「農民」記事データベース20020610-542-02

「農地と地域農業守る」

特集 農業委員会

―各地のとりくみから―

関連/産廃埋め立てやめさせた
  /地道に多彩な役割発揮
  /「農家の声を実現したい」
  /農民連会員が会長に
  /農業委員選挙 地域農業守る大切な機会
  /女性の要求をさらに反映/三期目の選挙に全力で挑戦


地道に多彩な役割発揮

茨城県・藤代町農業委員会

 「みんなでまじめに話し合って、地域の農業を発展させる」――茨城県藤代町の農業委員会の取り組みは、地味で地道、かつ多彩。まさに“農民の議会”です。東京から一時間、水田の広がる藤代町を訪ねました。

 学校給食に地元の野菜を

 「農産物の販路を広げてほしい。学校給食に地元の野菜が供給できるようにならないだろうか」――こんな声が出てきたのは農業委員会初の試みだったという「認定農業者との意見交換会」でのことでした。これを機会に昨年十一月、農業委員会として「学校給食の食材調査」を教育委員会に申し入れました。

 「子どもたちに地元の農産物をいかに供給するか。大事なのは、学校給食をきっかけに輸入食品の問題や安全性などを、どれだけたくさんの人と議論し合えるかだと思います」と言うのは農業委員(農政常任委員長)で、茨城県農民連会長の横田千之(せんし)さんです。

 先進地域視察や対話を通じて

 農業委員会だけでなく給食センター長や栄養士、農協も交えて話し合いを持ったり、農業委員会で学校給食の先進地、福島県熱塩加納村も視察しました。藤代町の学校給食は直営センター方式。話し合いのなかで、昼までに三千食を調理しなければならない給食センターの実情も出され、今後は調理員さんや、PTAの皆さんとも話し合っていく方向です。

 ちなみに、県南農民組合では消費者との交流が発展して、先月から東京・練馬区の小中学校へタマネギの出荷が始まりました。タマネギの生産者で農業委員の椎名俊英さん(県南農民組合員)は「いまは輸入ものを使わなくても、地元のタマネギも暴落している。藤代でも地元の農産物が学校給食に入れば、子どもたちにも安全なものが食べさせられるし、農家も助かる」と抱負を話します。

 農地転用の問題でも、藤代町の農業委員会は農業・農地を守るために重要な役割を発揮しています。九八年には「藤代町農地転用に関する指導要綱」を制定。「(転用地に)隣接する土地所有者の同意」や「排水」「日照、通風」など農地を守るための方策も盛り込まれました。

 まじめに話し合うからこそ

 このようななかで藤代でも、いま全国的に増えている建設残土の埋め立ての問題がでてきました。町の北部、牛久沼付近の水田は農業機械が埋まってしまうような湿田で、近年は耕作放棄などが増えていましたが、ここに観光梅園への転換申請が出されたのです。不動産屋を兼業する農家からの申請でしたが、計画書類は特に問題がなく、最初は許可されました。

 ところが拡幅申請が続いたため、参考人として農業委員会に呼んで詳細を調べるうちに、建設残土で埋め立てることが判明。「そんなことは困る」と農業委員会でも異論が噴出して、以降の申請は不許可。「まじめに話し合う」農業委員会だったからこその対応でした。

 土木工事の測量技術者だった経験もある椎名さんは「申請のやりようで本来認められないような農地転用が許可されてしまうのを見てきた。合法的であっても農地をつぶすのが目的の転用もあるので、みかけでなく、内容をよく調べることが大切ですね」と言います。

 同農業委員会では、「WTO協定への意見書」や「セーフガード発動と米の値幅制限の復活を要求する建議」なども採択。「“農業を守るのが農業委員会の役割”という大筋は、みんなが一致できること。まじめに話し合う農業委員会になったのは、農民組合員の委員がいるというのも大きい」と横田さん。現在、藤代町の農業委員二十二人中、農民連組合員は六人、「農民」読者が十九人。横田さんは言います。「積極的に農業委員になって発言することは、地域の農業を守る大きな力になります」。

(新聞「農民」2002.6.10付)
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2002年6月

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