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いま注目 オーガニック給食 ―4―

新城農民連代表 白井倫啓(みちひろ)(寄稿)
学校給食に有機米導入を求める請願
愛知・新城市議会が採択
住みたい地域づくりに大きな力、励ましにも

市民団体「しんしろ旬のひろば」が開催している野菜市の様子。野菜市のメンバーも市役所へ行ったり、署名を集めたりと、請願採択の活動に取り組みました

 各自治体でオーガニック給食を求める請願が議会で採択されています。愛知県新城市では昨年12月に採択されました。新城農民連代表の白井倫啓さんに寄稿してもらいました。

有機農業の流れ ますます大きく

 長年、慣行栽培を是とした農業が推進されてきたが、地域農業は衰退の一途である。一方、世界的に有機農業が注目されてきている。注目されてきた背景には、食の安全、環境に配慮した農業を求める世論の動きがある。各種がんの増大、学習障害児・認知症の増加、生態系の貧弱化など、農薬の影響を心配する世論も後押ししている。オーガニック給食は全国的に取り組まれ始め、有機米100%給食をわずか4年で成し遂げた千葉県いすみ市は全国の注目を集めている。

 農林水産省も「みどりの食料システム戦略」を掲げ、2050年までに有機農業ほ場を25%まで拡大するという大きな目標を掲げている。有機農業の流れは、今後ますます大きくなると予想できる。

17人のうち13人の賛成で成立

 僕の住む新城市の杉山地区に組織されている杉山生産組合(組合員65人)では、有機農業の流れに乗り、地域農業再生に踏み出した。

 杉山生産組合は、稲作を中心として組織され、国などの支援を受け、将来に向けて安定した稲作を夢見て、さまざまなほ場整備を行ってきた。山間地の新城市であるが、杉山生産組合の所有する田の栽培条件は、他地域と比べて格段に優れている。それにも関わらず、高齢化、後継者難で先が見通せない状況である。

 新城市が学校給食センター建設に動き出し(今年9月稼働予定)、これまで学校ごとの食材調達が、教育委員会が責任を持つという形に変わることになった。

 新城市では、学校給食課を立ち上げ、食教育の方針を定め、学校給食を「食育」の場として検討を始めた。そこで、杉山生産組合では昨年1年間、生産組合として、世界・国内の有機農業の流れを押さえ、いすみ市の成功事例にも学び、市役所関係部署(学校給食課、農業課、市民福祉部など)、農協との協議を続けた。

 そして、昨年の12月市議会に「学校給食に有機米導入を求める請願書」を提出した。市役所関係部署、農協との協議の中では、有機農業の流れが来ているという感触を得ていたが、議会の採択には不安を感じていた。しかし、ふたを開けてみれば議員17人のうち13人の賛成で採択された。

学校給食への納入実績を広げ

 これまでの米作りでは先が見えなくなっていた生産組合が、有機農業という付加価値をつけた米作りに将来をかけてみることになった。しかし議会の採択という大きな後押しがあるものの、まだ正式に学校給食への有機米導入が決まったわけではない。まずは、有機米づくりを続けていた農家と協力し、学校給食への納入実績を広げ、仲間に広げていくことで動き出す。

 何とか早期に学校給食への有機米導入に目途をつけ、学校給食という付加価値のついた価格、安定した販路、将来を担う子どもたちの食育への責任などを出発点に、有機米の生産技術の蓄積と生産量の拡大を実現させていく。

市内外への販路拡大づくりも

 目指すは学校給食の先にある、市内外への販路拡大である。そのための仕掛けづくりも始めている。安全・安心は当たり前、さらにさまざまな付加価値を追加していく。「住んで良かったまち」「住みたいまち」「訪れたいまち」づくりを進めていく。山を守り、川を守り、ホタルが飛び交う地域づくり、木質バイオマス、水力・太陽光などの再生可能エネルギーを活用したエネルギー自給の地域づくり、6次産業が根付く地域づくりなどを続け、新城市の有機米の付加価値を上げていく。

 簡単には実現できないが、実現できれば全国の農村を励ますことになると確信している。