「農民」記事データベース20101213-953-07

TPP(環太平洋連携協定)阻止の
国民共同を構築し、農山村を再生する
“核”となる組織づくりに挑戦しよう(3/5)

農民連第19回定期大会決議(案)
2010年12月3日 農民運動全国連合会常任委員会

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【3】運動方針について

1、2年間の運動の基本について

 (1)生産の拡大と地域再生の担い手として

 いま、農民連に最も求められるのは、農山村の衰退に歯止めをかけ、生産の拡大と地域再生の先頭に立つことです。とりわけ、今日の情勢のなかで生産を続けること自体がたたかいです。困難のなかで生産と暮らしを支えて頑張っているすべての農家を視野に入れた要求運動を前進させることが求められています。

 (2)農業・食糧地域を守る運動の核となって

 政府は、2011年6月までにTPPへの態度を決めるとしています。農民連は中央でも地方・地域でも、TPP阻止の国民共同の核となって奮闘します。この運動の発展を地域再生の力に転化するとともに、農民連の信頼を広げて組織を飛躍させる契機にします。また、アメリカいいなり、大企業中心の政治に反対し、国民の暮らしと命、平和や民主主義を守る運動の一翼となって奮闘します。

 (3)役割を担える組織へ

 「農業でがんばる人はみな農民連へ」を合言葉に、大きな構えで全農家に働きかけ、あらゆる運動に組織作りを貫いて、会員と新聞「農民」読者の拡大を大飛躍させます。

2、TPP阻止へ、ガット・ウルグアイラウンドやWTO批准阻止を上回るたたかいに

 今期のたたかいの焦点は、TPPを阻止するたたかいに全力をあげることであり、並行して交渉が進められている広範な国とのEPA・FTAを阻止することにあります。

 政府は「包括的経済連携に関する基本方針」で「我が国は、今、『歴史の分水嶺』とも呼ぶべき大きな変化に直面している」とし、「国を開く」決意を述べています。原則自由化のTPPがもたらすものは、農業・食糧・地域の破壊であり、雇用をはじめ、国民生活のあらゆる分野にWTOを上回る弊害を引き起こすことは避けられません。直接的被害を最も受ける農業・食糧分野から、ガット・ウルグアイラウンド合意やWTO批准阻止のたたかいを上回る、文字通り国民的、歴史的たたかいに発展させなければなりません。

 (1)世論を分断するイデオロギー攻撃への反論と、国民にもたらす影響の暴露

 TPPへの加入を断念させる国民世論をつくるうえで最も重要なことは、「乗り遅れたら大変」「GDP比1・5%の農林水産業を守るために98・5%の経済が犠牲になっている」などの、政府、財界、マスコミによるイデオロギー攻撃をはね返すことです。TPPの研究を深め、国民生活に及ぼす影響を広く暴露します。そのための学習運動や多様な宣伝を強めます。

 (2)草の根から多様な運動を

   (1)署名、宣伝、自治体の反対決議運動と全国キャラバンの展開
 全国食健連が呼びかけている「春のグリーンウエーブ」に呼応し、学習や宣伝とあわせた国民規模の署名運動の推進とあわせ、都道府県に地域農業や経済に及ぼす影響を明らかにさせ、すべての都道府県と市町村での反対決議運動を展開します。キャラバン行動を呼びかけます。

   (2)農業・食糧・農山村の知性を代表する方々によるアピールと賛同運動
 多くの著名人や学者がTPP反対の声をあげています。こうした方々の影響力をいかして「アピール」を行い、全国的な賛同運動を広げます。

   (3)TPP関係国の農民組織を招いた国際フォーラム
 運動の節目となる2011年6月に、TPPに関係する国のビア・カンペシーナ加盟農民組織を迎えた「国際フォーラム」の開催を呼びかけます。

3、米価対策、価格保障を要求する運動

 (1)連続的な米価の下落を食い止める対策を要求して

 「米改革」以後の連続的な下落によって、米価は生産費の半分程度という異常な状況となり、農家の暮らしと地域経済、米の安定生産を脅かしています。また、農協や卸・小売りなど、米にかかわる産業全体の困難をつくりだしています。

 農民連は、政府に米の需給と価格に責任を持たせることを基本要求に、その時々の状況を踏まえた緊急対策を要求して運動を進め、関係団体とも共同して一定の成果をあげてきました。今日の非常事態といえる米の状況は、米の需給と価格に対する責任を放棄している政府の姿勢をきびしく問うものになっています。そして、農民連が掲げてきた生産費を償う価格保障を軸に、所得補償との二本立てによる対策でなければ事態を打開できないことがいよいよ鮮明になっており、TPP阻止のたたかいとも結んで強力に運動を展開します。

 また、不要なミニマム・アクセス米の輸入中止と、ゆとりある200万トン規模の備蓄の実現、棚上げ備蓄への抜本的転換の実現を要求し、業界や国民各層との合意を広げて運動を強めます。

 政府は米需要の減少を口実に、2011年の生産数量目標を795万トンに設定しました。史上初の800万トン割れであり、史上最大の減反面積となります。これは、2010年度の政府の需給計画の過ちに端を発した“米の過剰”には何ら対策を打たず、生産者に「米を作らせない」ための減反拡大を押し付けるという許しがたいものです。

 (2)農家の要求を反映させて戸別所得補償を改善させる運動

 輸入自由化政策を中止し、農産物の価格保障と所得補償を組み合わせてこそ、農民経営の安定と食料自給率の向上は実現できます。輸入自由化を前提にした戸別所得補償制度の限界と弊害を批判すると同時に、予算化されて提案されている現実を踏まえ、制度の内容や問題点を会員や農家に知らせ、農民の要求を反映させる運動を強めます。

 戸別所得補償の予算を確保するために、土地改良や農業共済などの予算を減らしたため現場では困難が広がっています。これらは農業の基盤にかかわるものであり、関係団体と共同して予算の復活を政府に要求します。

4、「農業構造改革」、「地域主権改革」、規制緩和・撤廃とのたたかい

 政府は「包括的経済連携に関する基本方針」のなかで、TPPに向けた環境整備のために「農業構造改革推進本部」の設置や、規制改革の推進を明記しています。その一環として菅首相は、農地法が後継者不足の原因であるとし、一般法人の農地取得の制約をなくすために農地法を再改悪する意向を表明しています。農業共済制度など、これまで家族経営を支えてきた制度の見直しや廃止、協同組合の独占禁止法適用除外の廃止、食の安全など広範囲にわたる「非関税障壁」を撤廃する攻撃が予想されます。こうした攻撃を許さない運動を強めます。

 道州制を視野に入れた民主党政権の「地域主権改革」は、自公政権以来の「自治と協同」の破壊を加速させ、農政事務所の廃止など、国の責任を放棄して自治体と住民に負担を押し付けるものです。この議論のなかで、国は外交・軍事・マクロ経済を、道州は地域経済対策・公共投資・高等教育・医療介護の財源確保を、そして「基礎自治体」(市町村)は農業・小中学校教育・医療福祉を、という「役割分担」が示されています。地域農業振興を「基礎自治体」にまかせながら、「マクロ経済政策」では、財界いいなりに貿易自由化・関税撤廃を推進しようというのですからとんでもありません。こうした動きを視野に入れ、自治体労働者や地方自治を守る運動と連帯して運動を進めます。

5、「米トレーサビリティ法」の成果を生かし、流通からミニマムアクセス米を締め出すとりくみ

 2011年7月から施行される米トレーサビリティ法は、麺やパンなどを適用除外にする不十分さはあるものの、これまでのミニマム・アクセス米の輸入中止や汚染米問題の追及、原産地表示を求める国民運動の成果で実現したものです。より徹底した制度を要求するとともに、消費者団体とも力を合わせて表示のチェック運動を行います。主食用米や加工原料からミニマム・アクセス米や輸入農産物を駆逐して国内産原料に置き換える運動を展開します。

6、畜産を守る運動

 宮崎県の口蹄疫被害を救済・復興する運動を進めます。韓国等で口蹄疫が発生しているもとで、日本中どこで発生してもおかしくない状況にあり、家畜伝染病予防法の改正をはじめ、侵入防止策、発生後の蔓延防止策、救済策の確立を要求します。畜産物の価格要求、国内産飼料の増産対策を求めて運動を強めます。

7、地域を守り、元気にする運動

 (1)自治体・住民ぐるみで地域を守り、活性化する運動

 農山村は、中小企業の倒産等による失業、非正規雇用による低賃金、米価の暴落や高温障害による農産物の品質低下、鳥獣被害などで困難を深化させています。自治体や関係団体は地域を活性化させるために、様々な施策を行い、努力をはらっています。民主党政権のTPPをはじめとした自由化戦略は、こうした努力に水を差し、農業と農山村をさらに衰退させるものです。自治体や住民とともに、地域を守り活性化させる運動の先頭に立つとともに、「農業・地域経済振興条例」を制定させて実効力のある対策を要求します。

 改悪農地法が施行され、企業の農業参入が加速されようとしています。利潤最優先の大企業の参入を地域ぐるみで跳ね返し、助け合って生産を拡大し、農地を維持するとりくみを進めます。農地を守る農業委員会と連携し、企業参入を監視し、農業委員会機能の強化を要求して運動を強めます。

 担い手対策は、待ったなしの課題です。国や自治体に対策の強化を要求することと合わせて、農民連運動としても、様々な制度も活用しながら担い手を確保する運動を強めましょう。

 (2)都市農業、中山間地を守る運動

   (1)都市農業を守る運動
 国土交通省都市計画審議会は、09年に都市の農地を宅地や商業地への開発から、保全の方向に大転換する答申を公表しました。これは、市街化区域農地への宅地並み課税に反対する運動以来の都市農業を守る数十年来の運動の成果ですが、農政や税制の施策に生かされていません。宅地並み課税の廃止や都市農業を振興させる政策の確立を求める運動を進めます。都市農業を振興させる地産地消や市民ぐるみの運動を進めます。

   (2)中山間地を守る運動、鳥獣被害対策を求める運動
 中山間地では、住民の高齢化と担い手不足、鳥獣被害など、多くの困難を抱えています。中山間地の直接支払い制度を充実させるとともに、農政だけでなく、社会政策として人の住める山村にするための支援を要求します。

 鳥獣による農作物被害の広がりが深刻化し、熊による人身被害も頻発しています。こうしたなかで、民主党政権が、鳥獣被害対策予算を「事業仕分け」して削減したことは許されません。政府に対して、鳥獣被害をなくすための根本的対策と、当面の対策の確立を要求します。地方自治体や地域でのとりくみを支援する予算の増額を要求して運動を強めます。鳥獣被害対策交流会も開きましょう。

 (3)林業、漁業を守る運動

 林業の再生は農山村の活性化、雇用と地域経済の再生、温暖化対策からも重要な課題です。漁業の振興も食料自給率の向上にとって重要な課題です。こうした役割を否定するTPPに反対する運動に、林業や漁業関係団体が立ち上がっています。こうした団体との話し合いや共同を広げましょう。林業・漁業の従事者の組織化も視野にいれてとりくみを進めましょう。

 (4)研究交流集会の開催

 生産や加工、地域の活性化のとりくみを学習し交流することを主テーマに、2011年中に全国研究交流集会を開催します。

(新聞「農民」2010.12.13付)
ライン

2010年12月

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