輸入されるようになり、林業経営が困難になって、山村は疲弊しています。日本は世界の木材輸入の一九%を占め、最大の輸入先はアメリカ、次いでカナダです。 森林を持続的に管理し環境的に配慮を日本が輸入するため木を伐った地域がどうなっているか――。たとえば戦後日本が大量 に輸入したフイリピンでは、既に伐採可能な森林は消え失せ、その地域は決して豊かになっていません。他の東南アジアの国々も同様で、日本による森林破壊は、熱帯雨林だけでなく、北半球の温帯雨林にも及んでいます。これによって利益を得ているのは輸出国の一部の階層と会社、日本では商社だけです。 また森林は木材生産だけでなく、CO2の固定機能や土砂の流出防止、さらに森林に降った雨はマグネシウムやカルシウムなど塩基類を増やし、豊かな水が海の漁場も豊かにするなど多様な機能を持っています。 そして森林の存在自体が周辺住民の生活の場であり、心の豊かな拠り所になっています。 森林を持続的に管理し、そのうえで環境的に配慮する林業経営を国際的に認証していこうという動きも活発になってきています。 豊かな資源をみんなで享受するためにいまWTO下の自由貿易の波の中で林業は揉みくちゃにされ、それが山村の疲弊にもつながっています。ものを作る者一人一人が豊かな生活を享受でき、そしてそれを使う消費者が豊かな生活が味あえるようWTOを変えていかなくてはならないと思っています。 そのために第一に、森林の再生を考えないような貿易はやめてもらいたい。第二に、林業でも遺伝子操作によって七年くらいで成木になる早生樹種なども考えられていますが、これは生物の多様性から見て、大いに疑問です。第三に自らの責任としてのバイオマスエネルギーの利用、バイオマスに対する考え方をしっかり持たなくてはならないということです。 世界の貴重な野性生物を破滅に追い込んだ最大の産業は農林業だといわれています。農業と林業は、自然のもっとも深いところで生産行為を行っている仕事なんだということを自覚し、環境に対する当事者意識というものをもっと強く持って、日常的に行う生産のなかで環境にたいしていかに小さな影響で抑えていくかという努力をしていくことが、社会での地位 と発言力を増し、味方を作る大きな力になると信じています。
(新聞「農民」2000.3.6付)
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[2000年3月]
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