農民連第20回定期大会決議(案)持続可能な社会へ、
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農民連は、「米改革」路線を転換して政府が米価と需給に責任を持つことを一貫して要求し、総選挙を前にした2012年秋には「米を守る農民連の要求と提案」を発表し、政府に実現を迫ってきました。たたかいはこれからですが、JAグループも政府に同様の要求を求め、加工用米の実需者団体が「加工用米にエサ米並みの助成金」を要求するなど、情勢の変化も生まれています。農水省も2013年産の備蓄米や加工用米の増産を呼びかけるに至りました。
「米改革」路線による大手中心の米流通に対抗した「もうひとつの流れ・準産直米」を農民連ふるさとネットワークを軸に取り組んできました。米業者はこの間の流通の混乱を経験して産地との提携に生き残りをかける動きを強め、一方、産地側も顔の見える新たな販路を求めています。この間、新たな農家や生産組織、農協の参加を広げ、自治体ぐるみで取り組む地域も生まれるなど、前進を勝ち取っています。
燃油の高騰が経営を圧迫しているなかで、民主党政権の免税軽油制度を廃止するたくらみを全国の運動で跳ね返して延長を勝ち取ったことも大きな成果でした。
地域の条件や、高齢者などの生産力を生かしたものづくりや加工、学校給食、多様な販路の拡大、直売所などの取り組みが全国で展開され、地域の活性化に貢献しています。
結成以来の全国的な到達点を結成時と機械的に比較することは困難ですが、会員現勢や組織体制、影響力は格段に前進しています。しかし、農家戸数がほぼ半減しているとはいえ、過去最高の世帯会員現勢(2000年11月)との比較では5000世帯余り後退していることを直視しなければなりません。
都道府県連ごとの到達では、2011年度に前年より組織登録を前進させた組織は、福島、埼玉、千葉、新潟、富山、石川、奈良、島根、広島の9県連、2012年度は宮城、福島、茨城、長野、富山、石川、奈良、和歌山、島根、高知、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄の14県連です。2年連続で前進したのは福島、富山、石川、奈良、島根の5県連です。
1989年の農民連結成を前後していち早く組織的前進をとげた組織や、一定の現勢を持った組織が伸び悩み、後退しています。また、結成以来、組織づくりに成功していない組織が克服されず、幹部の高齢化等でさらに困難が増している実態もあります。
共通する教訓は、迎え入れた会員を基礎組織である単組や支部に結集し、単組に事務所や専従者、役員体制を確立して自主的に運営することに成功していないことにあります。また、その核となる活動家の確保や育成の不十分さもあります。また、いくつかの組織では産直事業の運営をめぐる混乱による脱退や後退が生まれています。運動の中に事業を抱えた組織として力量の強化と人づくりが求められています。
もう一つの前進への分水嶺(れい)は、中心的な幹部が、拡大への確固たる立場を貫き、要求運動で打って出るかどうか、農家の切実な要求を実現できる組織になれるかどうかにあります。
この間の教訓は、農協や農業委員、農業関係団体に一定の読者を持っていることが運動を前進させる大きな力になるということです。また、読者の方々から多くの放射線測定器募金が寄せられたように、読者は会員についで農民連運動を支え、広げる大切なパートナーであるということです。
日常的に一人、二人と読者を恒常的に増やしている経験や、集中して読者拡大に取り組んで大きな成果をあげている組織もあります。「みんなでつくろう、もの言う農民」の原点をにぎり、紙面改善と拡大の努力を強めることが求められています。
ゆがんだ政治や経済構造を変えなければ、農業と農民経営を守ることはできません。農民連は“国民のたたかう力”をさらに拡大するために広範な農林漁業団体との一致点と共同を広げ、農村でのたたかいの“核”となってたたかいます。
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官邸前の市民アクション |
農民連は、埋もれた資源を掘り起こし、農業と再生可能エネルギーの生産などの可能性に挑戦し、農山村のコミュニティを守り再生する先頭に立ちます。
自民党の政権公約は、(1)「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対、(2)自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、(3)国民皆保険制度を守る、(4)食の安全安心の基準を守る、(5)ISD条項は合意しない――などというものでした。連立合意は、条件付きとはいえ明記していた「反対」の言葉を消し、財界・大企業の「益」にほかならない「国益」を守るために、「自由貿易をこれまで以上に推進する」としました。これは、選挙での公約の裏切りの第一歩です。アメリカ政権内でも「年明けに新首相が訪米し参加表明の意思を伝え」、日本のTPP参加問題が1月に「大きなヤマ場」を迎えるとの見方が浮上しています。
竹下内閣の牛肉・オレンジ自由化、「この顔がうそをつく顔に見えますか」と言って選挙を乗り切り、消費税導入に道を開いた中曽根内閣など、選挙が終われば公約を裏切るのは自民党の常とう手段ですが、今度ばかりは裏切りを許さないたたかいが求められています。
その際、以下の点を明確にし、交渉参加阻止の大運動を発展させることが求められています。
(1)「例外を認めさせるために交渉する」「民主党には交渉力がないが、自民党にはある」と言っていますが、TPPは例外を認めない交渉です。12月から交渉に参加したメキシコとカナダは、すでに合意したTPPの内容についていっさい変更を求めないこと、今後決められることについても口をはさまないことを約束させられています。
(2)「全品目の即時関税撤廃はありえない」(経団連の米倉会長)などという気休めにもならない観測が幅をきかせていますが、現在TPP交渉で議論されている「例外」は、関税撤廃までにせいぜい7年間の「猶予」を与えるというものにすぎません。しかし、7年間で1俵(60キロ)1万6500円の米生産コストをアメリカや中国並みの3000円前後に引き下げることなど不可能です。7年間の「猶予」が「例外」などといえないことはあまりにも明白です。
これに対し、もともとのTPP加盟国(P4)であるニュージーランドのキー首相は、「アメリカが農産物の関税を撤廃し、ニュージーランドの医薬品制度の存続を認めないかぎり、TPPに署名しない」と、アメリカを強くけん制しています。
この発言に危機感を持ったのか、アメリカ最大のシンクタンクで米民主党政権に強い影響力をもつブルッキングス研究所の日本部長は「日本が参加しなければTPP全体の成功もおぼつかなくなり、アメリカは大きなダメージを受ける。日本の参加は、日米同盟にとって極めて重要だ」と猛烈な圧力をかけています。アメリカは「日本を交渉に参加させて関税を撤廃させることで、ニュージーランドとオーストラリアの輸出の矛先を日本に向けさせる」ことをねらっており、「乳製品や砂糖で利害が一致すれば、3カ国が一転して日本の参加を求める可能性」があります(日本農業新聞、2012年12月13日)。アメリカの通商専門誌『インサイドUSトレード』も「TPPはアジア太平洋市場、とりわけ日本市場への道を開く」という両国業界の声を紹介しています。
これらの経過が示しているのは、関税撤廃にいっさい例外を認めず、公的医療制度も緩和・撤廃の対象にするというTPPの冷徹な原則です。「早く参加しなければバスに乗り遅れる」という宣伝が続いていますが、あわてて乗るバスは日本が一人負けの地獄行きのバスになる可能性が強いと言わなければなりません。
運動の最大のポイントは、TPPへの国民の幻想を克服する学習の構築です。引き続き大中小の学習会を無数に行いましょう。本部は最新の情報を踏まえた学習テキストを発行します。
すべての都道府県に「TPP交渉参加反対」の一致点で立場を超えた共同組織をつくりあげて運動を構築することも重要な課題です。
中央では、新政権のもとで超党派議員の共同を作る努力や、市民アクションの発展、毎月第1火曜日に行われる官邸前行動の成功に力を尽くします。
TPP同様に高度な経済連携をめざすとしている日豪、日中韓、日EUなど、日本農業に重大な影響をあたえるFTAに反対する運動を強めます。
主食用米だけでなく、不足感の強い加工用米や非常時に備えたゆとりある備蓄米を確保できるよう、十分な生産目標や備蓄米制度の改善を要求して運動を進めます。
ミニマムアクセス米全般に加えて、主食用米の需給に直接、影響を与えているSBSシステムの輸入米の廃止、主食の米を投機の対象にする米先物取引を中止させる運動も重要です。
不十分ながらも一定程度、定着している戸別所得補償制度の充実・改善を要求します。あわせて、これ以上の後退や廃止、農家負担の押し付けを許さない運動も重要です。せめて米1俵1万7000円以上の生産者米価や、主食用以外の米や小麦、大豆、ビート、デンプン原料馬鈴薯、サトウキビ、菜種、牛乳、野菜などの主要な農作物についても再生産できる価格を要求します。
「準産直」を多くの中小の米業者と農家、生産組織、農協も加えた大きな取り組みに広げましょう。大手とは違う「もう一つの流れ」を大きくすることは、生産を刺激するだけでなく、米流通や米政策を転換するうえでも大きな力になります。
[2013年1月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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