日本農業を異次元の総自由化に
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第1に、日本側の協定付属書には「アメリカは将来の交渉において農産品に関する特恵的な待遇を追求する」という異常な条項があります。これは「今後も農産物で譲歩を迫る」というアメリカの 強い意志を示したものであり、安倍政権はこれを受け入れたのです。
第2に、共同声明には「協定が発効して4カ月後に関税などで再交渉する」と書かれています。TPPでは「発効から7年後に見直す」という規定になっていたのに対し、4カ月後に再交渉する!――これはTPP超えの大幅な譲歩といわなければなりません。
第3に、政府対策本部の責任者は「もう農産品というカード(取引材料)がなくなったのでは?」との記者の質問に対し、「いや、農産品カードは残っている。農産品の関税撤廃率は40%以下なのだから」と答えています。
これは、米を筆頭にした「60%以上」の関税撤廃をしていない農産品を差し出すという宣言にほかなりません。
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首相官邸前で日米FTA反対を訴える農民連の仲間たち=10月3日 |
選挙モードのトランプ大統領に頼み込み、同氏の地盤が産地であるトウモロコシ275万トン“爆買い”の見返りに、地盤ではないカリフォルニア米5〜7万トンを除外してもらって体裁をとりつくろったものの、今後は「自動車のために米も差し出す」という密約の存在さえ疑わせるもので、「安心」どころではありません!
しかも輸入急増から国内生産を守るためのセーフガード(緊急輸入制限)は、大骨も小骨も抜かれることが協定から明らかになりました。カラクリは二つ。
図のセーフガード発動基準数量61万トンは、TPP12で定められたアメリカを含む数量ですが、TPP11交渉で日本が何も言わなかったため、アメリカが抜けてもそのまま。これに、アメリカ向け数量を24万トン追加したので、二重計上状態です。
政府はTPP11諸国と再交渉するとしていますが、相手は拒否しています。そうなれば、TPP11向けセーフガードは未来永劫に発動されないままになる――これが第一のカラクリです。
第2のカラクリは、アメリカ向けセーフガードです。貿易協定のとりきめでは、セーフガードが一度でも発動されれば、ただちに「発動水準を一層高いものに調整する」ことが合意されています。TPPでは、発動基準数量の見直しは7年後。これも大幅譲歩であり、セーフガードは全く役立たずの「抜けがら」になってしまいます。
アメリカは牛肉輸入枠を1トンも増やさず、日本には関税9%とセーフガード無力化を押しつけ、36%に下がった牛肉自給率をさらに引き下げさせる――不平等協定そのものです。
「今後の交渉次第」を「撤廃約束」にすり替えたうえ、自動車・部品の関税が撤廃されたことにして「GDP(国内総生産)が0・8%押し上げられる」という政府試算を発表する――見え透いたウソで、国民をだますのもいいかげんにしろ!といわなければなりません。
しかし、協定本文には「協定のいかなる規定も安全保障上の措置をとることを妨げない」と明記されています。「安全保障」はトランプ追加関税の最大の口実。トランプ大統領が、自動車への追加関税適用という強力な武器を振りかざしながら、「第2ラウンド」で、米を含む農産物市場のいっそうの開放や日本の医療保険・薬価制度の見直し、食の安全にかかわる規制の撤廃、金融・共済の規制緩和などをゴリ押しすることは必至です。
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富山・富山市 金崎美穂子 |
大阪・松原市 関戸しげみ |
[2019年11月]
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