「農民」記事データベース20050606-686-06

米国政策は危険を消費者に押しつける。
全頭検査が最大の予防措置です

アメリカ消費者運動活動家 ロドニー・レオナルド氏


 アメリカ農務省の大臣補佐次官や消費者問題局次長を歴任。現在、生活栄養研究所所長、農業・貿易政策研究所(IATP)理事


関連/BSE問題 大丈夫かな?
  /米国政策は危険を消費者に押しつける。全頭検査が最大の予防措置です
  /全頭検査を危険部位の除去との組み合わせがリスクを最低限にできる


 私が最初に強調したいのは、予防することの重要性です。そして、BSEに関しては、全頭検査することが最大の予防措置だということです。

 ではアメリカの政策はどうかというと、危険はあって当然という政策です。その危険を消費者に押し付けながら、食肉産業がもうけるという構図になっています。

 日本は、すべての牛の検査を政府が責任をもってやっています。一方、アメリカでは、食肉の安全確保は企業にゆだねられています。

 現場で検査せず

 たしかにアメリカに食肉検査官という人たちがいます。しかし、食肉検査官は現場で食肉を実際に検査することはありません。アメリカ政府の食肉政策に従うと約束して、事業許可を得ている業者が、安全基準を守っているという当然の前提のもとに、それをチェックするのが検査官の役割なのです。

 ですからアメリカ政府が“BSEのリスクはない”“アメリカの牛肉は安全だ”と言うのは、それを検査で確かめたからではなく、安全だという仮定にもとづいていると言わざるをえません。

 みなさんの最大の関心事であり、私に与えられた最大のテーマは、「アメリカの牛は本当に安全なの?」という問いに対する答えです。しかしそれは複雑です。

 確実に言えることは、日本の牛肉の方が、アメリカの牛肉よりもずっと安全だということです。日本は全頭検査をやっているのですから。

 アメリカの食肉検査制度は、ずっと改悪されてきました。その結果、家畜の疾病やそれに由来する食品中毒が、ここ数年急増しています。さらにアメリカの会計監査院はここ十年間、政府の食肉検査の状況は「消費者の安心を得るのに不十分だ」と言い続けています。また、食肉検査官のOBの人たちも、食肉業界で現在起きている状況は目を覆わざるをえないと報告しています。

 業界ががっぽり

 アメリカの食品安全行政は、一九八〇年代から規制緩和がどんどん進みました。これに対して、安全対策の強化を求める意見があるにはありましたが、政府はそれを聞く窓口をすべて閉ざしてきたのです。

 BSEと変異型ヤコブ病に対して政府が今とっている政策は、科学的にそれを解決するという方法ではありません。政府は政治的に解決する方法を選びました。

 なぜアメリカは、日本の全頭検査をやめさせ、輸入を解禁するよう圧力をかけるのか。それは、食肉産業のもうけのためです。

 BSEの発生で二〇〇四年の牛肉輸出量は八〇%落ち込み、二十億ドルの損失が生まれました。アメリカ産牛肉の輸出先は、日本が三五%、韓国が二〇%を占めています。日本と韓国が輸入を再開すれば、牛一頭当たり六十五〜六十七ドル上がると見積もられています。

 つまり、日本や韓国の消費者に危険を押し付けて、食肉業界はがっぽりもうけるというわけです。ただしこのもうけは、牛を飼っている畜産農家や小さな食肉業者には回ってきません。

 運動が米に影響

 日本にとってもアメリカにとっても、最善の解決策は、日本の全頭検査をアメリカも見習うということです。それは、分別をもって考えればすぐにわかることです。

 みなさん、ぜひ、日本政府に全頭検査を続けるよう働きかけてください。そのことが、アメリカの安全対策の強化につながると確信しています。

(新聞「農民」2005.6.6付)
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2005年6月

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