新聞「農民」
「農民」記事データベース20180528-1312-11

地元産の食材で安全な学校給食を
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食材の77%が道内産

食育意識して
人と人とのつながり大切に
北海道 札幌

 北海道札幌市の小中学校給食では、道内産を中心とした地産地消の給食やフードリサイクルなど、食育の取り組みを行っています。札幌市教育委員会と札幌市学校給食会に取り組みをうかがいました。

 小中学校や特別支援学校など、1日に約13万4000食の給食を提供していますが、食材の77%が道内産です。23JAから29品目を調達。札幌市内産は玉ねぎや小松菜が多く使われています。

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イモ掘りを行う子どもたち(札幌市学校給食会提供)

 道内産、国産食材の比率増加

 もともとは「北のクリーン農産物表示制度(Yes! Clean)」や減農薬栽培の食材を使うところからスタートしました。2008年頃から富良野産食材を使い始めたことをきっかけに、道内産、国産食材の比率を増やしていきました。

 「基本的に食材は札幌市の中央卸売市場を通じて納入してもらいます。冷凍も含め野菜に関してほとんど輸入食品はありません。どうしても調達できないものに限って輸入物を使っています」と話すのは給食会の羽川希世志事務局長と業務課の佐藤千代さんです。

 札幌市では親子方式による給食の提供を行っており、184校で給食を作っています。「各校の状況が様々で異なり、子どもたちに温かいものは温かく、冷たいものは冷たいまま提供し、おいしい給食を食べてもらいたい」という思いでこの方法を採用しています。

 「身近に給食を作る調理員などがいることで、作っている人への感謝など、人としての成長を大切にしたい」と話すのは、教育委員会生涯学習部保健給食課栄養指導担当の本間ひとみ課長と先野恵係長です。

 「栄養教諭から『子どもたちも調理室の窓から調理の様子をよくのぞいている』『子どもたちが給食を楽しみにしている』と聞いています」と評判も上々です。

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フードリサイクル堆肥で栽培をした玉ねぎ(札幌市教育委員会提供)

 給食にいいもの使っていたのね

 保護者をはじめ市民に情報発信も行っています。教育委員会のウェブ上で食材の産地のリストを公開。各学校では給食だよりで保護者に情報を提供し、札幌市学校給食会の主催で年一回、札幌駅コンコースで学校給食展を開いています。また、札幌市学校給食会では「クリーン野菜産地親子見学会」を開催しJAふらのの協力でイモ掘り体験などを行っています。「参加した保護者から『こんなにいいものを給食に使っていたのですね』と驚かれることもありました」

 食材の安定確保が一番の課題です。「必要量が多いので、産地の生産量と契約量の比率には気を使っています。輸送費の高騰や生産者、生産量の減少、機械化に伴う品目のシフトなどで調達が難しくなっています」と苦労もあります。

 必要量の確保に協力してくれる

 こうした取り組みを続けていくために大切なのは生産者などとの「人と人とのつながり」だと言います。「基本的にその食材を使わなくならない限り、契約は継続します。生産者の方も誰が食べているのか、どのように使われているのか話をすると喜んでくれますし、必要量の確保にも協力を頂いています」

 「天候とともに、産地が維持できるのかが心配です。生産者が少しでも減らないでほしい」と佐藤さん。「予算はタイトですが、少しでも道産や国産の比率を上げていければ」と語ってくれました。


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東京都日の出町 折田ナナ
 
埼玉県北本市 諸川トミ

(新聞「農民」2018.5.28付)
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