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私は言いたい~食料自給率向上へ~

自給率アップと安全な食料で子どもたちの健康守りたい
第1回 茨城 常陸農業協同組合
組合長 秋山 豊さん
日本の種子を守る会会長
全国オーガニック給食協議会副代表理事
課題から逃げた改定案

 「食料・農業・農村基本法」改定の国会審議が始まりました。今回の改定で国民が一番注目したのは、ウクライナ危機や新型コロナ禍、異常気象、円安などで食料への不安が高まるなか、「食料自給率38%をどうやって上げるのか、食料安全保障をどうするのか」という課題でした。

 ところが、改定案は、緊急時の食料調達法案は入りましたが、平時の食料自給率アップの課題から逃げてしまい、食料や肥料の原料はこれまで通り7割~9割を海外から調達する政策です。食の未来は昆虫食や人工肉など食品産業のもうけの道具になってしまったと言っても過言ではありません。

 私たちの農協は2度の原発事故を経験しました。1999年の東海村JCO臨界事故、そして2011年の福島第一原発事故です。双方とも1週間ほど電気と水が使えない事態になりました。コンビニやスーパーにも食料がない。県庁からは避難者や被災者に対して炊き出しをするよう要請されましたが、肝心な精米がない。

 タイ米を輸入した平成5年の大凶作(作況74)では米の買い占めや売り惜しみが起きました。米でさえ、そういう事態ですから、国内で自給することがどれだけ大事かがわかると思います。

待ったなしの農業担い手対策

 改定案の問題点の2つめは、農業の担い手対策が何らとられていないことです。高齢化や担い手不足、農業資材、雇用労賃の高騰などで全ての農家で経営が厳しく、現場の生産力が落ちています。

 そこには手を打たず、金のかかるスマート農業や輸出を進める。法人などの経営が主体で、持久力のある家族経営は邪魔だと言わんばかりです。大・中・小規模、中山間部、離島の農家を支援し、多様な担い手を育成しなければなりません。

有機給食を広げ種子の自給を

 食料は、消費者にとっても大事な問題です。6つの生協が3月に「国内農業を守り、食料自給率向上にむけて」とする提言を発表し、意見交換を行いましたが、農協グループも今こそ消費者の期待に応えなければなりません。消費者・市民は、安全な食料で子どもたちの命・健康を守りたい、という強い願いを持ち、そのことが、オーガニック給食の広がりに結びついていると思います。

 自給率を上げるためには、種子の問題が大事です。農家が自由に採種し、増殖できなければ、輸入された農薬まみれの遺伝子組み換え大豆やトウモロコシばかりになってしまい、結局は自給率が下がることになってしまいます。改定案にも種子の問題を盛り込んでほしいと要望しています。

 今回の改定案は、食料不安の課題を一切解決していません。食料自給率の目標を設定し、国内生産の増大をめざすことが必要です。改定案を根本的に変えるためにも、農家、消費者などの国民的な共同を広げ、大きな運動を展開したいと願っています。