「農民」記事データベース20011217-520-08

いまこそ農民を励まし、国民と連帯してた
たかい、農業・農山村の明日を切り開こう

農民連第十四回大会決議案

二〇〇一年十一月二十四日 農民運動全国連合会常任委員会


III 国民と連帯して切り開いた成果と展望

 この一年間の最大の教訓は、農業をめぐる現実は厳しいが、あきらめずに国民と連帯してたたかえば大きな展望を切り開くことができること、また、今日の現状を打開するために“やれること、できること”がたくさんあるということです。

1 農民のたたかいと世論が政治を動かした
  ――暫定セーフガード発動――

 セーフガードの発動を求めるたたかいで、政府にネギ、生シイタケ、畳表の三品目を暫定発動(二百日)させました。これまで他国の報復や大企業の反発を恐れて、かたくなに発動を拒否し続けてきた政府を動かした歴史的一歩でした。

 これは、WTO協定のスタート時からの農民連・食健連の粘り強い運動が農協や農業委員会をはじめ、広範な農民の要求に発展し、地方議会の意見書採択は千八百を超えるなど、農民のたたかいと世論が政府を動かした成果です。暫定発動を契機に本発動を要求するたたかいや、他の野菜や果樹、さらにワカメやウナギ、タオルなどの発動を求める運動が広がり、セーフガード発動の中心的役割を果たした農民連への共感、注目が大きく広がっています。

2 食の安全を求める国民世論の高まりと農民連の果たしてきた役割

 農民連・食品分析センターは大いに力を発揮して、輸入農産物の危険性の暴露、私たちの生産する農産物の安全性や栄養価などをアピールしてきました。ビデオ「危ない あなたの食と健康」の活用など学習運動、「大豆畑トラスト運動」、自給率の低い大豆や菜種作りなどを広げてきました。

 こうした運動が九割の国民が外米を拒否し、「高くても国産を食べたい」という国民が八四・二%に及ぶなど、流通業者との提携を広げる条件にも結びついています。

3 税関当局を動かした冷凍弁当輸入問題

 史上最大の減反や青刈りが押しつけられているなかで、JR東日本の子会社が七月から冷凍弁当の輸入・販売を始めたことに農民の怒りが巻き起こりました。しかも、本来、米調整品である冷凍弁当を「肉・魚調整品」として低関税率を適用させた脱法行為であるのに加え、肉・魚の分量が過少の違反品でした。農民連は、この事実を広く暴露し、証拠を農水省や関税当局につきつけて追及し、是正させました。

4 流通との提携、多様な産直の実践

 農民連は“農民が生産から撤退すればするほど輸入農産物が押し寄せ、農業が破壊される”という立場から、生産の維持・発展に全力をあげてきました。

 同時に、輸入の激増や大企業・商社の横暴で苦しみ、機能が形骸化している市場を通した小売との提携、米卸を通じた米小売との提携、ライフエリアを守るために頑張る商店街や地域住民との提携に力をつくしてきました。

 このとりくみは、農産物の輸入が未曾有の規模に広がり、大手大企業の買いたたきが熾烈化しているなかで、壊されてきた流通の国民的立場での再構築と“ルート”作りであり、農業再生の展望を切り開くとりくみでもありました。

 東京・築地や埼玉・上尾、福島や秋田中央市場との提携、岡山県での仲卸やスーパーとの提携、「ほくほくネット」の米卸を通した小売店や消費者との提携は、関東や北陸ブロックにも広がり、近畿圏に広げる拠点となりうる米卸や小売との提携に向けた努力も始まっています。

 生協の空店舗を利用した東海ネットの生協会員と共同したファーマーズ生鮮市のとりくみ、国産大豆の生産を広げ、醤油や味噌業者、豆腐店との提携、「スーパースイート・きぼう」のリレー出荷や、多様な直売所、学校給食、消費者との多面的な産直を各地で切り開いてきました。

 こうした運動を前進させるうえで産直協の果たした役割は大きいものがありました。

5 地域全体の生産を視野に入れた支部・班を軸にした活動

 価格暴落のもとで、農地の荒廃や担い手不足が平場や中山間地を問わず深刻になり、励まし合い、助け合って生産と農地を守るとりくみがどこの地域でも重大な課題になっています。

 減反田を利用した大豆づくりを進めている福島県の「浜通り農業を守る会」のとりくみ、自治体と提携して荒廃地に野菜を作り、町のアンテナショップや、地元市場の仲卸を通してスーパーに「朝採り野菜」を供給している岡山・加茂川町の実践、庄内農民センターの「だだちゃ豆」作り、農業機械の共同利用などで集落営農全体を守る運動を進めている新潟・笹神村の経験などは、地域農業全体を視野に入れた「地域づくり」のとりくみであり、自治体からも注目され、住民に歓迎されています。

 この運動は、支部が話し合い、助け合って進めている実践です。私たちがめざす「支部・班を軸にした運動」の発展方向としても重要です。

6 農林漁業の振興で農山村を蘇らせる共同の広がり

 農山村の多面的機能や役割に光をあて、住民の力と農林漁業を軸に農山村を振興させる懸命な努力が各地で行われています。

 「全国町村会」が七月に発表した「二十一世紀の日本にとって、農山村がなぜ大切か」のアピールもその現れとして重要です。自治体に提案し、共同する立場をとってきた農民連にとって、こうした動きは歓迎すべきものです。農山村に農民の要求を担う農民連があって、その奮闘と町村の努力が結びついたときに大きな前進的方向が切り開けるでしょう。まさに農民連の役割は重大です。

(新聞「農民」2001.12.10・17付)
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