「農民」記事データベース20130218-1057-04

農民連第20回大会への
常任委員会の報告(大要)
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 1.いま、どんな情勢か

  (1)総選挙結果をどうみるか

 公約を投げ捨てて暴走した民主党政権に国民の審判がくだりました。農民連は、TPP参加や消費税増税阻止、原発とのたたかいなど、民主党の裏切りを告発し、たたかってきました。総選挙では、「農民連の総選挙にあたっての13の要求」を打ち出し、新聞「農民」号外にまとめて全国で農家と対話し、政党選択の基準を農家の方々に示してきました。こうした運動が民主党に対する強烈な審判になったことは間違いありません。

 自民党が前回総選挙よりも得票を後退させながら議席を躍進させ、自公政権を復活させました。安倍首相が言明しているように、決して自民党が信任されたのではありません。民主党が国民の信頼を失ったなかで、一人しか当選しない小選挙区の弊害によるものです。この虚構の多数で、TPP参加や原発再稼働など、民意を裏切って暴走するなら破たんは免れません。

 仮に安倍内閣が原発再稼働に踏み出すならば、首相官邸を埋めているあの万の単位の民衆は、さらにふくれあがり、日本列島騒然たる状況になることは間違いないでしょう。TPP問題でも、「TPP参加反対」を掲げた自民党の候補者が多数です。これを裏切るならば、重大な困難に直面することは避けられません。

 私たちが2年間にわたって積み上げてきた運動の成果は、必ずしも国会の議席数と比例しているわけではありませんが、現実の政治のなかで発揮されています。このことに確信を持ってたたかいに挑んでいこうではありませんか。

  (2)農民連の運動は、持続可能な社会をつくる運動

 決議案で持続可能な社会に向けて、どう立ち向かうかというテーマを大きな柱として打ち出しました。原発は、人類とも農業とも決して相いれません。食料もまた、危機が世界を覆っています。

 温暖化の弊害も深刻です。地域経済、農山村の衰退、こういう問題も私たちの前に提起されています。

 こうした問題は、大企業の利益を優先する政治によって引き起こされたものです。しかし彼らは、あれほどの被害をもたらした原発事故の責任を省みずに原発政策を推進しています。目先の利益を優先して温暖化対策にも向き合おうとしません。食料危機で外国に食料を依存することができない事態のなかで農業のない日本に導くTPPに参加しようとしています。

 農民連のTPP参加阻止や、「原発なくせ」の運動、生産の拡大と食料自給率を向上させる運動、循環型の地域作りの運動、原発依存から再生可能エネルギーに転換する運動は、単に農民の利益を実現することにとどまらない、持続可能な社会をつくることと深く結びついています。そして、農村こそが持続可能な社会の担い手であるということを強調したいと思います。

 2.2年間の運動と到達点について

  (1)TPPへの参加を許さない運動

 TPP交渉参加阻止の運動が、画期的な規模の運動に発展しています。「オール北海道」をはじめ多くの県や地域で共闘組織が作られています。9割を超える市町村議会がTPP交渉参加に待ったをかける決議をあげています。農業分野から始まったTPP参加阻止のたたかいは、医療、労働など広範な階層の方々が参加する一大国民運動として、安倍内閣を包囲しています。

  (2)大震災と原発事故の救援、復興運動

   (1)被災者の命をつないだ農民連の救援活動
 3・11東日本大震災、原発事故の救援活動は、農民連結成以来最大規模の取り組みで被災者の命をつなぐ役割を果たしました。救援活動は、多くの出会いがあり、つながることの尊さを実感させ、農民連への共感を広げました。

 会場の前方に大漁旗を掲げていますが、宮城県東松島で津波被害を受けた漁民の方が、救援活動に感謝をして、農民連本部と宮城県農民連に贈ってくれたものです。いまも、仮設住宅への食料の提供や、何でも相談会などが継続されています。命をつなぐ救援活動に47都道府県あげて取り組むことができたことは農民連の誇りとするところです。ご奮闘されたみなさんに心から感謝と敬意を表します。(拍手)

 復興をめぐって、資本は被災者の不幸につけ込んで飽くなき利潤を追求するという本質をさらけ出しています。被災者を閉め出して農地をもうけのための開発に使う、宮城では漁民から漁業権も取り上げるたくらみがありました。復興予算をゼネコンなどのもうけのために流用するという許しがたい行為も明らかになりました。

 農民連は、何よりも被災者の生活と生業の復活を最優先にして、被災者の要求を前面にたたかいました。こうした中で岩手県では、70人を超える漁民が漁民組合を結成して岩手県農民連に加盟しました。多くの会員をもつ漁民組織を迎えることができたことは大きな喜びです。長野県北部地震で深刻な被害を受けた長野県栄村でも、復興要求を掲げて農民組合が再建されました。このように、救援、復興の運動の中で被災地で組織が前進していることも大きな成果です。

 多くの会員が深刻な被害をうけ、事務所も、保管していた米も失った福島県浜通りの組織は、東電への損害賠償の運動を前進させ、福島県連、本部と連携した粘り強い二重ローン解消対策を勝ち取りました。こうした運動が、復興の拠点となる「野馬土」に実りました。

 震災と原発事故によって失ったものは余りにも大きいものがありましたが、立ち向かって多くの成果を勝ち取り、多くの人々との連帯を広げ、希望を勝ち取ってきました。

   (2)原発ゼロと損害賠償運動
 原発ゼロと再稼働反対、賠償請求を求める運動は、この2年間、私たちがもっともエネルギーを注いできたたたかいの一つであります。原発事故を人災と認めず、賠償に背を向ける東電と全力でたたかってきました。福島県連を先頭に東電本社包囲行動を4回、5回と繰り広げ、理不尽な東京電力の態度を告発しながら、東京電力への賠償請求を積み上げてきました。これまで、14府県連と日販連が31億3000万円を請求し、27億円以上の賠償を勝ち取りました。

 決議案では、賠償請求の教訓を4つに整理しました。放射能被害は泣き寝入りすれば離農の契機となる最大の農業つぶしですが、請求してたたかわなければ実現しません。被害を受けた会員や農家が、自ら被害額を計算し、怒りをもって東電に請求し、農民連組織は援助することに徹したことが運動を前進させる大きな力になりました。

   (3)農民連食品分析センターへの放射線測定器導入の取り組み
 食品分析センターに高性能な測定器を導入できたことは重要な成果でした。募金は目標を大きく突破して7000万円を超えました。ご協力いただいた農民連内外のみなさんに心から感謝申し上げます。これを契機に食品分析センターは11月から念願の法人組織として出発することになりました。分析センターが社会的役割をさらに果たせるよう態勢をしっかりと構築します。

  (3)組織拡大について

 10年ぶりに会員数で前大会を上回って大会を迎えることができました(拍手)。1989年の農民連結成以後、農家戸数はほぼ半分に減りました。農民連も残念ながら離農、死亡などで新規加入者を超える減が続いてきました。前進はわずかではありますが、前進に転化して大会を迎えたことは重要な成果です。

 2年間に1483人の会員を迎え、16県連が前大会よりも会員数を前進させて大会を迎えました。もっとも会員を増やしたのは、原発事故の最前線でたたかった福島県連です。奈良県連も引き続き前進しています。茨城県連など、会員現勢の大きい拠点県連での前進とともに、福井県連、島根県連など、会員数の小さい組織でも希望ある前進がはじまっています。

 こうした前進があるとはいえ、2000年11月の過去最高現勢に比べれば、5000人程度後退しています。新聞「農民」も5000部余り後退していることは直視しなければなりません。

 組織の問題点として、農民連結成を前後して、「春の大運動」で200〜300人を拡大するなど、飛躍した組織がいくつもありました。しかし、その後、なかなか前進できない壁がありました。

 それは、きちんと事務局を持って、組織した仲間を単位組織に結集をして、要求に基づいて自主的・自発的に運動する組織に十分なりえていないということです。組織の建設に十分成功していない組織が、ずっと幹部の奮闘で支えられ、だいぶ高齢化して、困難がさらに増しているところもあります。多くの組織が産直事業との両輪で組織を支えていますが、組織と事業に熟達した幹部が不足しているなどの課題もあります。そして何よりも多面化する農民の要求に応えられる力量をどうつくるかも問われています。

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(新聞「農民」2013.2.18付)
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2013年2月

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