「農民」記事データベース20101122-950-11

TPP参加と食料自給率向上
絶対両立しない(4/4)

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新たな段階に入った民主党のFTA・自由化戦略

戸別所得補償は“欠陥商品”

 “欠陥商品”といわざるをえない戸別所得補償で、自由化の被害を救えばいいという議論が政界にもマスコミにも横行しています。しかし、(1)農水省の篠原孝副大臣は、現在の農水予算の2倍にあたる年間4・8兆円が必要になると試算していますが、この予算の確保はとうてい不可能です。(2)戸別所得補償の欠陥はもっと肥大化します。(3)所得補償は、結局は自由化の見返りの“手切れ金”にならざるをえません。


 第1段階

 民主党は2009年8月の総選挙で、マニフェストに日米FTAの「締結」を明記しましたが、農民と国民の強い反発を受けて“農業を守ることを前提にしてFTA交渉を進める”政策に“修正”しました。

 しかし、政権交代後、オーストラリアとのFTA交渉を再開し、さらに、日中韓FTAの促進を決めました。さらに12月30日の「新成長戦略」では、「成長するアジア市場を日本企業の大きなビジネス機会にする」ことをねらって、アジア・太平洋レベルのFTA推進戦略を中心的な方針として打ち出しました。

 第2段階

 菅政権になって、アメリカ・大企業との一体化はますます深まっています。それを象徴するのが、6月18日に決定された「新成長戦略――『元気な日本』復活のシナリオ」です。

 その中心は、日本の多国籍企業のアジア・世界進出と農産物輸入自由化戦略の切り札として、EPA・FTAを推進する戦略です。「韓国に負けるな」という号令のもと、自民党政権以上にFTA推進に熱中しています。主な内容は、(1)APEC(アジア太平洋経済協力会議)21カ国を対象にするFTAAPを結ぶことを中期目標に、(2)日豪、日韓、日ペルーFTAの早期締結、(3)日中韓のFTA共同研究は2012年に終えて交渉に入る、(4)日米FTAは経済連携のあり方を検討し、(5)APEC域外のインドやEUとの交渉も進めるというもの。ただし、この段階ではTPPは明記されていませんでした。

 一方、日本経団連は6月15日に「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」という提言を発表。これは民主党政権の「新成長戦略」とそっくり同じものです。違いは、政権の「新成長戦略」が妥結時期をぼかしているのに対し、日本経団連の提言は実施時期を明示していることです。もう一つ、大きな違いはTPPの扱いでした。

 第3段階

 菅首相は国会での所信表明演説(10月1日)で「(APEC諸国の)架け橋として、EPA・FTAが重要です。その一環として、TPP等への参加を検討し、FTAAP構築を目指します。東アジア共同体構想の実現を見据え、国を開き、具体的な交渉を一歩でも進めたい」と述べました。そして、10月8日の「新成長戦略実現会議」では「包括的経済連携に関する閣僚打ち合わせ」の結果を報告しました。

 その内容は、(1)TPPまたは日米二国間交渉を通じて、日米FTAを結び、これを市場開放、大胆な経済改革の「起爆剤」にする、(2)日米FTA(TPP)を他のFTA推進のテコ(レバレッジ)にする、(3)日米FTA(TPP)となれば、高い水準の自由化が求められる。農水産物の完全自由化を行う意思を表明し、それに伴うコスト(犠牲)を受け入れる覚悟で臨む―というもの。

 「乗り遅れるな」とあおりたてる財界の要求にこたえ、TPPを推進するアメリカに迎合して、「乗ってはならない」危険な自由化の道にのめりこむことなど絶対に許されません。

 第4段階

 11月9日に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」では、自ら進んで「すべての品目を自由化交渉の対象」にすることを宣言しました。そして、各国・地域と経済連携を推進するため、締結前から先行して(1)農業(2)人の移動(3)規制制度について「国内改革」を行うと強調しています。また12日には、欧州連合(EU)とのEPA交渉開始も打ち出しました。

 菅内閣は、APECの議長国の立場を足場にさらに自由化を推し進め、「高いレベルの経済連携」を掲げて日本の農業に打撃を与え、雇用・地域経済を崩壊させようとしています。

(新聞「農民」2010.11.22付)
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2010年11月

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