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いま注目 オーガニック給食 ―5―

討論する参加者のみなさん

 全国オーガニック給食協議会研修会は2月1日、東京都武蔵野市で全国オーガニック給食協議会研修会「理想の給食を目指して~献立に有機食材を入れるのが先決」を開きました。開会あいさつを同協議会代表の太田洋・千葉県いすみ市長が行い、有機給食の広がりは、「子どもたちには健康によく栄養豊かなものを食べてほしい」という保護者の願いとともに、「農業志望者が就農し、食料自給率を上げて農業を再興するという農業者の願いが一致したもの」だと述べました。「この流れを全国津々浦々に広げ、実現に向けて努力しよう」と呼びかけました。

全国オーガニック給食協議会 研修会開く

基調講演
学校給食地産地消食育コーディネーター 杉木悦子さん
一人一人が豊かになる給食を
理想の給食をめざして各地の事例を交流
食料自給率を上げ農業の再興を

 学校給食地産地消食育コーディネーターの杉木悦子さんが、「一人ひとりの子どもが豊かに自立できる学校給食とは~オーガニック給食から考える~」のテーマで基調講演。地産地消を基盤とし、子ども一人一人の育ちを考える学校給食は教育だと強調。自分の住んでいる地域を知り、好きになることで、食べものの好き嫌いが減り、食べ残しも減った経験を報告しました。

 調理方式も自校方式が教育的に望ましく、子どもの実態に合わせた食教育が給食室でできることを語り、地域食材を中心にした給食の献立にすることで、生産者が働いている様子や作物の育ちを知り、「土について学び、種をまいて育て、収穫し、料理して皆で食べるという食教育の基礎がここにある」と述べました。

 オーガニック給食が、地域の自然と共存する有機農畜産物を取り入れ、地産地消でできる豊かな社会をつくることを目的にしたものだと強調。今後の課題として、(1)小中学校、高校、大学の教育課程に食教育、農畜水産教育を取り入れる、(2)自校給食化や栄養教職員の1校1名の配置、(3)農業生産者の収入の安定、(4)農畜水産物の「種」の確保――などをあげました。

 さらに「農業は国の基盤として位置づけ、“自給自足”、安全で豊かな食生活ができるように食料を確保することが大事だ」と提案しました。

東京都武蔵野市
安全な食材選びと手作り調理を

 事例紹介の1つめとして、東京都武蔵野市の北原浩平さん(武蔵野市給食・食育振興財団理事長)が「安全な食材選びと手作り調理の学校給食、now (ナウ)&then (ゼン)」と題して報告。市の学校給食の特徴として、(1)安全に配慮した食材等の厳選、(2)献立のこだわり、(3)手作り調理のこだわりをあげ、「献立作成と調理の指針」として公文書で定めていることを紹介しました。

 食材については、1970年代からの歴史を振り返り、マーガリンをバターに変更し、無農薬の米・野菜の使用、低温殺菌牛乳の採用などの経緯を振り返りました。

 さらに、有害またはその疑いのあるものは避けることを徹底し、米は有機・無農薬・特別栽培のものを優先。パン・麺は国産小麦。非遺伝子組み換え飼料、抗生物質不投与の国産鶏卵を使用し、野菜も市内産を優先的に、乾物も添加物無添加のものの使用を基準としています。

 市は、市内産野菜の採用と生産者の紹介に尽力。献立も週5日のうち米飯3回、パン1回、麺1回提供しています。

 最後に、自分の子どもなら何を食べさせるかを問うこと、顔の見える関係を大切にすること、欠くことのできない仕事としての誇りを持ち続けることなどを強調してまとめました。

静岡県袋井市
子どもの健康を支える給食とは

 事例紹介の2つめとして、静岡県袋井市の石塚浩司さん(市おいしい給食課おいしい給食推進係)と鈴木萌夏さん(おいしい給食課管理栄養士)が「日本一みらいにつながる袋井市の給食~日本一健康文化都市を支える日本一の給食~」のテーマで報告。

 袋井市では3つの給食センターから給食が提供されていることを述べ、子どもの食事調査を実施し、献立作成、調理の参考にしています。

 デザート、魚などの原材料は10種類ほどを実食して選定。徹底した衛生管理、「使用する野菜の3分の1は市内産」を目標にした地場産物の積極的活用で野菜の提供量が増加したことを語りました。

 さらに食品ロス解消の取り組みでは、いため玉ねぎやトマトピューレなどで規格外農産物を活用し、野菜くずの堆肥化も実施。食物アレルギー対応では対応委員会を設け、対応食を提供しています。市内産野菜の収穫体験など食育活動も推進しています。

 「素材から手づくりすることで、袋井でとれた野菜を使用しやすくなる」と手作り給食の効果を語りました。

長野県松川町
つくり、届ける自校給食

 事例紹介の3つめは、長野県松川町。木下めぐ美さん(町立松川中央小学校栄養士)は「『つくる』ことで『とどけたい』地域の思いを自校給食で」と題して報告しました。

 地産地消を模索するなかで、新型コロナ禍により一斉休校で給食がつくれない事態になり、そこから町の農家で発足した「ゆうき給食とどけ隊」のマップを作成し、その食材を生かすメニューを考えるに至った経緯を説明。給食室でもオリジナルレシピを考え、試作を繰り返しながらオリジナルメニューが誕生しました。

 有機野菜・米をとり入れることで、給食室職員が作ることへの「こだわり」と「作ることの意味を知る」ことで「食を伝える」重要な役割があることを自覚。「おいしい有機給食を子どもたちに届けたい」という思いも込めて「ゆうき給食つくり隊」を立ち上げたことを報告しました。

 木下さんは「有機を通して、人との関わり、町のみなさんの温かい愛情を学び、安全・安心の給食を発信し、自校給食への発展を目標にまい進中」と結びました。

フランス
多様性を追求し100%オーガニックめざす

 フランスの事例紹介として、「フランス給食調理室からのおいしい革命」のテーマで本田恵久さん(NPO法人こどもと農がつながる給食だんだん代表理事)が報告しました。

 フランスでは「給食とは社会保障であり、健康な食を子どもたちに提供するもの」と位置づけていることを紹介。環境に配慮した食材の選択、ベジタリアンに配慮したメニューや調理など多様性を追求することで、100%オーガニックをめざしています。

次世代の子らに健康的な給食を

 各報告者が討論と質疑応答を行い、最後に同協議会副代表の秋山豊さん(茨城・JA常陸組合長)が「次世代の子どもたちに健康で栄養にあふれた給食を提供するためにも、オーガニック給食の取り組みを自信をもって進めよう」と閉会あいさつを行いました。