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農民連青年部が第32回総会

食と農の未来考える学習会
駒澤大学・姉歯教授
さまざまな立場 深い交流が実現

駒澤大学・姉歯教授

 3月19、20の両日で農民連青年部が総会を開きました。初日の19日は東京都世田谷区にある駒澤大学キャンパス内で開催しました。

 経済学部の姉歯暁(あき)教授の協力で実現し、「食と農の未来を考える学習会――地場産給食で食料クライシス(危機)をぶっとばせ!」と題して、20~40代の生産者、流通業者、農民連専従者らが集まり議論しました。

国内農業こそが真の安全保障

 姉歯教授のもとで「地域の人々がそこで暮らし続けられる社会の在り方とは」を研究するゼミ生の皆さんも参加し、自分たちで行った研究の発表と合わせて一緒に議論しました。

 姉歯教授による講演では、輸入原料に頼る日本の食料事情はとても脆弱(ぜいじゃく)で、海外から入ってくる食品についての危険性も高まっていると指摘。TPP(環太平洋経済連携協定)によりさまざまな食品添加物の規制や残留農薬基準が緩和され続けているとして、「国内農業こそが私たちにとっての安全保障になる」と述べました。

 そして国内農業を考えていく中で、学校給食を通じて食と農をつなぐ取り組みが重要になると指摘し、ゼミ生につなげました。

給食の民営化で生じる弊害探る

研究発表をする姉歯ゼミの皆さん

 姉歯ゼミの皆さんは、学校給食の民営化の課題について、新潟県五泉(ごせん)市で行った研究を発表。五泉市ではセンター方式から全公立小中学校での自校方式への転換を2015年に達成しています。

 しかし、現市長と前市長のもとで学校給食の民間委託化が進められ、24年度には全校で民間委託に移行することが決定。学生たちは実地調査をもとに、民営化によって生じた弊害を探りました。

 「実際に調査をすると、賃金格差を利用した経費節減の実態があり、調理員のパートタイム化が農家への負担増につながっていた」と発言しました。

 自校方式を進めた当時の市長が掲げた「食農教育の実践」、「生産現場と調理現場をつなげる地域活性化・農業振興」などが損なわれる実態があったことを報告しました。

農民連青年部 第32回総会開く
地域での経験や思いを交流
青年部再興の決意固める

学校給食は自校式で栄養・調理は公務でこそ

グループに分かれて取り組みや思いを話し合いました

 姉歯教授は「学校給食は子どもを中心に家庭・農家・地域が関わるが、そこには直接関係がないように思える地域住民も相互につながる有機的な役割がある」と説明。しかしこれらが機能する大前提として「自校方式で栄養士と調理員が公務の立場で雇用されていることが重要」として、「国は学校給食に関わる予算を増やさないといけない」とまとめました。

おいしい野菜 給食提供に誇り

 奈良から県農民連産直センターの小林陵平さんと、天理市の農家の原澤康治さんが登壇し、実際に学校給食へ農産物を納品している現場の声を伝えました。

 小林さんは地場産品の積極的導入などについて「縦割り行政の難しさが大きい」と発言。その中で粘り強い要請や提案で少しずつ前進している取り組みを紹介しました。7年間有機のニンジンを学校給食に卸している原澤さんは「市として供給計画を出してほしいなど要望は様々ある。それでも子どもたちにおいしい野菜を提供している誇りを持ってこれからも続けていきたい」と発言しました。

 「私たち夫婦も地元の学校給食に食材を提供したいと考えている」、「若者が抱く農家の“つらい、稼げない”というイメージを自分自身の農業経営で取り除きたい」。参加者それぞれの立場や思いで、質問や意見を出し合い討論して初日を終えました。

夏の学習交流会再開を総会で24年度の方針採択

 20日には農民連本部で総会を開催。平間徹也青年部長は開会あいさつで「コロナ禍で活動が停滞していたが、ようやく元のような形で開催できた。若手農家の受け皿となれるように活動をしていきたい」と述べました。

 農民連本部からは長谷川敏郎会長がオンラインであいさつ。「農村で活動する青年に積極的に声をかけて、農村の姿を議論していくことが大切だ。地域に仲間がいて初めて農業ができる。国内農業を守るという原点を踏まえながらしっかり活動してほしい」と呼びかけました。

 全労連青年部の稲葉美奈子書記長も参加しました。「知って、変えようと行動することで初めて社会を変えていける。運動が政治を変える力になっていると実感している。公正な価格で農家から農産物を買う。それができる賃金に引き上げる。みなさんと交流しながらがんばっていきたい」とあいさつしました。

能登地震支援で青年部員が奮闘

報告をする渡辺事務局長(左から3人目)

 幹事会から渡辺信嗣事務局長が決議案を提案。物価高騰や相次ぐ異常気象と災害、高齢化など厳しさを増す国内農業の実態の中で行われる食料・農業・農村基本法の改定案が、害悪だらけのひどい内容であると批判。能登地震の被災地支援にも各地の青年部員が奮闘していることも述べて、「なんとしても夏の学習交流会を再開させて、全県での青年部確立へ再出発しよう」と報告しました。

行動すれば必ず会員をふやせる

 討論では参加者全員が発言しました。「持続化給付金の取り組みで一気に200人会員が増えた。行動すれば増えるという自信が持てた。声を上げないと伝わらない。孤独に悩んでいる青年農家はたくさんいると思う。積極的に活動して農民連を知ってもらいたい」(山形県・阿部佑一さん)

 「国が予算を出さないで農業の再建はできない。地元で仲間を集めて、米1ヘクタールを耕作すれば300万円の売り上げが保証できるような制度を作ってほしい、と市に要望を出す計画をしている。これは他の農家の支援策にも波及していくと思う。ぜひ実現させたい」(奈良県・原澤康治さん)

 「お茶は一人では作業ができず、人を雇用している。高齢化で人手不足が顕著になっている。注目されても人がいなければ農業は続けられない。どうやって人を見つけ、家族を持てるような給料で働けるようにできるか、考えていきたい」(京都・植田修さん)など、積極的な発言で討論は大いに盛り上がりました。

もっと周りに訴えていこう

 まとめで平間部長は「これから社会に出る学生とつながり、農民連や青年部の活動を知ってもらうことが長年の課題だったが、ようやく実現できた。やっぱり会って話さないと盛り上がらない。もっと周りに訴えていこう」と夏の交流会で再会すること呼びかけ、全会一致で議案を採決しました。

 新役員は次の通り

 部長=平間徹也(再、宮城)、副部長=山村聡(再、群馬)、事務局長=渡辺信嗣(再、本部)、会計=小田川遥平(再、分析センター)、幹事=阿部佑一(再、山形)、植田修(再、京都)、関根耕太郎(再、埼玉)、会計監査=梅澤準(再、千葉)、八田純人(再、分析センター)